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#2 妹もいる

「で、何があったんだ?」


俺は新しいグラスに三ツ矢サイダーを注ぎながら言った。


藍の荷物を一通り部屋に運び終わり、俺は藍が何故家に泊まらせて欲しいと言ってきたのかを聞いた。


「…それはね、家親と喧嘩して、でてけっ!て荷物ごと放り出されて…。」


「喧嘩?」


俺は三ツ矢サイダー入りのグラスを藍に差し出す。


藍は喉が乾いてたのかあっという間に飲み干し、俺のまで手を出した。


「うん。なんかお父さんの部屋に注射器が沢山あったから、不思議に思って聞いてみたの。何でそんなに注射器があるの?って。そしたら、怒られて…。」


「注射器?それって…。」


まさか藍の父親は薬に手を染めていたのか?


もしそうだったら大問題じゃないか。


テレビのいい餌不可避だな。


「お父さんの仕事、お医者さんだから。一本や二本位なら何時もの事だけど、今回はいつもより多かったから。」


「うーむ。こりゃあ警察行ったらいいんじゃないか?」


俺がそう言うと藍は咄嗟に「駄目っ!」と叫んだ。


「解った解った。言わないから……。」


俺は宥めるように言った。


藍もはっ、と我に帰り顔を赤くしながら着席した。


「しかし何故駄目なんだ?俺じゃ役に立たないぞ。」


「色々あってね…。取り敢えず、数日だけ、お願い。」


別に俺に何か危害が加わりそうな雰囲気は無いし…。


「解りましたー。んじゃ、作業を開始しますか。」


「作業?」


「お前の荷物、出さなきゃいけないだろ。」


俺はそう言って二階へと向かう。


「あぁ…確かに。」


藍もグラスに残ってた三ツ矢サイダーを飲み干し、俺の後を付いてくる。




我が家は二階建ての築5年の一軒家。


決して広いとは言えないスペースに一階はリビング、風呂場、トイレ、和室の四部屋、二階は元両親の部屋、俺の部屋、妹の部屋、トイレ、乾燥室の五部屋、更に小さめの屋根裏で構成されている。


数日とはいえ、藍をリビングで寝かせる訳にはいかないので、元両親の部屋を藍の部屋にした。


幸い、ベットやクローゼット等の家具類が残っており、全ての荷物を収容できた。


「以外に少なかったな。」


藍の荷物は数日分の着替えや歯ブラシ等の日用品、スマホ、財布等の貴重品しか無く、どれだけ緊迫した状況で家を出たのかが目に浮かぶ。


もし俺が家から追い出されたらあれやこれや持ってくな。


そして誰かに助けてもらう前に重すぎて過労死してそう。


まぁ今は俺がこの家の家主だからそんな事有り得ないけど。


さて、この後どうしようか。


ご近所さんに挨拶兼家の周りを案内してもいいし、買い物に行ってもいい。


何をすべきか迷っていると、


「おにぃー。面白そうな映画あるんだけど見に行か…。」


今日1度も部屋から出てこなかった妹の冬月

彩がやって来た。


彩は俺と藍の顔を交互に見ながら


「おにぃの変態。スケベ。屑。社会のゴミ。ハゲ。」


「相変わらず表現が酷いな。レパートリー増やせないのかよ。毎回毎回同じのばっかりで飽きてきたんだが。」


何かある度、彩はスケベだの屑だの言ってくる。


尚、ハゲは今回初登場だが、関係なくね?


「はぁ!?おにぃが飽きたとか知らないんだけど。おにぃの鬼。」


「くだらんダジャレは要らん。部屋に戻って勉強でもしてろ。」


「はぁ!?勉強なんて終わったし!おにぃの方こそ女の子連れ込んでないで勉強したら?」


それは不味いんじゃないかなぁー。


なんのお勉強かなぁー?


じゃなくて、その言い方だと、俺が連れ込んだみたいな言い方だが、俺は保護してるんだ。


毎回毎回だが、こいつと話してるとなんかイライラしてしまう。


ムクムクと湧き上がる対抗心を抑えきれなかった俺は叫んだ。


「とっとと部屋でマイクに向かって喋ってろ。慣れるかどうかも解らない声優目指してな!」


「…っっっ!」


彩は見る見るうちに顔を真っ赤にし、目には涙が浮かび始めた。


俺の妹、彩には秘密かある。


今の会話の通り、声優を目指しているのだ。


別にそんな人はたくさんいるのだが、彩は声優を目指しているのを断じて人には言わない。


何が原因で秘密にしているのはよく解らんが、とにかく声優の事に触れると無事死亡する。


彩は「おにぃのバカ!知らないから!」と言って自室に戻っていった。


いや本当何なんだよ。喧嘩売りに来ただけじゃん。


「…あ、ごめん。紹介してなかったか。あいつは俺の妹の彩。ご覧の通り面倒臭いガキなので、あいつの部屋には近寄んない方がいいと思う。」


すっかり忘れていた藍に彩を紹介した俺は声優の件を口止めする。


藍はすんなり約束してくれた。


「でも、酷いと思うよ。彩ちゃんが秘密にしている事を言うなんて。」


俺が藍の部屋を出る時に藍が呟いた。


「そうか?」


「そうだよ!私、妹とか居ないから解らないけど、でも、酷いと思うよ!」


昔は彩もお兄ちゃん!お兄ちゃん!なんて可愛い奴め。状態だったのだが、彩が中学に入った頃からあんな感じになってしまった。


変な友達に吹き込まれたのか何なのかは知らんが、さっきのような喧嘩は当たり前になってしまっている為、彩の事を考えた事は無かった。


確かに、自分の秘密を人の前で言われるのは恥ずかしいかもな。


「解った。気をつけてみる。」


そう言うと、藍は満足そうに笑った。

妹ほちぃ

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