表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HalloweeN ✝︎ BATTLE 〜僕が夢みた150年の物語〜  作者: 善法寺雪鶴
仲間を探しに
5/77

若作り


 「クラルテ」を出た俺達は、次の街を目指して夜通し歩き続けた。

 そして今、ツギハギの街「スティッチ」にたどり着いた。先程日が昇ったばかりである。


「やっと⋯⋯やっと俺達は次のダンジョンに辿り着いたのである⋯⋯」

「おい、ダンジョンの使い方間違ってるぞ。」

「⋯⋯まだ日は昇ったばかり⋯⋯俺達の旅も始まったばかり⋯⋯」


 隣にいるヒショウのテンションが昨日の昼間と比べて一段と低い。話していることも変だ。

 まだ1日も一緒に居ないが、流石におかしいことくらいは分かった。


 あー、これは⋯⋯。


「ヒショウ、眠いだろ。」

「⋯⋯なぜ分かるのだビアよ。」

「話し方もテンションもおかしいんだからそれくらい予想がつく。」


 透明人間は昼間起きて夜は眠っている。

 ハロウィンの時期だけ生活リズムを変え、夜活発に活動できるようにしていると聞いたことがある。


「なんでビアは元気なのだ⋯⋯。」

「俺は吸血鬼だから夜行性だろ?昼間も動けないことは無いが、夜の方が活発に動ける。正直寝なくても生きていける。」

「うわぁ⋯⋯すごいね⋯⋯。」


 吸血鬼について説明している間にもヒショウの体力は奪われていっているのだろう。今にも倒れそうだ。


「ヒショウ。そこの木陰で仮眠をとろう。」

「いや、それだと時間が⋯⋯。」

「このまま倒れられた方が困る。」


 俺がヒショウの言葉をバッサリ切ったからだろうか。ヒショウの歩みが止まった。


「⋯⋯わかった。寝よう。」


 俺達は近くにあった木の下で仮眠をとることにした。

 余程疲れていたのだろう。ヒショウは寝転がった途端眠りについたらしい。隣からは静かな寝息が聞こえてくる。


 俺は目の前の景色を眺めた。丁度ここからは「スティッチ」が見渡せる。

 街はカラフルでとても綺麗だ。夜になるとネオンが輝くこの街の景色は、今見ているものよりも綺麗なものになるのだろう。


 今からこの街で3人目の仲間を探すこととなる。


「どんな奴が仲間になるんだろうか。」


 これからの旅に期待と不安を抱えながら、俺は街を眺め続けた。



「おはよう、ビア!」

「おはよう。疲れはとれたか?」

「もう元気元気!ビアは結局寝たの?」

「いや、起きてた。」

「ひぇー!凄いなー!」


 あれから2時間後、ヒショウは目を覚ました。初めのような元気が戻ってきたようだ。


「じゃあ早速街に行こう!3人目の仲間、早く見つかるといいな〜。」


 ヒショウの先導の元俺は街へ向かった。



「おー⋯⋯賑わってる⋯⋯凄い⋯⋯」

「ヒショウは「スティッチ」に来たことないのか?」

「俺、他の街に一度も出かけたことないんだよね。」


 ヒショウは目を輝かせながら賑わっている街を見渡している。


「ビアの街も行ってみたかったなー。」

「じゃあこの戦いが無事に終わったら、一緒に俺の街へ行こう。」


 俺の言葉を聞いた途端、ヒショウは首がどこかへ飛んでいってしまいそうな勢いでこちらを向いた。


「遊びに行ってもいいの?」

「ああ。」

「やった!俺、絶対に負けないように頑張るから!」

「期待してるぞ。」


 こんなにも嬉しそうな笑顔は出会って初めて見たかもしれない。


 ヒショウもこんな風に笑うんだな。


「そういえば!「スティッチ」のガーディアンが誰なのかは知ってるの?」

「いや、俺には分からないんだ。街の人に地道に聞き込んでいくしかない。」


 そう説明しながら周り見渡すが、話しかけにくいオーラを纏った人ばかりでなかなか声をかけられない。

 困った俺達は誰にも話しかけられないまま街を歩き続けていた。


 すると、いつの間にか学園の前に来ていたようだ。


「ここって、高校かな?」

「多分そうだろう。かなり賑わってるな。」

「うん。休憩時間なのかな?」


 俺達2人が門の前から中を覗いていた時だった。


「見かけねぇ奴らだけど⋯⋯お前らこんな所でなにやってんだ?」


 この学園の生徒だろう。体格の良いフランケンの男子生徒が声をかけてきた。


「今人探しをしてるんだ。」

「人探し?この学園の生徒か?」

「それが分からないんだ。」

「はぁ?分かんねーのに探してんの?」


 意味が分からないといった表情をしている。

 まぁ、目的の人がわからないのに人探しをしているだなんて言われたら誰だってそんな表情をするのかもしれない。

 そこで、俺が説明を続けようとした時だった。


「じゃあ学園長に聞いてみればいいんじゃねー?」

「学園長?」

「おぅ。学園長は生徒のことなら何でも知ってるだろうから、ここで宛もなく探すよりは早いんじゃねーの?」

「ビア、この子がそう言ってくれてるんだし、学園長に1回話聞いてみようよ。その方が確実に効率がいいと思う。」


