独りの世界
僕と篭姫は、幼い頃親に捨てられた。
私は父から暴力を受け飽きられるとそのまま父に捨てられ、堕亡は望まれない子として母に捨てられた。
理由は違かったけれど、捨てられた時期が重なっていた。
僕達はこの『まやかしの森』に捨てられ、業に拾われた。
業に拾われてからはとても幸せだった。
今まで知ることの出来なかった愛を業から沢山教えてもらった。
復讐する気も起きないほどに憎い親を忘れ、新たな生活を楽しんだ。
そして業と篭姫と共に戦い方を学ぶと、僕達は業からそれぞれ永遠の世界を貰うことになった。
しかし、私達がその世界で生きるには条件があった。
それは『歳を取ることができないまま、永遠にその世界で暮らすこと』。
僕と篭姫はその条件を呑み、業から世界を貰った。
その世界は現実世界のような理不尽な世界とは異なり、自分の思い通りに出来る素敵な世界だった。
私と堕亡はそれぞれの世界を楽しむと同時に、それぞれの世界へたくさんの人を招待することにした。
そして生まれてからずっとできなかった様々な童戯を、招待した人々と遊ぶことにした。
でも、遊び終えるとみんな僕を置いて元の世界へ帰ってしまった。
私がみんなとサヨナラをして、みんなが元の世界へ帰ってしまった後は、また永遠の世界でたった独りで暮らすしかなかった。
悲しかった。辛かった。独りぼっちは嫌だった。
初めは1人を楽しんでいたけれど、長く暮らすに連れて1人が辛くなっていった。
それから私達は、自分の世界へ招待した人達とずっと一緒にいられるように『童戯のルール』を決めた。
それは、『自分達が童戯に勝ったら招待した人々を永遠に閉じ込められる。もし負けたら招待した人々は元の世界へ帰る。』というものだった。
「永遠に独りぼっちの世界でそんな遊びをしてしまうと、負けてしまった暁にはもうその世界から出られなくなってしまう」と業から止められたが、それでも私達は独りぼっちにならない選択をした。
だって、僕達が負けなければいいんだから。
それから私達は招待した人々に負けないよう様々な手を使って童戯を楽しんだ。
僕に負けた人々は僕の世界を飛び続ける蝶々となり、篭姫に負けた人々は記憶を全て失くすと篭姫の世界で生き続ける子どもの魂となった。
今まで私達は1度も負けたことがなかった。だって、私達のための世界だから。
なのに、どうして?
なんで僕が鬼ごっこでお姉さん達に負けてるの?
なんで私がわらべうたでお兄さん達に負けてるの?
ありえない⋯⋯僕が負けるなんて⋯⋯
ありえない⋯⋯私が負けるなんて⋯⋯
「⋯⋯い、嫌だよう⋯⋯。」
「⋯⋯嫌⋯⋯もう独りぼっちは嫌なの!!」
「お姉さん!ぼ、僕を!」
「お兄さん!!私を!」
「「独りにしないで!!」」
僕と篭姫は、消えていくお姉さんとお兄さん達に縋るように手を伸ばし続けた。




