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2月28日:炎

 私は炎だった。物質的にではなく、観念的に。

 視覚、聴覚、嗅覚、触覚において私は完全に一人の人間であったが、しかし精神は自分の本質が炎であることと信じて疑わなかった。膨大な熱が足元から頭頂へ流れていた。

 「そう、その調子。それが○○(本名)さんの仕事。」

 私は誰かに語りかけられた。だが、その発言はまったく脈略を欠いているように思えた。私は何の仕事もしていない。

 

 はるか遠くには巨大な絵画があった。ここで「あった」という曖昧な表現の仕方をしたのは、あまりに巨大すぎて「掛かっていた」とか「立てかけられていた」等と言うのがはばかられる気がしたからだ。絵画はまるで西新宿の摩天楼のようにそびえ立っていた。

 絵画には阿鼻叫喚が描かれていた。とある有名な美術評論家(名前は忘れた)が「精緻なタッチ、真に迫った描写」と評した、20世紀の傑作中の傑作である。しかし阿鼻叫喚はそれ自体、絵画とは独立して存在していた。私の本質は23区を包み込み、900万人が私になった。私は拡大を続けた。けれどもそれは、あるいは拡散だったのかもしれない。

 

 私は書物を燃やす炎だった。すなわち華氏451度、と言えばわかりやすいと思う。

 「それが仕事なのよ、○○(本名)さん。」

 私は首肯した。あれだけ大きく、威容を誇っていた絵画は、今や無残な灰と切れ端となり果てていた。

長い回が続いたのでたまにはキュっと短く

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