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9話 第四王子からの招待

遅くなってしまって申し訳ございません。

過去話をいくつか訂正しました。

「大丈夫かい? あまり気を張らなくてもいいからね」

「はい」


 王宮に入った僕は、父上と母上とともに与えられた部屋で衣装合わせをしていた。

 衣装合わせって言っても、持ってきた礼服に着替えるだけだけど。


「それにしても、レインは兎や蛇が好きなの?」

「いえ……ただあの旗が気になっただけで……」


 どうしてなんだろうか。あの旗を見た瞬間、悪寒が走ったんだけど。


「まあ、その話しはいったん置いといて、そろそろ行こうか」


 父上が話しを切り上げ、部屋から出る。

 流石は王国一の建物である王城。赤い絨毯が引かれ、豪華な調度品が並ぶ廊下は煌びやかで見事としか言いようがない。


「旦那様」

「ああ。ありがとう」


 ケネスから王子と公爵令嬢に渡すためのプレゼントを父上が受け取った。

 王宮の侍従が開けてくれた大きな扉の中に入る。

 まずは王様の方に行くようだ。当たり前か。


「ほら、僕らの番だよ」

「……はい」


 わりと緊張する。


「おお。流石は護家の一つ。見た目麗しいな」

「有難きお言葉」


 前世で事務所や局のお偉いさんに対するように媚を売るだけじゃ高位貴族としては力不足だと判断されちゃうと聞いていたから不安だったけど、なんかあれだね。あんまり変わらないや。下手すれば処刑になること以外、そんなに緊張しないかな。

 まあ、僕が王様に何か特別なことが言えるわけでもないので、基本は父上に続く形になるけど。


 ところで、護家って何? 聞いたことないんだけど。


「陛下、妃殿下、この度はギルバート第四王子殿下の七歳の誕生日及び、アイリス・プラティナ公爵令嬢とのご婚約おめでとうございます。これからも我らアルブム家は、ファイカーラ王国の発展のために尽力いたす次第でございます」


 父上の挨拶に僕と母上が続いてお辞儀する。

 僕ら三人の礼を見聞きした陛下が鷹揚にうなづいた。


「うむ。お主らも元気なようで何よりだ。そなたら護家には大きな恩があるしの。それに……そちらが巷で噂の神童か」

「あ、ありがとうございます」


 陛下に褒められた。


 ……こういう時ってどう返せばいいの?

 前世はどうしてたっけ?

 前世のお偉いさんたちは遊びに夢中で、そんなに姿を現さなかったからなあ。


「確かに我が子は優秀ですが、ギルバート殿下ほどではありませんよ」


 ギルバート殿下とはあれだ。このパーティーの主役だ。

 言い遅れたが、このパーティーは殿下とプラティナ公爵家のアイリス嬢との婚約を祝う会だ。


 ……婚約かぁ。僕もいつかは誰かとするんだろうな…………二人の少女を思い出して身震いがした。


「ギル。こっちに来るがいい」

「はい。父上」


 呼ばれて現れたのは金髪の少年だった。


「どうも。ご紹介にあずかりましたギルバートです。此度は王国の貿易をまとめ上げるアルブム家の皆さんと出会えて嬉しい限りです」

「ありがとうございます、殿下。お噂はかねがね」


 金髪の少年――第四王子ギルバート殿下は儚げな雰囲気の美少年だ。

 僕も将来イケメン間違いなしの美少年だが、殿下も僕に負けてない。というか、この世界の顔面偏差値高くない? 超絶イケメン魅惑フェイスの白原優也が霞んでしまいそう。


「レインフォード殿も、よろしく」

「はい。未だ至らぬ身ですが、よろしくお願いします」


 殿下が握手を求めてきたので、握手に応じる。

 すると、殿下に引っ張られた。


「後で部屋に来てくれないか? 日本からの転生者同士、仲良くしようじゃないか」

「……え?」


 え? 少女漫画。僕、どっちかというと熱血少年漫画の方が好きなんだけど。

 なんて考えていると、殿下がそんなことを言ってきた。


 にほんからのてんせいしゃ……日本からの転生者!?


「じゃあ、また後で」

「……は、はい」


 笑顔で手を振る殿下に返事をし、僕は父上と母上に連れられてアイリス嬢のところへ挨拶に行った。


◇◇◇


「それじゃあ、僕らはこっちだから。レインと離れるのは辛いけど、頑張ってね」

「レインだったら一人でもやりきれるって信じてるわ」

「はい。父上と母上も後で会いましょう」


 生死を賭けた戦いに赴くのかな? といった感じで父上と母上と別れる。まあ、貴族にとってのパーティーはそれくらい大事らしいけど。

 二人はお酒とかが並んでいる大人用の会場でパーティーを、僕のような子どもは隣の会場でジュースを飲んだりする。


 お城の料理人だけあって、色とりどりの料理はとてもおいしそうだけど、今はそれに舌鼓を打っている場合じゃない。


「すみません」

「はい。いかがなさいましたか?」


 近くにいる侍従に声をかけた。


「ギルバート殿下に別室に呼ばれたんですが、どこかわからなくて」

「ああ。かしこまりました」


 どうやら使用人にも話しは通っているようで、すんなりと案内してもらえた。


「こちらのお部屋になります。中には使用人はおろか護衛もいませんのでお気を付けください。それと、退室はできる限りおやめくださいとのことです」

「は、はあ」


 え? 何そのそっち系の本の導入みたいな話し。


 ま、まさか、殿下は僕のことをそんな目で……!?

