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2月19日:傾国

 テレビで『楊貴妃饅頭』というものが宣伝されていたので購入してみた。何しろ食べると楊貴妃のような傾国の美人になるらしい。

 国が傾くのは勘弁だが、美人には私も興味がある。てことで過剰包装をくぐり抜けて実食。

 味はまあ、価格相応な上用饅頭というところ(1個当たり200円近い)。何故か皮からはイチゴの味がした。胡麻の香ばしい香りも漂ってきた。これが中国、唐王朝の味なんだなあと納得した。

 

 しかし本当に傾国の美人になれたのか。正直疑わしいのだが、ともあれ外に出て近所をぶらぶらすることにした。

 するとどうだろう。駅前のタワマンとか雑居ビルとかスーパーマーケットとかが軒並み斜め45度に傾いているではないか。なんていうことだ。私が呆然と立ち尽くしていると肩をポンと叩かれた。振り返れば知らないおじさんだ。不審だ。なんだろう。

 「――君、」

 「はい?」

 おじさんの表情は真剣そのものだった。

 「君、――これが国だよ。」

 「――これが、ですか。」

 おじさんは深くうなずいた。何度も。何度も。

 「そう。これが、国。」

 

 おじさんの言葉には何だか妙に納得させられるところがあった。そうか、国は、こんなに近所にあったのだ。

 私は、すでに倒壊寸前となった哀れな日本国の末路を、ただ棒立ちして、指をくわえて眺める事しかできなかった。

ひとは無力だ

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