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HalloweeN ✝︎ BATTLE 〜僕が夢みた150年の物語〜  作者: 善法寺雪鶴
仲間を探しに
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嘘偽りない関係を

優しく微笑みホールを出てった鴇鮫(ときさめ)。その様子を姿が見えなくなるまで考え事をしながら見送っていた牡丹(ぼたん)は、メニュー表を持って現れた笑顔のスピルウィルの声で我に返った。

 スピルウィルさんがメニュー表を持って現れた為、私はお茶、ミオラさんはコーヒー、吉歌(きっか)さんはオレンジジュースを頼んだ。

 鴇鮫(ときさめ)さんを待つ間私達を放置するわけには行かないと、たくさんのスピルウィルさん達が私達のテーブルにやってくると、様々な話をしてくれた。

 そして、私達が丁度それぞれの飲み物を飲み終えた時、鴇鮫さんがテーブルに戻ってきた。


「皆さん、お待たせてしまってすみません。飲み物の方はどうでしたか?」

「とても美味しかったわ。」

「待ってる間もスピルウィルのお兄さん達がお話してくれてたから楽しかったにゃ!」

「そうですか。それは良かったです。僕の方は準備が整いましたのでいつでも出発できますよ。」

「私達も丁度飲み終えたので、早速お兄様達のところへ戻りましょう。」


 私達が席を立つと、スピルウィルさん達が見送りに来てくれた。


「鴇鮫さん!牡丹(ぼたん)さん!お嬢様方!行ってらっしゃいませ!」

「頑張ってくださいね。」

「鴇鮫さんが戻ってくるの待ってます!」

「応援してるぞ、鴇鮫。」

「お気をつけくださいませ!」


 鴇鮫さんは扉の外に出ると、スピルウィル達の方を振り返った。


「店は任せたよ。行ってきます。」




 スピルクラブの扉を出て入口に戻るまでの間、ミオラさんと吉歌さんの紹介をしていないことに気がついた私は簡単に紹介を始めた。


「こちらの方がメデューサのミオラさんです。」

「よろしくね。」

「そしてこちらの方が化け猫の吉歌さんです。」

「よろしくにゃ〜!!」

「お二人はもう知ってると思いますが、こちらが百目の鴇鮫さんです。」

「よろしくお願いします。」


 鴇鮫さんがお辞儀をすると、ミオラさんがため息をついた。何やら怪訝そうな表情をしている。


「⋯⋯ミオラさん?」

「⋯⋯ねぇ貴方⋯⋯いえ、鴇鮫。もうその話し方は終わりにしてもいいんじゃないかしら?」

「⋯⋯え?」


 いきなりの発言に鴇鮫さんは戸惑っているように見えた。


「だってその話し方仕事用でしょう?仕事はもう終わりよ。私達は仲間なんだから普段通りに話して欲しいわ。」


 一瞬キョトンとしていた鴇鮫さんだが、すぐに笑った。


「そっか。君達には何でもお見通しってことか。よく分かったね。俺の話し方が仕事用だって。見破られたのは初めてだよ。」

「当たり前じゃない。仲間になるんですもの。それくらいは見破れないと。」


 ミオラさんは微笑んだ。鴇鮫さんもミオラさんの言葉に肩の荷が降りたような、自然な表情をしていた。


 その様子を眺めていた吉歌さんが、突然鴇鮫さんに飛びついた。


「鴇鮫!」

「び、びっくりした⋯⋯どうしたの?」

「鴇鮫って名前少し長いと思ったにゃから、何か呼び方ないかなってずっと考えてたにゃ!そこで思いついたにゃけど⋯⋯」


 吉歌さんは鴇鮫さんにあだ名を付けたということだろうか。

 少し興味がある。どんな名前にしたのだろう。


「トッキーはどうにゃ?言いやすいし可愛いと思うにゃ〜!!」


 自信たっぷりな様子の吉歌さん。

 それを見た鴇鮫さんは笑いを堪えきれず吹き出した。


「あはははっ!俺にあだ名つける女の子初めてだよ!トッキーね⋯⋯いいあだ名だね。嬉しいよ。」

「トッキー公認にゃ!褒められて吉歌も嬉しいにゃ!」


 笑顔で言う鴇鮫さんを見た吉歌さんは飛び跳ねながら喜んでいた。

 ミオラさんは微笑ましい2人の様子を笑いながら見ていた。


 一時はどうなるかと思ったけど、こんなに早く仲良くなれたなら本当によかった。


 そんなことをしていると、いつの間にか私達はお兄様達のいる扉の前まで来ていた。


 男性の皆さまも鴇鮫さんを受け入れてくれるといいなぁ。



 外に出ると、お兄様達はすぐに私達が来たことに気がついたらしい。


「おかえり、牡丹。」

