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第4話

3日目。最初に来た時が夜だったとはいえ、流石に耐えられない程の飢餓に襲われたので食料を調達する。


生き物は殺せないし、まず居ないので安直だがフルーツで腹を満たそうと思う。

一応昨日の内に見つけておいた何かが実っている木がいくつかあるので、それぞれの場所に私は朝から向かった。





「えー…どうやって取るの…?」



見つけた。だが見つけたは良いが絶対に取れない位置に実るマンゴーのような果実。


木を蹴ってみたが、マンション一棟分はありそうな太さの幹は私が蹴った位じゃびくともしない。そりゃそうだ。


だが周りはこんな木ばかりなので、この木から取れなければ話にならない。私は何としてもこの木からマンゴーを取るのだ!


裸足になって小学生の時の要領で木登りを始める。…………いや無理だよ、これは………マンションで言ったら20階位あるよ、この高さは……。


もし取れた所でうまく降りられなければお陀仏だ。私は泣く泣く地面に降りた。



「くっそー……あとちょっとなのに…!!」



風に揺れるマンゴーが恨めしい。そのまま落ちてこないか……

…と目からビームが出る勢いで凝視し続けるといきなりマンゴーが落ちてきた!うそ!?やった!!


私は天から赤ん坊が落ちてきたような優しいタッチでダメージを与えないようにふんわりと抱き留めた。



「やった!やったよ皆―!!沙織!!私魔法が使えるのかも知れないー!!」



誰にも聞こえないのに喜びのあまり報告をする。テンションが上がり過ぎてこの間結菜が『ファイヤ!って言うだけで火が出るの~』と言っていた事を思い出してその場で「ファイヤ!」と唱えてみた!

……当たり前だが何も出なかった。私は少し冷静になった。




マンゴー様を木葉の上にお祭りして舞う事約10分。五穀豊穣の儀式を終え、最後にマンゴー様を食すこととなった。


…しかし…改めて見るとやけに綺麗なマンゴーだ。虫食いも無い。

前に何かで虫が食べていたら安全な物だと聞いたけれど、本当だったらこれは食べてはいけないのではないだろうか?


…一応匂いを嗅ぐ。……おお、香しき良き香り!これで甘くなかったら怒る!


丸かじりしようかと考え念のため水で軽く洗った。まぁ、農薬なんて付いてる訳もないんだけど……



「……だ、大丈夫だよね?い…いただきまーす…」



私は少しだけ齧ってみた。



「………あ、甘くはない……でも食べれる!!」



マンゴーは甘くはなかった。何というか…火を通す前のカボチャに近い。温めたらもしかしたら甘くなるのかも知れない。


今の所手足に謎の痺れや眩暈などは現れていないので安全と判断し、そのまま食べ続けた。よし。これを食べ終えたら次は山菜を探しに行こう。生で食べられる野草を探すのだ!


腹が満たされるとポジティブになるのか、私は先程まで考え付かなかった野草に目を付け始めた。もしかしたら木苺的な食べ物もあるかも知れないしね!



