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HalloweeN ✝︎ BATTLE 〜僕が夢みた150年の物語〜  作者: 善法寺雪鶴
仲間を探しに
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偽物の自分

 突然鏡像から放たれ始めたレガロ。

 初めは避けることで精一杯だったが、避け続けていたことで判明したことが2つあった。


 1つ目は、鏡像の放つレガロが俺達の使用するレガロと同じだということだ。

 同じなら、どんなレガロがあるか予想がつくため対策をすることも可能だ。


 そして2つ目は、鏡像それぞれがレガロを放つ相手が1人に定まっているということだ。

 兄さんには兄さんの鏡像、和倉(わくら)には和倉の鏡像がレガロを放っている。

 その流れで行くならば、牡丹(ぼたん)には牡丹の鏡像、俺は俺の鏡像が相手になるはずだ。しかし、俺達だけは違った。

 俺には牡丹の鏡像が。牡丹には俺の鏡像がレガロを放ってくるのだ。


 偽物と言えど牡丹は牡丹だ。

 牡丹と戦うなんて出来るはずがない。


 俺は牡丹のレガロを知っている。だから、ひたすらに鏡像の牡丹が放つレガロを避け続けた。

 牡丹も同様に鏡像の俺にレガロを放つことが出来ないようで、必死に避け続けているようだった。


 「鏡像が一定数レガロを放てば鏡像は消える」とか、「一定時間経てば鏡像が消える」といったルールがあれば、回避を続けるだけで何とかこの状況を打破できる。

 しかし、実際はそのようなルールは一切公表されていない。

 鏡像が消える方法や戦いを終わらせる方法が分からない今、回避を続けるのは体力を消耗するだけで命取りになる可能性がある。


 この状況、とても厄介だ。

 相手が俺の鏡像なら容赦しないんだけど⋯⋯。


 俺の鏡像に対象として見られていない上に偽物の牡丹には立て続けに攻撃を受けている今、なかなか行動に移せずにいた。


 その時だった。


「うあぁああ!!くっ⋯⋯うっ⋯⋯あぁ⋯⋯」


 兄さんが苦しそうに呻き声をあげた。


「兄さん!?」


 俺が気を取られていると、偽物の牡丹が容赦なく俺に「雲雀殺(ひばりころし)」を放ってきた。

 純白の雪雲雀(ゆきひばり)の大群が俺目掛けて飛び交う。

 雪雲雀が俺に刺さるだけでなく、不意打ちによる勢いで俺は壁に打ち付けられた。


 兄さんは頭を抑えながら苦しみ、蹲り続けている。


 兄さんは「コロ・ルーイン」というレガロが使える。これは、言葉にせずとも相手に直接情報を伝えたり見せることが出来るレガロだ。

 記憶や情報の共有ができるため、敵が目の前にいても作戦を伝えられとても役立つと兄さんが言っていた。

 しかしそれと同時に悪い使い方をすると、相手にトラウマを植え付けることだって出来てしまう危険なレガロだとも言っていた。


 もしかしたら、鏡像の兄さんは、兄さんの過去の記憶か兄さんが抱えているトラウマを見せたのかもしれない。


「に、兄さん!!」


 兄さんの気持ちを現実に引き戻す為叫ぶが、俺の声は今の兄さんには届かない。


 助けに行こうと立ち上がるが、行かせまいと言うかのように俺と兄さんの間に牡丹の鏡像が入り込んできた。


 そして、牡丹の鏡像により兄さんが俺の視界から外れた瞬間だった。


「やめて!!」


 牡丹が兄さんの方を見て必死に叫んだ。


 牡丹の叫び声と同時に聞こえなくなった兄さんの声。

 ただならぬ雰囲気を察した俺は、ついに目の前にいる牡丹の鏡像にレガロを放った。


雷乱 (らいらん)凍雨(とうう)!!」


 ひし形に尖った氷あられが雷のように勢いよく鏡像の頭上へ降り注ぐ。

 油断をしていた牡丹の鏡像は、避けられず餌食となった。


 苦しむ鏡像を横目に兄さんの元へ駆け出すが、兄さんはすでに倒れ込んでいた。


「兄さん!!返事して、兄さん!」


 近寄り声をかけるが返事がない。

 意識を失っているようだった。


椿(つばき)!トッキーの様子は!?」


 和倉が必死の形相で駆け寄ってきた。


「返事はないけど鼓動はある。多分、意識を失っているだけだと思う。」

「そっか⋯⋯。」

「和倉、鏡像は?」

「隙が見えたから鏡像に剣刺して「心炎(しんえん)」で燃やした。今は見ての通り焦げた状態で倒れてる。あのまま起き上がらなければいいけどな。」


 和倉の目線の先には、真っ黒に焦げた鏡像が倒れていた。

 (かるま)のように不死でない限りもう立ち上がることはなさそうだ。


「そういえば、トッキーの鏡像いないよね?」


 和倉に言われて初めて気がついた。

 確かに兄さんの近くにいたはずの鏡像は、辺りを見渡しても見つけることが出来ない。


 なるほど。俺達が戦闘不能状態になれば消えるということか⋯⋯。


「くそっ!!」


 苛立ちから地面を殴る。鏡像と戦い体が火照っている俺達に対し、地面はひんやりとしている。

 冷たい地面が必死に戦う俺達を嘲笑っているように感じた。


「椿!立って!」


 和倉の声で我に返った俺は、立ち上がり振り返った。

 牡丹の鏡像が微笑みながらこちらへ近づいて来ていた。


 「雷乱凍雨」は普通ならかなりの打撃になるはずだ。

 こんなに平然としていられるのは鏡像だからだろう。


 そして、あの威力でもほぼ効果がない事を考えると⋯⋯


