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HalloweeN ✝︎ BATTLE 〜僕が夢みた150年の物語〜  作者: 善法寺雪鶴
侵攻軍
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感謝を込めて

 時刻も夕時。早速役割分担をして作業に取り掛かることとした。

 まず始めに調理担当から決めることとなった。

 夜ご飯はツァルトさんと共に作る事になるため、迷惑をかける訳にはいかない。


「調理が得意だと言う人は名乗ってくれ。」


 そこですぐさま名乗りを上げたのは⋯⋯


「はいはーい!吉歌(きっか)がやるにゃ〜!」


 喫茶 花明亭の看板娘である吉歌だ。

 以前口にした吉歌お手製のゼリーは、癖になる美味しさだった。


 確かに吉歌はいい人材だ。


「吉歌ちゃんは、お料理が得意だものね。」

「吉歌の料理美味いからな!」

「そうだな。吉歌は調理担当に適任だろう。任せてもいいか?」

「もっちろんにゃ!!でも、折角ならいろんなお料理食べてみたいにゃ〜。他にも作れる人いたら一緒にやろうにゃ〜!」


 それに応えるように、牡丹(ぼたん)とヒショウが名乗りを上げた。


「私にもお手伝いをさせてください。お料理は毎日作っていたので得意ですよ。」

「一緒に作業できるか不安だけど⋯⋯でも俺も毎食じっちゃんと一緒に作ってたから協力できるよ!」


 すぐに候補者が集まり、ツァルトさんは笑顔を零した。


「皆さん、本当にありがとう。とても心強い。」


 そんなツァルトさんを見て、俺達も自然と笑顔が溢れる。


「それじゃあ早速準備を始めるとしよう。」


 ツァルトさんと3人がキッチンに向かおうとした時だった。


「ちょーっと待ったぁ!!!」


 声を張り上げたのは、他でもない和倉(わくら)だ。

 

