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82話 超集中治療でございます!

【魔人対融ですか】



 それは、魔物使いが仲魔の能力を最大限まで引き出す技。かなり強力なんだけど、魔物使いのMPと体力の消費が激しい上に、仲魔が受けた痛みを感じちゃう。


 まあでも今の場合、特に危険な状態でもないし、魔人対融しても良いかも。練習ならすでに何回も繰り返ししてるしね。

 ちなみに、それをしている間は、術者は気絶してる事になる。



【わかりました。そうすればこの場に居る女の子達全員を回復することができるでしょうし】

「うんっ!」



 私は自分とロモンちゃんに魔力が上がる補助魔法を最大までかけた。

 そしてロモンちゃんは私にモンアープをかけ、さらに魔人対融をする。

 すごく…力が満ち溢れてくる。



【あ…アイリスちゃん…大丈夫? すごく身体が怠いけど…】



 私の頭の中に直接、ロモンちゃんの声が聞こえた。

 魔物使いは、魔人対融をしている間は、知能関係なしに、仲魔を操れるらしく、また、そうでなくとも簡単にやり取りができるらしい。

 身体が怠いのは、爆発したせいだろう。



【大丈夫です。ロモンちゃんこそ大丈夫ですか?】

【うんっ…! 早く、お姉ちゃん達を助けなきゃだから】

【わかりました】



 多くの人がこちらに注目してる中、私は手をリンネちゃんの頭と腹部あたりに浮かせ、リペアムとスペアラを連発するように命令。

 自分は正座して、魔流波で手を作り出し、精神を統一する。これで良いはず。

 ジエダちゃんを治す時は、魔法を計数百発は撃った。

 だけれど、ロモンちゃんといっしょなら、数十発で済む気がする。



【では…いきますよ!】



 私の宙に浮いた左手は、スペアラを放ち始め、右手はリペアムを放ち始める。

 魔法陣が何度も何度も出ては消え、出ては消えを繰り返す。その様を人々は目を見張ってみているみたい。


 そして3分経った。

 リンネちゃんに渦巻いていた、あの気持ち悪い紋様は見るからに薄くなってきてる。

 コツを掴んだから? それと、あと、ロモンちゃんと一緒だから、ジエダちゃんを治した時とは比べ物にならないくらい早い。


 

【わぁ…! 良くなってってる!】

【はい! ですがまだです、もっとですよ】

【うんっ!】



 そこからさらに12分、リンネちゃんからあの紋様が、視認できる範囲では完全に消えた。

 このまま、さらに2分かけ_________


 

◆◆◆



【全員…終わりました】

【えへへ、やった…うぁ…】



 魔人対融が切れる。

 MPを使い過ぎたのか、私の疲れがまわったのか、気絶から覚めたロモンちゃんがそれからすぐに崩れ倒れそうになったところを、いつの間にか来ていたお父さんが支える。



「よく…がんばったな」



 お父さんはそのままロモンちゃんをお姫様抱っこして持ち上げ、空いてるベットに寝かせた。

 ふふ、ここまで大変な治療は初めてだったし、2日はロクに活動できなくなるとは思うけど、全員治せた。

 はぁ…よかったっ…!!



「おぉ…ぉぉ…」

「全員…治しちまった…」



 そこらから、感嘆の声が聞こえる。

 すでに治療を終えてる娘に泣きながら擦り寄っている人や、何か記録してる人、単純に驚いてる人や、こちらに駆け寄ってくる人、ロモンちゃんに涙を流しながらお礼を言ってる人とかね。


 

「アイリスちゃん、ありがとう」



 お父さんが私のところに来てそう言った。



「本当にありがとう…。礼を言い切れないっ…! しかし、あとは我々に任せて、ゆっくりと休んでくれ。ノアから聞いた事はあるのだが、魔物でもMPと魔力の使い過ぎは身体に毒なのだろう」

【はい……】



 私は、ここに寝そべっているわけにもいかないので、別の場所に移動するためにそこから立ち上がろうとする。

 が、足に力が入らない。

 倒れそうになったけど、お父さんと、1番近くに居た若い騎士団の男の人が支えてくれた。



「おっと、危ない」

【あ、すいません】



 私は思わずそう言ってしまった。

 一部の人以外は、私が流暢に念話できる事、知らないのに。



「えっ!?」



 その若い団員は驚いて私から手を離す。

 身体のバランスが崩れ、また倒れそうになっちゃうけど、慌ててお父さんがより強く支えてくれる。



「おい…。もう少しこの子を丁寧に扱ってくれないか?」

「あっ…すんません」

「おいおい、何やってんだよ」



 それを見ていた複数人の騎士さん達が、私の元に来る。

 


「あ…だって先輩、このゴーレムが今、喋った気がしたんですよ」

「バカ言え、ゴーレムが喋るもんか。ねえ、団長」

「いや、幻聴などではないぞ。この子は話ができる」



 団長であるグライドお父さんがそう言うと、団員の皆さんは互いに顔を見合わせて、団長が今行った事が、自分の幻聴じゃないかを確かめる。

 


「いや、団長…。だって、ゴーレムですよ?」

「なに、この子はタダのゴーレムじゃない。疲れてるところ悪いがアイリスちゃん、彼奴らに一言かけてやれ」

【はい】



 まあ、ここは無難に自己紹介で良いよね。



【私の名前はアイリスと申します。魔物使いロモン様の仲魔をやらせて頂いています。以後、お見知りおきを】



 そう、念話を寝ている少女達を看病してる人以外全員に向けて送った。

 団員の皆さんは、ありえない物を見たかのような目で、こちらを見てくる。何度も私に向けられた目だ。

 これが案外、楽しかったりする。



「ほ…本当に…ゴーレムが…」

「そうかだから団長、先程、ああ、おっしゃったのですか!」

「成る程なー。それにしても人の言葉も理解できるとは…」



 ワイワイガヤガヤと少し騒がしい。

 お父さんもそう感じたのか、団員と村長さんにこう言った。



「一旦、外に出よう。娘達はこの場で輸送車が来るまで安静にしなければならない。アイリスちゃん、娘達はどのくらいで目を覚ます?」

【だいたい、半日から1日くらいですね】

「だそうだ。とりあえず、外に出て連絡やらをしなければならないからな…。村長もついてきてくれ」

「ええ」



 私達は村長の家へと移動した。

 20人以上の団員は見張りと、村人や女の子達の警護のために解散し、数人はそのままお父さんについてきてる。


 ちなみに私は幼体化し、お父さんにおぶわれてたよ。

 今は床に降ろされて、そこで熊の人形みたいに、ちょこんと座ってるけど。



「さて…。私達がすべき事はまずは連絡だ。シュバルツ様などに連絡をしなければならない。そして、その次にアイリスちゃんから話を聞かなければならないが……」

「それは明後日ですね。このゴーレム…もといアイリスちゃん? は、容態がすぐれないと見受けられますので……」



 そんな話が進んでるなか、私は口を挟む。



【いえ…あの…。私、あの魔物から多くの情報を引き出しました…。ただその情報が…】

「その情報が…?」

「その情報がどうしたんだ、アイリスちゃん」

【Sランクの魔物が人里に現れた、程度じゃ済まされない内容だったのです。今すぐにでも、報告しなければ】



 私がそう言ったからか、娘達が回復して一安心できるだろうと考えていたと見える団員達は本気っぽい顔になった。



「アイリスちゃん、それはどういう情報なんだ?」

【………サナトスファビド。彼は160年前に封印された、魔王の幹部のサナトスファビドと同個体のようです】



 そう伝えた。


次の投稿は9/20です

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