「お兄様!!」


 俺の鏡像から逃げ続けていた牡丹が牡丹の鏡像を通り過ぎると俺の目の前で立ち止まった。


「お兄様!場所を入れ替えましょう!」


 たったそれだけの言葉を発した牡丹は、追いかけてきていた俺の鏡像から逃げる為直ぐに俺の元から去った。


 こういう時、牡丹と双子で良かったと思う。


 たったあれだけの言葉だが、俺には牡丹の言いたいことが全て理解出来た。


「分かった!」


 俺は牡丹に声が届くよう大きな声で答えると、牡丹の方へ走り出した。

 そして、牡丹の鏡像もそんな俺を追いかけてくる。


そのなかなか止まれないようなスピードで追いかけてくれるなら好都合。


 俺達は目配せをすると、タイミングを合わせ部屋の中央ですれ違い背中合わせに立った。

 今目の前には牡丹を追いかけていた自分の鏡像が止まることを知らずにこちらへ勢いよく向かってくる。


 俺は鏡像に笑いかけた。


「自分相手ならやりやすい。」

「お兄様の言う通りです。」


 俺達はお互いに息を吸い込み同時に叫んだ。


牡丹雪(ぼたんゆき)!!」

氷柱椿(つららつばき)!!」


 俺の「牡丹雪」が俺の鏡像を、牡丹の「氷柱椿」が牡丹の鏡像を襲う。


 俺の鏡像は重量のある大量の牡丹型の雪に潰され、牡丹の鏡像は、鏡像を中心とし地面から生えた大量の氷柱に貫かれた⋯⋯はずだった。


「⋯⋯は?」

「う、嘘⋯⋯どうして⋯⋯」


 俺と牡丹は目を疑うような光景に言葉を詰まらせた。


 俺達の放ったレガロは鏡像に触れた瞬間、吸い込まれたかのように消えていったのだ。

 先程牡丹の鏡像に放った「雷乱凍雨」や和倉の「心炎」は確実に鏡像にダメージを与えていたはずだ。


 なのにどうして⋯⋯いや、まさか⋯⋯


 俺は今までの出来事を鑑み、一つの仮説を立てた。

 これを立証するには和倉の力が必要だ。


 まだ距離のある鏡像。

 俺は急いで和倉に向けて叫んだ。


「和倉!何でもいいから俺の鏡像にレガロを放って!」

「はぇ!?わ、分かった!!」


 突然名指しされた和倉だが、兄さんの隣で立ち上がると剣を鞘から抜いた。


鬼燐榴(きりんりゅう)!!」


 大剣を中心に現れた青火。和倉が大剣を鏡像に向けて振ると青火が鏡像に襲いかかった。

 本来なら対象に触れたら爆発するはずのレガロだが⋯⋯


「え!?何!?何で消えんの!?」


 驚く和倉の言葉通り「鬼燐榴」も先程の俺達のレガロ同様に、鏡像に触れた途端吸い込まれて消えてしまった。


 これにより俺の仮説が立証された。

 いや、されてしまった。


 俺達にレガロを放ってくる鏡像が定まっているのと同時に、俺達の放つレガロもその鏡像にしか効果がないという事だ。


「そんな⋯⋯。」


 最も願わなかった事が叶ってしまうなんて、誰が考えただろうか。

 信じたくないが、兄さんの容態も気になるためこの状況を長引かせる訳にはいかない。


 あぁ、俺は牡丹の鏡像を倒すしかないってことなのか⋯⋯。


 絶望に暮れる俺。そんな俺とは反対に、牡丹は自分の鏡像を倒そうと必死だった。


「私の鏡像なのにしぶといだなんて、許せません!貴方の相手はお兄様じゃない!私です!雲雀殺!!」


 牡丹は両掌を揃え口元に近づけると、軽く息を吹きかけた。

 途端に雪雲雀の大群が牡丹の鏡像目掛けて飛び交う。


 勢い良く鏡像にぶつかる雪雲雀。

 弾ける雪の様子から、鏡像に吸い込まれずに当たっているようだった。


 先程は当たらなかったはず⋯⋯どうして⋯⋯。


 細かく砕け弾けた雪が霧のようになり、鏡像が一瞬見えなくなった。


「⋯⋯やりました。」


 牡丹は肩で息をしながら胸に手を当て気持ちを落ち着かせているようだった。


 本当にやれたのだろうか。


 静かに霧が消えるのを待つ。

 徐々に消えていくと、鏡像の様子がハッキリと分かった。

 そして、鏡像の様子を理解出来たと同時に、鏡像にレガロが吸い込まれなかった理由がハッキリとした。


「っ!!お、お兄様!?」


 牡丹が驚くのも無理はない。

 そこで倒れていたのは紛れもない俺の鏡像で、牡丹の鏡像は俺の鏡像のいた場所と入れ替わっていたのだから。


 今まで俺の鏡像には手を挙げなかった牡丹。

 俺の鏡像に対しレガロ放った上に傷を負わせてしまった事へのショックで、牡丹は目を見開き固まってしまった。


「牡丹!そいつは偽物だ!もう一度レガロを放て!今ならやれる!」


 俺はそんな牡丹に必死に叫ぶが、その声は届いていないようだった。


「牡丹!」


 俺が牡丹の肩を叩こうとした時だった。


「っ!!ぐっ⋯⋯あぁっ⋯⋯!!」


 俺が牡丹に気を取られている隙に、牡丹の鏡像が俺に「冷凍(れいとう)一刻(いっこく)」を放っていたのだ。


 足先から頭部まで凍り、一時的だが動きを封じられた俺。

 本来ならば思考も停止するが、牡丹と双子で似た様なレガロを放てる上に雪男だということが重なったからか、意識だけはハッキリとしていた。


 だからこそ、牡丹を引き止めたいのに止められないのがもどかしかった。


 その時だった。


「ぼ⋯⋯ぼ、たん⋯⋯。」


 今まで1度も言葉を発さなかった鏡像が突然牡丹の名前を呼んだのだ。

 その声に釣られ、牡丹は何かに取り憑かれてしまったかのようにフラフラと俺の鏡像の元へと歩みを進めた。

 

 牡丹、行くな!!