「なぁ、椰鶴(やづる)も作れるぜ!」

「椰鶴?椰鶴さんとはどなたかね?」

「こいつが椰鶴だ!」


 突然の名指しと紹介に、椰鶴は眉をひそめている。

 ただ、相手がツァルトさんだからか声を荒げることなく静かに和倉を睨んでいた。


「椰鶴は毎食師匠の為に作ってんだ!めっちゃうめーんだぞ!」

「余計なことまで言わなくていい。」

「何でだよ!みんなにも椰鶴のうんめー料理食べてもらいたいじゃんか!」

「俺は別に⋯⋯。」


 そんな2人のやり取りを、孫を見ているかのような柔らかい表情で見守るツァルトさん。


「そうかそうか。椰鶴さんも料理が上手なのか。そこまで推薦されると吾輩も椰鶴さんの料理を食べてみたくなる。」


 それを聞いた和倉は口角を上げニンマリと笑いながら椰鶴の様子を伺っている。

 対する椰鶴は目を丸くしていた。


「俺の料理を⋯⋯ですか?」

「あぁ。よかったら、椰鶴さんも手伝ってくれないかい?」


 ツァルトさんの言葉が想定外だったようだが、椰鶴はすぐに微笑んだ。


「えぇ。是非手伝わせてください。」


 和倉に言われた時はいつも通り顔をしかめていたが、ツァルトさんに声をかけられると表情を一変させた為異なる印象を抱いた。


「あんな表情できるのね。」

「普段はあれだけキツい言い方だが、お師匠様のように年上の方やツァルトさんのような敬うべき相手には、あんな表情をする事ができるんだな。」


 今まで見た事のない柔らかな表情に驚きを隠せない俺達。


「時と場合に応じて変えてるんだな。」

「そうだね。でも案外椰鶴の本来の姿はこっちだったりしてね。」

「それも有り得るな。」


 そんなランドと鴇鮫(ときさめ)の言葉に反応した和倉が俺達の方へ駆けてきた。


「2人とも流石!見る目があるね!実はn痛ったぁ!?」

「バカ和倉!ほんっとに一つ一つ余計なんだよ!」


 いつの間にか和倉の傍に来ていた椰鶴が思いっきり背中を叩いた。

 不服そうに頬を膨らます和倉だが、椰鶴はそんな事一切気にしていないといった様子だ。


「これ以上余計なことすんなよ。俺が見てないからって調子に乗ってると痛い目見るからな。」

「えー⋯⋯皆に椰鶴を布教したいだけなんだけど⋯⋯。」


 小声で呟くが、椰鶴には丸聞こえだったようで鋭い眼光が和倉を襲った。


「分かったってーー!!もう余計な事しないからー!」

「当たり前。」


 椰鶴はため息をつくと、先にキッチンで準備を始めていたツァルトさん達に遅れを取らないよう、足早にキッチンへと向かった。


「ちぇー。椰鶴布教タイム、止められちゃったよ。ざーんねんっ。」

「ねぇ、和倉くん。」

「おん?」


 ずっと2人の様子をニコニコしながら見ていたシュロがスキップしながら近づいてきた。


「椰鶴くんのこと、みんなに好きになって欲しいって感じなの?」

「そうそう!さっすがシュロ!分かってるね!」

「和倉くんの椰鶴くんに対する愛、凄く伝わってくるもん!分かるって!」

「え!?ホントに!?」

「ホントホント!ね、トッキー。バレバレだよね!」

「ふふっ。そうだね。多分みんな気がついてると思うよ。」

「なんと!!」


 和倉が見渡すと、全員が一斉に頷いた。


「え!?そんなに分かるもん!?」

「事ある事に椰鶴のいい所とか好きなところを伝えてくるんだから分かるわよ。」

「椰鶴さんのお話をされる時は目が輝いていますからね。」

「それ以前に、出会って直ぐに1日1椰鶴って叫んでたんだから、あの場にいた人はみんな察したと思うけど。」

椿(つばき)待って!俺そんなこと言ってた!?」

「え、無自覚?」

「うっそ⋯⋯マジ⋯⋯じゃあみんなにバレバレってことじゃん!恥ずかし!!」


 キャーと言いながら顔を覆う。

 女の子みたいだな。


「あっ!でも、みんな俺の椰鶴愛知ってるなら、今後更に椰鶴の事伝えやすくなるか!いい事だな!」

「いや、前向きだな。」


 コロッと態度が変わったため、咄嗟に突っ込んでしまった。

 しかしそれは俺だけではなかったようで⋯⋯


「恥ずかしがってたのはどこいっちゃったのよ⋯⋯。」

「⋯⋯ポジティブ。」

「そう捉えるんだね。凄い。」

「愛って凄いね〜!!感激〜!」


 同時に女性陣が一斉にツッコミを入れた。


「やっぱり椰鶴のこと、よく知って欲しいからね!椰鶴は自分のいい所隠しちゃうからさ〜。俺が話してて途中で止めて来るのは大抵恥ずかしさもあるんだと思う。でも俺は、椰鶴にとってマイナスになることじゃ無い事は、みんなにどんどん知って欲しいんだ!椰鶴を好きになって欲しい!」


 胸を張って言う和倉。

 正直、聞いてはいけないことを聞いてしまうことがあるんじゃないかと少し身構えていたため、椰鶴に迷惑になるようなことは言わないように心掛けてる事が分かり安心した。


「ふふっ。勢いがあっていいね。」

「そうですね。和倉さんは椰鶴さんの事になると、いつも以上に張り切っておりますからね。」

「まぁでも、自分の知らない所で自分の事話されてて気が気でない椰鶴の気持ちも分かるな。」

「和倉は突拍子もないことを言う時があるから。いろんな会話の単語から椰鶴に結び付けてくるし、予想できなくて気を張ってるからこそのあの対応の速さなんだろうね。」

「間違いないな。」


 女性陣の前で、椰鶴を好きになって欲しいという事を体全体で表現している和倉。

 それに対し、無表情で頷くホワリ、一つ一つ丁寧にかつ楽しそうに反応しているシュロ、それを微笑ましそうに見守るメロウと、あまりの熱弁に頭を抱え出し「分かったわ」とだけ繰り返し呟くミオラ。


 そんな5人の様子に、このままでは永遠と和倉の椰鶴愛が止まらないのではという話になり、華紫亜(かしあ)がサッと5人の元へ向かうと「料理が出来上がってしまう前にお掃除を済ませてしまいましょう」と声を掛けた。

 「椰鶴さんの料理も出来上がって直ぐに召し上がった方が美味しさを直に感じとれますから。」という、付け加えられた一言に和倉が飛びつき「そうだよな!」と元気に返事をすると物凄い勢いでこちらへ戻ってきた。

