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2月18日:ビルディング
なんかの機会に市内の人口密度を色の濃淡であらわした地図を見たところ、一か所真っ赤になっている点があった(高い人口密度を意味する)。
早速赴くとそこは海沿いの工業地帯で、古びたコンクリート造りのビルが建っていた。高さは10階建てくらいで、肩身狭そうにひょろりと建っている姿はとても人口密集地には見えない。
「本当にここがあの、人口密集地なの?」
私は先生に訊いたが答えは返ってこなかった。何しろ周りには人影ひとつない。遠くから波の音が聞こえる。
ビルの中は見た目より広く、そして新しかった。
最上階には綺麗な展望ルームがあって、きれいに磨かれた窓からは駅前の高層ビル群を望むことができた。私はそこで旧友に再会した。彼は高校を出た後家の整形外科を継ぐそうだ。
「これが我が家伝統の骨接ぎハンドだ」
そう自慢げに差し出された腕には何ら特殊性が認められなかった。曰く脱臼している人だけはこの腕が輝いて見えるらしい。
本当か? と思い試しに自分の肩を脱臼させてみたが、想像以上に痛みが強く、そこで目が覚めてしまった。