 確かに、宛もなく探し続けるよりいいかもしれない。


「そうだな、聞きに行こう。」

「よし、じゃあ決定な。行くぞ。」

「え?俺達学園長に許可もらってないからそんなに簡単に入れないって言うか⋯⋯ねぇ、ビア?」

「あぁ。今来たばかりだし事前に連絡入れないと⋯⋯。」


 すると、それを聞いた男子生徒はニヤッと笑った。


「それに関しては大丈夫だ!安心しろ!だからほら、入れ入れ!」


 俺達は男子生徒の押しに負け、言われるがままに学園の中へ足を踏み入れた。



「ここが学園長室だ。」

「す、凄い扉だね⋯⋯。」

「そうだな⋯⋯。」


 学園長室だと案内された部屋の扉は大理石に宝石が無数に埋め込まれているもので、とにかく大きかった。


「あいつの趣味なんだよ⋯⋯金使うとこ間違ってるよな、マジで。」

「あいつって?」

「学園長だよ。嫌な趣味してやがる。」


 この男子生徒は学園長のことが嫌いなのだろうか。学園長室の前に着いてからずっと眉間にシワができている。


「⋯⋯っとわりーわりー。学園長に話聞くんだったな。じゃあ入るぞ。」


 そう言うと、凄い勢いで扉を開けた。


「しつれーしまーーっす!!」


 俺達は男子生徒の声の大きさに驚きつつも後に続いて中へ入った。


「失礼します。」

「失礼します!」


 中には、銀髪を1つに結んでいる齢30くらいの綺麗なフランケンの男性が学園長椅子に座っていた。


「⋯⋯誰だ。許可なく勝手にこの学園に入ってきたのか?」

「ちげーよ。俺が招き入れたんだ。」


 男子生徒は学園長相手になかなかの態度を示している。


「な、なぁビア。最近の若者は年長者に対してこんなにもフレンドリーなものなの?」

「いや、そんなことないと思うけど⋯⋯というよりヒショウもこの子と年齢さほど変わらないだろ?」

「そうだけどさ⋯⋯俺そういうのあんまり分からないから⋯⋯。」


 俺達が少し離れた場所で小さな声で話をしていると、学園長が俺達の方を見た。


「君達。名は。」


 俺達は我に返ったように学園長の方に向き直すと自己紹介を始めた。


「事前の連絡もなくいきなり学園内に入ってしまい大変申し訳ございません。俺は、「ヴァンパイア」から来ましたビアといいます。こちらは「クラルテ」から来ましたヒショウです。」

「学園長様。初めまして。」

「あぁ。君達のことは分かった。それで、何の目的でこの学園へ立ち入ったんだ。」


 金色の目が俺達を鋭く射抜く。

 学園長のその瞳は、俺達を不審者かどうか見定めようとしているように見えた。

 無理もない。勝手に立ち入った上にやっと自己紹介をしたのだから。

 俺は誤解を招かぬよう説明を始めた。


「学園長様も小耳に挟んでいるのではないかと思われますが、現在この国がオスクリタによって支配され始めています。その件で俺は、国王であるファニアス様からご命令を授かり、各街からガーディアンを見つけ共に戦うこととなりました。今俺達は、この街のガーディアンを探しております。宛もなく街を歩いていたところこちらに辿り着きましたので、宜しければ学園長様にお話を伺わせて頂けないかと訪問致しました。」


 そこまで説明した次の瞬間。


「はぁぁあぁああぁあ!?!?」


 突然大声が室内に響きわたった。

 声をあげたのは、今まで静かに後ろに立っていた男子生徒だ。


「な、なんだよ!ビックリするじゃんか!」


 ヒショウが驚いて声を上げると、その様子を見ていた学園長がふっと笑った。


「君達は運がいいな。」


 先程までとは打って変わって穏やかな表情を見せた学園長は男子生徒を指さした。


「そこで大声を出した奴がこの街のガーディアンだ。」


 その言葉に俺とヒショウは男子生徒の方を振り向いた。


「⋯⋯君がガーディアン?」

「えぇえぇぇええ!!聞いてないよ!?」

「俺言ってねーし!俺の事探しに来たなんて知らねーし!知らない奴にいきなり俺はガーディアンですって自己紹介する必要ねーだろ!」


 確かに男子生徒の言う通りだ。

 だが、いきなりの出来事すぎて俺達は状況を飲み込めずにいた。

 それに対し学園長の対応は早かった。


「グレイ。この者達はお前の力を必要としている。行け。」

「いやいやいやいや!そんないきなり言われてもだな!俺だってこれでも一応学生やってんだぞ!」

「お前は本当に馬鹿だな。何の為に叔父が創立させた学園にお前を入学させたと思ってるんだ。」


 俺は凄い速さで繰り広げられている会話を聞きながら1つ疑問が浮かんだ。


「叔父って⋯⋯誰だ?」

「ビアもそう思った?俺も違和感あるなって思ってた。」


 この会話が学園長の耳にも届いていたらしい。


「グレイの叔父は俺だ。」

「⋯⋯え?」

「え、嘘、若くない?」


 俺達は見た目年齢30の学園長が男子生徒の叔父であるという事実に困惑していた。

 よく見れば学園長も男子生徒も同じ銀髪に金色の瞳だ。それを踏まえれば、男子生徒が学園長に対してフレンドリーに話しかけてることには納得がいくが、年齢差に納得がいかない。