 そんな俺の気持ちは牡丹に届くはずもなく⋯⋯


「お兄様⋯⋯。」


 俺の鏡像が伸ばした手を握りしめた牡丹は、指先から一瞬で凍りついてしまった。


 また、牡丹が凍りつくと同時に俺の鏡像は消えた。

 役目を終えた、ということだろう。


 俺の鏡像の放った「砕散(さいさん)凍壊(とうかい)」は、名前の通り凍らせ砕け散らせるレガロだ。命の宿っている物に対しては、凍らせ意識を失わせることができる。


 俺の鏡像が消えたということが何を意味するかはもちろん分かっている。

 それでも、俺が牡丹の鏡像から受けたレガロと同様に、牡丹がレガロへの耐性を持っており意識を失っていないことを願った。

 しかし氷が溶けるとやはり牡丹は床に崩れ落ちてしまい、俺の思いも儚く砕け散った。


「っ!牡丹!」


 崩れ落ちた牡丹の元へ駆け出した俺は、牡丹を抱きしめた。


「なんで⋯⋯牡丹まで⋯⋯。」


 唇を噛み締める俺。

 そんな俺の肩にそっと手が置かれたと思うと、隣に和倉がしゃがんだ。


「椿。トッキーと同様、牡丹も息をしてる。大丈夫。生きてるよ。」

「⋯⋯和倉。」

「だから安心して。それと、椿はまだ残ってる牡丹の鏡像を倒さないと。」


 そう言う和倉の目線の先には、少し離れた場所でこちらを見て微笑む鏡像の牡丹がいた。


「牡丹の鏡像との戦闘を終わらせて、牡丹とトッキーの側にいてあげないと駄目でしょ?」

「そう⋯⋯だね。」


 和倉は俺の両肩に手を置き真剣な表情で言った。


「俺は牡丹の鏡像を倒せない。椿がやるしかない。椿が倒し終えるまで俺がトッキーと牡丹を守るから。だから、行ってきて!」


 そんな言葉に背中を押された俺は、


「行ってくる。」


 立ち上がると牡丹の鏡像へと歩みを進めた。

 牡丹の鏡像はそんな俺を微笑みながら眺めている。


 鏡像の近くで歩みを止めると、部屋の中が静まり返った。


 絶対に負けられない。

 絶対に、鏡像を倒す。


 精神を統一させた俺は深く息を吸い込み叫んだ。


「牡丹雪!!」


 それと同時に雲雀殺を発動させた牡丹の鏡像。

 俺は雪雲雀を凍りつかせ避けながらレガロを放ち続ける。

 同様に、牡丹の鏡像も俺のレガロを避けながら様々なレガロを放ち続けた。


 どれくらいたっただろう。

 一向に牡丹の鏡像が倒れる気配がない。


 お互い攻撃をし避けるの繰り返しで全く発展のない状態が続いている。

 これ以上時間をかけてしまったら、牡丹や兄さんの命が危ないかもしれない。


 もう、このレガロに賭けるしかないか⋯⋯。


 体力をかなり消耗するこのレガロ。もうこの時点でかなりの体力を消耗している俺が今このレガロを使ったら、残りの体力はほぼゼロになる。

 もしこれが効かず失敗したら、俺は鏡像に負けるだろう。


 だが、そんなこと言ってられない。


 俺は両手に冷気を込めると、胸の前で手をパンッと叩いた。


冷刻氷河(れいこくひょうが)!!」


 一瞬で部屋が凍りつく。

 それと同時に目の前にいた偽物の牡丹が氷像のように綺麗に凍った。


「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯。」


 やっぱり思った通りだった。


 冷刻氷河は、基本的に生き物を凍らせることが出来ない。