「………あ…もう種なのか…」



そのまま食べ進めると、思いのほかすぐに種へと到達してしまった。どうやら70%位が種のようだ。


私の齧り痕から覗く真っ黒な種はとても小さく、黒い点が密集してトウモロコシのようだった。



「………何か…気持ち悪い…」



食べ物に申し訳ないが、少し気持ちが悪かった。虫の密集している所を見ているような感覚に、私はすこし嘔吐いた。




―その瞬間、私はこの世界の神髄を見た―



「……ん?…えっ、え!?ぁっぎいやああああぁぁっっ!!??」



私の手の中のマンゴーが突如揺れるような錯覚に襲われた。

しかしそれは錯覚で、よく見ると種がうごうごと蠢いていたのだ。


そして出口を探していたのか、私の齧り痕から種が溢れ出した所で私はマンゴーを放り投げた。


放り投げたマンゴーを遠くで観察していると、その種がマンゴー本体から這い出てスローペースで個々に動き始めた。



「ぎぃやぁあああああ!!!ぎもちわるいぃぃぃ!!!」



絶叫を続けながらも見る事を止めない。なぜなら宿を奪った私に襲い掛かって来るかも知れないからだ。


ガタガタと体を揺らし見守ると、種は柔らかそうな地面を見つけ…どうやってるのか自力で地面に埋まった。彼らはこうやって生きているらしい。





……………………




とんでもない世界に来てしまった。






先程の種ショックで木の実が無理になった。あの種だけではなく、全ての植物の繁殖方法があれだった場合、私のお腹の中で暴れる想像をしてしまい一瞬気絶した。



「どうしよう………本当に無理………せめて人間がいる所に運んでよ……」



1人誰に言うでもなく要望を吐き出す。ここは異世界じゃない。ジャングルだ。

だが先程、何かのチラシを発見した。随分古くなって文字も最初から読めないが、絵だけはかろうじて見る事が出来た。


そしてその絵には剣を持つ手と、炎を宿す手が対になって描かれていた。


それを見るにたぶんこれは“求む!武術大会参加者!騎士、魔術師、どなたでも大歓迎!!”みたいなチラシだと思う。


…つまりここは結菜の言っていた剣と魔法の世界だという事だ。……まぁ、マジシャン大会かもだけど……


だけど呪文が悪いのか何なのか、私は魔法が使えないようなのでそれがどうしたという感じだ。



「……はぁ……誰か魔力で異世界人が居るとかで探しに来てくんないかな……」



あるかな…?


そんな訳の分からないものに縋るしかない程私は限界を迎えていた。……こうなったら、もう今日にでもこの森を出るしかない!!これを見る限り、人里はあるみたいだし!!


思い立ち私は再度立ち上がった!トイレと湖を捨てる覚悟をしたのだ!!

一応武器として定規とシャーペン。防具にはお腹に鞄と左手に教科書を装備して私は森を出る準備をした。





しかし歩く事暫く。今日も今日とて何にも出会わない。……もしかしたらここってすごい安全な森なんじゃないの?


あ、ダメだ!決意が揺らぐ!!私はすぐ楽な方へと流されるタイプなので困る。


考えを振り切るように無心で前だけを見て歩くと、不意に先程まで無かった黄色を見つけた。



「?何…?生き物、なの…?」



恐る恐る近付いて適度な場所で観察する。もしかしたら人間かも知れない……

するとその瞬間、その黄色の全貌が明らかになった。



「………っ!!!!…は…っ……!!」




虎だ。



その姿は私の知っている虎に限りなく近かった。


尾に槍の先のようにとがったギザギザの刃がついており、牙は毒があるのか紫色。それを除けばその姿は虎そのものだった。

私が虎だと気付いたと同時に、虎も私に気付き涎を垂らしている。


まずい!!腹を空かせている!!


こうなってはやり過ごす事など出来る訳はないと妙に冷静な私の頭が瞬時にそう分析すると、私は奴に背を向け来た道を戻った。


…しかし当たり前だが奴も私を追ってきた。



「はぁっ!はあ!!…っ……やだっ……やだぁ……!……まだ、死にたく……な、い……っ!!」



無意識に声に出しながら走る。だが相手は虎。そして私は長距離の選手でもなければ運動部にも所属していないただのアルバイター高校生だ。

つまり、虎は私のすぐそこだ。



「やだ……っ……あっ!?」



もつれた足が自分に足を掛けて転ぶ。しかし幸か不幸か先には坂道があり、私は走るよりも速い速度で坂を転がった。


落ちた先で私は手近な茂みに痛む体を丸め込み身を隠す。後ろは怖くて振り返られなかったが、降りてきているかも知れないと思ったのだ。



―しかし、いつまで経っても虎は降りては来なかった。



「……っはぁ………はぁ…のど……乾いた……」



当たり前だ。あれだけ全力疾走したのに乾かない訳がない。


私の唯一知っている水飲み場は、トイレが近くにあるあの水飲み場だ。しかしそれはこの坂の上にある。



……大丈夫だよね?ずっとこんな所でお腹空かしてるのに待ってたり、しないよね?



念のため体内時計で1時間程経ってから私は坂を上った。



坂の頂上ギリギリで目だけを最大限に活かして虎の姿を探す。……よし、居ない!!

私は気配を殺しながら足早に湖へと向かった。




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