「こいつなぁ、見た目これだけど実年齢58なんだよ!」

「え、58?」

「そうなんだよ!!おかしいだろ!?若作りしてんだよ!」

「グレイ?」


 学園長は男子生徒の若作りの言葉を聞き、とても素敵とは言えない鬼のような笑顔でグレイを見つめている。


「いや⋯⋯別に何も言ってねーし⋯⋯空耳だろ⋯⋯。」

「俺にははっきりとグレイの声で若作りと聞こえたんだがな。まぁ、お客様の前で喧嘩する訳にも行かないからここは見逃してやろう。」

「有り難きお言葉!」


 男子生徒が素早く土下座をした所で学園長は真剣な顔でもう一度行った。


「グレイ。お前はこの街のガーディアンだ。そしてそのガーディアンをこの国が必要としている。今がお前の秘めた力の見せ所だ。行け、グレイ。」


 男子生徒は床から顔を上げ学園長の目の前にゆっくりと立ち上がると、姿勢を正して話し始めた。


「俺はガーディアンに選ばれたことを誇りに思っている。だからこそ今まで街を守ってきた。ただ正直言って⋯⋯俺は怖い。」


 俺から見える男子生徒の表情は困惑しているように見えた。


「俺はまだ16だ。まだ街を守るので精一杯な俺が、果たして国を守る一員になれるのか⋯⋯周りに迷惑かけずにいられるのかって不安なんだ。」


 男子生徒が発したその言葉は震えているように聞こえた。「怖い。不安だ。」それは齢16の男子生徒の率直な気持ちだということが伝わってきた。


 そりゃあいきなり一緒に国を守りましょうと誘われて不安を抱かないことはないだろう。

 でもそれは、たった4つしか変わらないかもしれないが少し年上の俺でさえ抱いた気持ちだ。だからこそ、一緒に助け合いたい。

 それを男子生徒に伝えようと口を開こうとした時だった。


「グレイ。そりゃ誰だって最初は怖いだろう。きっとそこにいるビアくんやヒショウくんだって初めは同じ気持ちだったはずだ。」


 俺よりも先に口を開いたのは学園長だった。


「それでも今この2人はここにいる。それは勇気を出して国のために力を発揮しようと心に決めたからだろう。⋯⋯グレイ。お前の怖いという不安な気持ちは抱いて当たり前の感情だ。だが、ここで引き下がったらそれはお前の負けだ。」


 淡々と、しかし心に響くような声で話す学園長の言葉を男子生徒はどう受け止めているのだろうか。

 学園長は一呼吸置くと、笑顔で男子生徒に向かって言った。


「グレイ。大丈夫だ。お前は俺の自慢の孫だ。自分を信じて、この街のガーディアンだということに誇りをもって、自分なりに楽しんで戦ってこい。お前ならできる。」


 それを聞いた男子生徒は、学園長に負けないくらいの素敵な笑顔を見せた。


「俺は弱くなんかねぇからな。やってやるよ!」

「あぁ。その意気だ。」


 すると、学園長は俺とヒショウの方を向いた。


「ビアくん、ヒショウくん。迷惑かけることもあるかもしれないが、どうか俺の孫をよろしく頼む。」

「はい、もちろんです。」



 俺達3人は学園を出ると次の街に向けて歩き出した。


「吸血鬼がビア。透明人間がヒショウ。よし!覚えたぞ!俺はフランケンのグレイだ!2人共よろしくな!」

「あぁ。よろしく。」

「よろしくね〜!」

「俺は3人目なんだなぁ〜。なんか嬉しいわ。仲間に入れてくれてありがとな!」


 最初に出会った時とは真逆で、グレイはとても嬉しそうに笑った。


「あ、そーだ。ビア、次はどこの街へ行く?」

「あぁ。そうだったな。」


 俺は書物を広げヒショウと相談を始めた。


「おっ!「サーペント」あんじゃん!」


 隣でそう言ったのはグレイだった。いつの間にか書物を覗き込んでいたらしい。


「「サーペント」だったら隣だからここから行きやすいし近いぞ?」

「それなら「サーペント」に行ってみる?」

「そうだな。せっかくグレイとも仲良くなったんだ。ここから「サーペント」まで案内してもらおう。」

「おぅよ!任せとけ!」


 先頭に立ち張り切って歩くグレイの背中を見て、俺はグレイがとても頼りになりそうだと感じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