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#1 出会い

悩み。


それは、誰しもが一度や二度必ず持つ物である。


内容は人によって様々で、高校に落ちた、彼女にフラれた、宇宙人に誘拐された、石油王からラクダがクール便で届いた、等様々である。


勿論、僕にだって悩みは沢山ある。


親が出ていった事や、ネット依存症による学力低下が主だが、一番の悩みはこれだろう。


我が家に美少女が住み着いてしまったんだが。




事の発端は今年の春だった。


高校への進学を控えた春休み。


俺は庭で草むしりをしていた。



俺の名は冬月 優也。


学力、見た目共に平凡な新高校生。


つい先日両親が離婚し、二人とも実家に帰った為、残された俺は両親が残したお金を使って自炊生活を送っている。


最初の頃はおにぎりや味噌汁しか作れなかったが、2ヵ月経った今では焼き魚や親子丼位なら作れるようになった。


今日は親が出ていってから2ヵ月が経過した日で、母親が趣味で造ってた庭の雑草が伸びきってたので、進学への気分一新を兼ねて始めたのだが…。


想像以上に雑草が生えており、開始から既に3時間が経過していた。


全体の半分も終わっていないのだが、軍手の損傷が激しいのと、手が疲れたので休憩を取ることにした。


緑のペンキが塗られた縁側に腰掛け、炭酸が抜けた三ツ矢サイダーで、喉を潤す。


受験や入試結果発表などで身心ともに忙しかった為、久しぶりにまったりとした時間を過ごせた。


家の前の坂を行き交う人々を眺めながら時の流れに身を任せていると、見覚えのある少女が、目の前を通過していった。


小柄な身長に美しい黒髪を後ろでまとめたポニーテール。


歩く度ミニスカートが揺れ、黒ニーハイとの間から顔を出す美しい太もも。


胸は決して、断じて大きくないが、童顔の可愛いらしい少女。


彼女は俺の同級生だった少女、琴吹 藍だ。


中学では学年のマドンナ的存在で、超可愛いくて、愛くるしくて、神でさえデレデレになるであろう。by元同級生男子A


普段から笑顔を絶やさない藍だが、今日は違った。


俯きながらふらふらと蹌踉めきつつ、ゆっくりと歩いている。


何故かどうしても気になった俺は庭を飛び出し、彼女に声を掛けた。


今思えば、この行動が後々面倒くさくなるのであるのだが、この時の俺はまだ知る由もない。


「琴吹ー。」


「えっ。優也?。何でここに?」


俺の声に気づき、振り返った顔は暗く、絶望感が溢れていた。


「それはこっちのセリフな。ここ、家だから。」


俺は赤紫色の塗装が施された我が家を指差す。


元々は紺色だったのだが、雨によって色あせ、赤紫色になったのだが。


藍は我が家を眺めて「ふーん」と言った。


「それで、何で死を迎える事を察した仙人見たいに暗いの?」


「仙人って……。別に、優也には関係無いし…。」


確かに、俺には関係ない。


だが、藍の暗い顔を見ていると、何とかして笑顔にしたいという気持ちがこみ上げてくる。


だが、俺はその気持ちを必死に抑える。


これ以上追求して、更に気を悪くしたら困るしな。


「そうか。ここ、坂きついから気をつけろよ。」


俺は軽く手を振り、庭に戻ろうとする。


すると藍が、


「な、なによ。もっと追求するでしょ。普通。」


普通、が良く分からないがこれはどういう事だろうか。


もしかして、誘ってるのだろうか。


それなら断る手は無い。


なんせ相手は学年のマドンナだからなっ!


「そうか。なら、話を聞こう。」


「随分偉そうね…。」


そう言ってまた下を向き、耳まで真っ赤にしながら


「す…数日だけ泊めて貰えないかな…。」


……は?


いやいやいやいやいやいやいや。


落ち着け俺。


もしかして聞き間違えか?ハッタリか?


「…そうか!からかってるんだな。ならお断りだ。」


俺はそう強く言って庭に戻る。


予想の斜め上を行く回答に頭が混乱する。


やけくそ気味にグラスに残ってた三ツ矢サイダーを飲み干し、草むしりを再開する。


愛の告白やデートのお誘いを期待していたのだが、いきなり結婚…じゃない同棲…でもないお泊まりしてもいい?と聞いてくるなんて。


いいか。


女の子が男の子の家にお泊まりするという行為は大イベントなのだ。


しかも家には両親が不在。


あんな行為やこんな行為をしてしまったらどうするのか。


いや、しないけど。


したいけど。


とにかく、お泊まりはとても重要なイベントなのだ。


それを突然言われたら誰だって混乱するだろう。


少なくとも俺はする。いや、した。


そんな事考えながら、せっせこと草むしりをする俺の視界の端では、藍がずっと下を向いたまま立っている。


数分、数十分、1時間過ぎても彼女は微動だにしなかった。


たが……良いのか?


こんなチャンス滅多に無いぞ。


俺の中の悪魔が囁き出した。


いや、駄目だ…。いや…良い。いや…でも…。


長い長い葛藤の末、


天使と悪魔による脳内閣議で、数日だけならお泊まり許可法が成立しました。


草むしりをする手を止め、俺は藍の元へ向かう。


「あのさぁ…。」


俺はハァっと溜息をつき


「解ったから。事情しだいでお前を泊めてやる。丁度親いないし。」


なんか苛められそうなので、クラスの皆には俺の親が離婚した事は告げていない。


どうせ数日だけだろう、と考えた俺は旅行に出かけた、と付け足す。


藍は顔を下に向けたまま、


「本当…?」


「数日だけだからな…。」


彼女の笑みを見てると顔が赤くなりそうなため、俺は顔を逸らしながら答える。


「あ、ありがとう。」


相変わらず下を向きながらもさっきよりも明るい声だった。


俺は相変わらず顔を逸らしながら、藍が背負っていためっちゃ重そうなカバンやリュックを持ち、家の中へ運ぶ。


藍も弾むような足取りで俺についてきながら我が家に上がった。


これが、僕の新しい日常の始まりだった。


それにしても、藍が持ってたこのバック、何処かで見た覚えが…。







次回は12月25日夜8時投稿です!


クリスマスぼっち( ´・ω・` )

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