 命が宿っているものは対象外という事だ。


 そして、目の前で凍っている偽物の牡丹はあくまでも鏡像だ。

  動いてはいるものの、命が宿っているとは考えにくい。

 それに賭けたがあながち間違ってはいなかったようだ。


「す、すっげー!!何それ!一瞬じゃん!カッコイイ!!」

「ありがとう。」


 和倉が俺の側まで走ってきた。

 それと同時に牡丹の鏡像は消え去った。


「牡丹とトッキーもちゃんと息をしてる。無事だよ。」

「そっか。よかった。」


 和倉の言葉を聞き安心したのもつかの間、突然目の前で笑っていた和倉が倒れた。


「和倉!?」

「あ、あれ⋯⋯?おかしいな⋯⋯力が、入ら⋯⋯ない⋯⋯。」

「しっかり!!和倉!!」


 俺は意識を失った和倉の脈を取った。


 まだ脈はある。息もしている。ただ意識を失っただけだろうか。でも何故?


 これじゃあ牡丹達と一緒じゃないか。


 疲労から来たにしては違和感しかないこの状況に、不安を募らせながら思考を巡らせていた時だった。


「っ⋯⋯くっ⋯⋯。」


 激しい頭痛と目眩が襲ってきた。

 戦った直後でかなり体力を消耗しているとしても、こんな症状に襲われた事は一度もない。


 膝から崩れ落ちた俺は頭を抑えることしか出来ない。

 味わったことのない痛みと苦しさから吐き気を感じ始めた時、突然笑い声が室内に響き渡った。


「アハハハハッ!ヤット効キ目ガ現レタミタイダネ!」

「待チクタビレタヨ。」


 そんな声と共にマジックミラーの一角が扉のように開くと、その先から現れたミラーとラミー。

 2人は高らかに笑っていた。


「⋯⋯な、何を、したの⋯⋯。」


 俺は力を振り絞り声を出した。

 頭痛の影響もあって声はほとんど掠れている。


 しかしそれを聞き取ったらしい2人は、笑顔を崩さずそれに答えた。


「何モシテナイサ。」

「君達ガ鏡ニ勝ッタダロウ?」

「トイウコトハ影ガイナクナッタモ同然。」

「ダカラ影ノナイ本体モ消エルコトニナルノサ!」

「残念ダッタネ。ミラールームニ入ッタラ最後⋯⋯。」

「コノ【ミラールーム】カラハ誰一人トシテ抜ケ出セ無イノサ!」

「「アハハハハ!!」」


 影が消えると本体も消える?

 ということは、俺は消えてしまうのか?


 疑問は湧き上がるが、そんな簡単な疑問ですらぶつける事が出来ないほど頭痛は増してきていた。


 今まで何とか床に手をついていた俺だが、激しさの増す頭痛に耐えられなくなりその場に倒れ込んだ。


 あぁ、本当に消えてしまうのかもしれない。


 ⋯⋯なんで⋯⋯

 まだ何もしていないじゃないか⋯⋯

 こんな所で死ぬわけにはいかないのに⋯⋯

 牡丹⋯⋯兄さん⋯⋯和倉⋯⋯


 俺は少し離れた所に倒れている牡丹に手を伸ばした。

 その手が届かない事は分かっているが、伸ばさずにはいられなかった。


 そして、頭痛に耐えられなくなった俺は目を閉じようとしていた。



 意識を失う直前、俺の視界に高笑いをするミラーとラミーの後方⋯⋯先程2人が現れた際に開いたマジックミラーの影に見覚えのある物が映りこんだ。


  それはほんの一瞬だけ影から覗いた、毛先が金色に染った真っ白の尻尾だった。

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