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詩のようなものたち

年月

作者: 暮 勇

痩せ細った腕には

侘しさが宿っていた


あの時

私を抱き上げてくれた

若く、日に焼けた

逞しい腕


あれは20年以上前

すず虫の音が静々と夜山に響く

蒸し暑い夜だった

泣き疲れた私の目には

皺のない、責任と若さに満ちた

星と同じくらいの輝きに満ちた目を見た


そして時が経ち

その目に映るは雲に澱んだ

のっぺりとした暗闇の空

手足も随分細くなり

皮がたるんでしまっていた

老い、弱った雄鹿を見るような気分だ

嘗ての逞しさは

それを誇示するかのような角にしか

見て取れぬような


山を駆け回り

一族を導いた雄は

生まれた山の土に還ろうとしている

あと何年か

そんな、いつ落ちるとも知れぬ

線香花火の如き命

その最後の輝きを映す目は

今、私に宿っている


一族の最後の一匹

例えあなたほど逞しくなくとも

胸を張り、闊歩しよう

あの時

私を抱えたあなたがそうしたように

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