「お兄様、お待たせしてしまいすみません。」

「大丈夫だ!俺達は俺達で椿(つばき)からいろんな話聞けたから楽しかっ一一」

「うるさい!黙れグレイ!」

「うぇー!?俺楽しいしか言ってないじゃん!」

「それも言っちゃダメだよ〜。また照れちゃったじゃん〜。」

「うるさい!照れてない!」


 お兄様は私達がいない間に皆さんと仲良くなっていたらしい。


 お兄様⋯⋯とても楽しそう。良かった。


 お兄様が皆さんと仲良くしているのを見て私は安堵した。


「牡丹。その人がガーディアンか?」


 ビアさんは吉歌さんと話をしている鴇鮫さんを見て言った。


「はい、そうです!皆さんにご紹介しますね!」


 私の声に気づき、ヒショウさん達や鴇鮫さん達が私を見た。


「こちらの方が「オープス」のガーディアンでありスピルウィルをしている鴇鮫さんです。」


 私が紹介をすると、鴇鮫さんは男性陣にお辞儀をした。

 流石スピルウィル界のレジェンドなだけありとても綺麗なお辞儀だ。


「ご紹介に預かりました。百目の鴇鮫です。どうぞよろしくお願いします。」

「おう!よろしくな!俺はグレイだ!」

「ヒショウです!」

「ビアだ。よろしく。」


 皆さんが簡単に自己紹介を終えると、鴇鮫さんはお兄様の方を向いた。


「椿、久しぶり。元気だった?」

「⋯⋯あぁ。」

「いつも店の中に入ってこないから気になってたんだ。会えて嬉しいよ。」


 お兄様は何か考え込んでいるようだった。

 それを見たビアさんがヒショウさんとグレイさんに何か指示を出すと、2人はお兄様に耳打ちをした。


 お兄様は覚悟を決めたように顔を上げた。


「兄さん。俺、兄さんがスピルウィルになってから兄さんが変わっちゃったんじゃないかって、兄さんは俺みたいな男はどうでも良くなったんじゃないかって不安だったんだけど⋯⋯その⋯⋯。」


 お兄様は、以前私に打ち明けた不安を鴇鮫さん本人に伝えた。

 私は鴇鮫さんは優しい方のままだと伝えたけれど、やっぱり不安は拭えていなかったらしい。

 本人に伝えたお兄様は不安そうな表情を浮かべていた。


 それを聞いた鴇鮫さんは驚いていた。


「そっか⋯⋯俺、椿を不安にさせてたんだね。ごめんね。俺がこんな仕事をしているから⋯⋯。」

「違う!兄さんがスピルウィルをしていることは嫌じゃない!だって凄く似合ってるし!牡丹からも楽しそうに仕事してるって聞いてたから⋯⋯。でも、何となく不安だったんだ⋯⋯。」


 鴇鮫さんはお兄様に近づくと、お兄様の頭に手をポンッと乗せて言った。


「俺は昔からずっと変わらず椿のことが大好きだよ。だって、俺にとって大切な弟だからね。」

「嘘じゃないよね⋯⋯?」

「あぁ、もちろん。嘘じゃないって誓うよ。」


 鴇鮫さんの笑顔に、お兄様は安心したようだった。

 ずっと悩んでいたことが晴れて、心がスッキリしたような表情をしていた。


「よかった⋯⋯。これからも兄さんのこと好きでいていいんだよね?」

「もちろんだよ。嫌いになられたら俺だって寂しいからね。」


 お兄様の様子を見たビアさんとヒショウさん、グレイさんは優しく微笑んでいた。

 お兄様の背中を押してくれた3人に感謝しかない。


「ありがとうございます。」

「いや、俺達にはこれしか出来ないからな。」

「そ、そうそう!」

「だな!仲間になるんだし、悩みは無くさないとな!」


 私が小声で3人に伝えると、笑いながら返してくれた。

 ヒショウさんはビアさんに隠れながらも答えてくれた。


 よかった。女性恐怖症と聞いていたけれど、少しはお話が出来そうだ。


 すると早速ビアさんが全員に向けて声をかけた。


「鴇鮫が来たことだし、早速だが次の街に行こうと思う。鴇鮫、ここから近い街はあるか?」


 ビアさんが鴇鮫さんにリストを渡すと、鴇鮫さんはすぐに答えた。


「「オーガ」かな。山を越える必要があるけれど、一応隣街だよ。」

「山か⋯⋯少し時間がかかりそうだが、みんな大丈夫か?」

「私達はさっきお茶飲んだから問題ないわ。」

「そうにゃ!元気にゃ!」

「そうですね。お兄様達は休憩しなくて大丈夫ですか?」

「さっきまでここで涼んでたから平気。」

「おうよ!体力はあるぜ!」

「うん。大丈夫。」


 全員の返事を聞き、ビアさんは頷いた。


「よし。それじゃあ早速「オーガ」へ行こう。」

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