 そんな……確かに僕は美少年だけども……。


「し、失礼しまーす」


 しかし、王族の言葉に逆らうこともできない僕は恐る恐る部屋に入った。


 案内された部屋はそんなに広くはなかった。

 僕が住んでいる離れのリビングの半分くらいの大きさで……でも白原優也の住んでたアパートよりも広いわ。貴族生活に慣れ過ぎてるよ。


 とりあえず、高そうなソファーに座る。


「あれ? また新しい人?」

「銀髪というと……アルブム侯爵家のレインフォード殿か」

「まだまだ来そうですね、転生者」

「……ん」


 中にいたのは四人の少年少女だった。それも僕に負けず劣らずの美少年・美少女たち。

 緑髪の眠そうな美少年、黒髪の気難しそうな美少年、同じく黒髪の真面目そうな美少女、青髪の無表情な美少女。


 よ、よかった。僕の国宝級の貞操を失う可能性は低そうだ。


「君たちも転生者なの?」

「うん」

「へー。みんなも前世は日本? どこに住んでた? 僕は関東の方なんだけど」

「僕も関東」


 緑髪の少年が会話に答えてくれる。めっちゃ淡々としてるけど。


 それにしても、なんかみんな見覚えがあるんだよね。

 ……何だっけ?


「失礼する。……意外と多いな」

「おー。転生って結構あることなんだな」

「そんなにないと思うが……いや、死んだ後のことは誰にもわからないか」


 僕の次に入ってきたのは、青髪の賢そうな美少年と赤髪の活発そうな褐色肌の美少年だ。


 なんかあれだね。戦隊ものみたいになってきた。女子はあれ、美少女戦士みたいな感じ。


 そんなことを考えていると、またもや扉が開いた。


「だーかーらー、あんまりふらふらしちゃ駄目だって!」

「え~。ふらふらなんてしてないですよ~」

「いや、何故かバラ園にいたよね。アイリスちゃんに言われなかったら、置いて行くところだったよ」


 入ってきたのは、赤髪の勝気そうな美少女と緑髪の柔和な顔の美少女、そして……白髪の清楚そうな美少女だった。


◇◇◇◇◇◇


「協力してくれてありがとう。アイリス」

「ううん。当然のことをしたまでです」


 私ことファイカーラ王国第四王子ギルバートは、隣で歩くプラティナ公爵家の長女であるアイリスに礼を言う。

 彼女は初めて会った時から、同じ転生者として相談に乗ってもらったり、相談に乗ったり、前世の話しで盛り上がったりした仲間だ。今は婚約者だが。


「これで私が把握している転生者が揃ったな」

「そうですね。全員来てくれたら良いんですけど」


 私が把握している転生者は自分含めて十二人。

 他にもいるだろうがな……というかいたな。思い出したくもないが。


「ですが、誰も殿下が言う女神様を知っている様子はありませんでした」

「『髪の声を聴く一族』であり、女神教枢機卿の息子であるシエルも知らなかったようだしな」

「まあ、蛙の子は蛙というわけでもないですしね」

「ああ。女神の話しをすると、露骨に嫌そうな顔をしてたしな」


 そういえば、前世でも二世信者はその宗教を嫌だと思っているみたいな本あったな。

 

「それにしても、どうして殿下にだけ神様は語り掛けたんですかね? それこそ、ウィリデ家の方が適任ですのに」

「単純に一番地位が高いからとかじゃないか? 私たちだからこそ、全員に呼び掛けることができたんだし」

「ああ。確かに」


 アイリスが成程といった感じにポンと手を打つ。


「あとは、他の転生者が怖いですね」


 他の転生者……去年に出会ったあいつを思い出す。


「女神が選ばなかったということは、もしかしたら正確に難あり……もっと言えば、魔神側かもしれないな」

「そうですね。少なくとも敵である確率は高いです」


 何はともあれ、女神が選んだ他の十人に期待するしかない。


「と、着いたな」

「早く入りましょう。きっとみんな待ちくたびれていますよ」

「そうだな」


 扉を開けながら思う。

 私は一人じゃない。

 みんなが仲間になってくれる保証はない。


 しかし、私は仲間になってもらえることを何故か確信していた。


「失礼する」


 部屋の中に入ると、そこには白(銀)、黒、緑、赤、青の少年少女がいた。


「とりあえず、自己紹介から始めようか」

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