表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/54

7種の魔法

「さっきも言った通り、魔法は全部で7つに分けられているわ。赤色は〈四元素〉、橙色は〈創造〉、黄色は〈治癒〉、緑色は〈植物〉、水色は〈空間〉、青色は〈精霊〉、紫色は〈系統外〉ね」


「その中でも〈四元素〉は火・水・風・土を操れるから、1番人気なのよねぇ。私には適性がなかったけど」


1度に詰め込まれた情報を整理して、飲み込んでいく。


「…〈系統外〉って何ですか?」


「他の6つのどれにも該当しない魔法の詰め合わせよ。中には、本人にしか使えない魔法もあるけど…実戦的でないものが大半だから…」


言いにくそうにマクシーネが濁した言葉を、おばちゃんが引き継いだ。


「“落ちこぼれ集団”って渾名(あだな)で呼ばれるくらいなのよねぇ。上手く活かせば良いのに、本人も不貞腐れちゃうから…」


そんな名前で呼ばれたら、やる気も無くすだろう、とレイナは軽く同情した。

“平民上がり”、〈無色〉、と毎日の様に言われているので、何となく気持ちはわかる。


「先生が担当されているA組は〈四元素〉のクラスなんですか?」


「そうよ。このブローチの色が所属を表しているの」


とん、と白ローブを留めている胸のブローチを指して、誇らしげにマクシーネが言う。


「それじゃあ、指輪も用意出来た事だし学園に行きましょうか」


「えっ?」


突然の入学宣言に、レイナは驚いてしまう。

学園に行く事になるのはわかっていたが、急過ぎないか。


「もしかしたら思い出すかもしれないし。7色何て珍しいから、誰か貴女を知っている人がいるかも」


ここに来て、記憶喪失という設定がマクシーネを後押ししてしまった。

今更訂正は出来ないし、「夢ですか」とも聞けないので、その設定で押し通すしかないのだが。


「わかりました」


「どの組に入るかは、ゆっくり考えればいいわ。性格もあるし」


「レイナちゃんの事は黙っておくから、焦らずに思い出すんだよ」


気遣う様にマクシーネが声をかけ、おばちゃんも優しくレイナを慰めた。



「…ありがとうございました」


おばちゃんにお礼を言って店を出ると、何故か、外の空気がキラキラして見えた。


蛍が飛び交っている様な、火の粉がふんわりと舞っている様な、不思議な光景。

見間違いかと目を擦ったが、光は消えない。


「先生、このキラキラしたの何ですか?」


この世界での頼みの綱であるマクシーネに質問をぶつけると、驚いて目を丸くした後、レイナと視線を合わせる様にその場に蹲み込んだ。


「先生…?」


「それは魔力よ。魔法やその辺りに生えている植物が含んでいる魔力が、空気に漂っているの。魔力に対する感覚が鋭いと、目視出来る事もあるから…見えなくなる様に念じれば消えるはずだわ」


言われた通り、魔力(キラキラ)よ見えなくなーれ、とレイナが念じると、視界に溢れていた光がすぅっと薄れて消えていった。


「出来ました!」


綺麗だったが、視界にちょろちょろと光が浮かんでいると、気が散ると言うか、鬱陶しいと言うか…


無事元通りになったのだが、マクシーネはレイナと目を合わせたまま、何かを考えている様だった。


「あの…」


「レイナ」


いつになく真剣な声に、「大丈夫ですか」と続けるつもりだった台詞が萎んでいった。


「貴女は7種の魔法全てに適性がある。これは大変素晴らしい事だわ。おめでとう」


「あ、ありがとうございます…?」


お祝いを言う為だけにこんなに悩むだろうか?

きょとんと首を傾げてマクシーネの目を見つめ返す。

暫くの間逡巡していたマクシーネは、意を決した様に口を開いた。


「―いい?この世界は実力が全てよ。生き残る為には、強くなるしかないの。そして、貴女にはその手段がある」


―生き残る為には…


その言葉を聞いて、美しいと思っていたこの世界が、決して平穏ではないのだとレイナは悟った。


「まず、忘れてしまった常識と知識を身に付けなさい。貴女を欲しがる人は、これから沢山出て来る。利用されない様に、細心の注意を払って生活するの」


―私を、利用する人…?


「ここの事を何も知らず、力も無いけど、桁外れの才能だけある子供なんて、確実に狙われるわ。1人で出歩いたり、知らない人に付いて行ったりは絶対に駄目。良い話を持って来る人は全員、怪しみなさい」


―そっか…私って危うい立場にいるんだ。


マクシーネが保護しなければ、右も左もわからない迷子状態だったレイナ。誰もが、マクシーネみたいに丁寧に教え導いてくれる訳ではないのだ。

もし、別の人に拾われていたら…想像するとゾッとした。


「…気を付けます」


「はぁ…そこまで言われても、私の事は疑わないのね」


貴女を騙しているかもしれないのよ、とマクシーネが呟く。

そして、悪者っぽい不気味な笑顔を作った。


「私、これでも信用出来るかどうかは自分で見極めるタイプなんで」


だが、そんなものレイナには効かない。

伊達に邪智奸佞の渦巻く学園に身を浸している訳ではないのだ。


「…まぁ、いいわ。私は貴女を私益の為に利用するつもりはないから」


「ありがとうございます」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