 華紫亜の上手い言葉掛けに俺を含め待っていた者達で感動している間に、女性陣もこちらへと戻ってきていた。

 早速和倉が主体となり、残りのメンバーで『風呂場担当』と『廊下と大広間担当』『各部屋担当』を決めた。

 ジャンケンにより風呂場はホワリ、鴇鮫、ランドが。廊下と大広間を椿、シュロ、ミオラ。

 そして、グレイ、華紫亜、和倉、メロウ、俺が各部屋に別れて掃除を開始した。


 俺は最後に余った掃除用具を手に取り廊下の奥の部屋へ向かった。

 既にそこにはメロウがいた。


「もう来てたんだな。」

「他の3人は手前から掃除を始めてるみたいだったから、私は奥からやろうと思って。」

「そうか。⋯⋯邪魔だったか?」

「そんな事ないよ。凄く助かる。来てくれてありがとう。」


 メロウは微笑むと直ぐに掃除の続きを始めた。


 俺も早速取り掛かるか。

 メロウが換気をしつつ窓辺の掃除を始めていた為、俺はドア付近から始めることにした。


 俺達が掃除をしているこの部屋を含め、この廊下の並びにある3部屋はツァルトさんの配慮により、俺達が今日の夜それぞれ使用出来る部屋だ。

 元々広間で寝る予定だった俺達だが、「安心して使える部屋が増えたから」と、以前客間として使用していたという3部屋の使用許可をくれたのだ。

 1部屋は女子6人で。残りの2部屋を9人で分けて寝る事となったが、今掃除しているここの部屋を使うのは男性陣の中から3人程度といった所だろうか。

 華紫亜達が掃除をしていた部屋はかなり広かったし、中央の部屋も同程度に感じた。

 それに対し、この部屋は他の部屋より少しこじんまりとしている印象を受けた。


 部屋割り、うまく分けないと女性陣がゆっくり休む事ができなくなってしまうだろう。

 それに、疲れているであろうツァルトさんにこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないからな。


 手を動かしながらも、部屋割りの難しさに頭を悩ませていた時だった。


「ねぇ、ビア。」

「ん?どうした?」


 顔を上げメロウの方へ視線を向けると、今まで黙々と作業を続けていたメロウが窓の外をジッと眺めていた。


「何かあったか?」

「⋯⋯うん。ちょっとした疑問なんだけど。」


 そう言うと、メロウは視線を窓の外に向けたまま話を続けた。


「この家に来た時に、この家の周りに他の家もなければ街から少し外れた位置にあるなって思ったんだ。それで、この窓の外からも街が見えるから確認してみたんだけど、やっぱり遠いんだよね。」


 メロウの隣に来た俺は同様に窓の外を眺めた。

 メロウの言う通り、街からここまでは距離があるように感じた。


「ツァルトさんの家も被害に遭ってたから何とも言えないけれど、それでもこの家は街の建物とは違って全壊してる訳じゃなかった。それなら、この家にいればゾンビ化は免れたんじゃないかなって思うんだよね。⋯⋯何でツァルトさんはゾンビ化してたんだろう。たまたま街に出かけてたのかな。」

「そうだな。ここにいれば被害を受けなかった可能性は高い。」


 メロウの疑問はかなり的を得ていると思った。

 街からの距離と建物の壊れ具合を含めると、ツァルトさんのゾンビ化には違和感があった。


「ツァルトさんに聞いてみるか。」


 提案をすると、メロウは俺の目を見て頷いた。


「そうだn」

「おーい!そっち進んでるかー?」


 突然メロウの声を遮るように部屋中を震わせた声。

 もちろんその声の主は和倉だ。

 いつの間にか、この部屋の扉の前に来ていたらしい。


「ここの部屋の掃除が終わったら手伝ってほしいんだ!広くて大変で真ん中の部屋までまだ辿り着きそうになくって!いいかー?」

「もちろん。そのつもりだったよね、ビア。」

「あぁ。終わり次第すぐ行く。」

「ありがとな!待ってるからな!よろしくー!!」


 走って戻る足音が遠ざかると、一瞬で静けさが戻ってきた。


「本当、和倉くんって底なしの元気さを持ってるよね。」

「あの人柄が俺達の雰囲気を和やかにしてくれてるんだろうな。」

「そうだね。みんなを明るくできるって、凄い事だし羨ましいなぁ。」

「そうだな。」


 俺とメロウはすぐに掃除の続きを始めた。

 とは言ってもこの時点でほとんど終わっていたため、残りはゴミを回収する程度だった。

 部屋の整頓を終えると、俺達は掃除用具を手に取り部屋から出た。

 丁度和倉達も部屋の掃除が終わったらしく3人揃って部屋から出てきた所だった為、合流をして5人で中央の部屋の掃除を開始した。

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