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330話 VS.魔王軍でございます!

「ここが魔王軍の拠点がある場所ですか」



 私達は森の中に出てきた。目で確認できる限りでは何か異変があるようには思えない。……目だけならね。この地下で何かが蠢いてるのがありありとわかるわ。覇気というか魔力の流れというか、そういうのが凄まじいくらいに感じとれる。



「どう、ケル。タペペドンってここから出てきたの?」

【間違いないゾ。ここらの景色は見覚えがあるゾ。臭いもひどいし】

「何よりこの威圧感、間違いないね! あの日と一緒だよ」

「そうですね……」



 あの日と一緒の威圧感。それはこの国全体にプレッシャーをかけ影響をもたらしたあの現象のこと。

 この場にいるのは少なくともBランクの冒険者程度の実力を超えている者が大半だけど、平然とした様子でいられているのはSランク相当の人物だけ。困ったことにこの重圧に耐えきれず何人か気絶してしまった人もいるみたい。



「この中でよく単身で仕事をこなしたわね~タイガーアイ。流石よ~」

「……そんなことはない。先週は……こんなに重圧が……かかっていなかった……」

「はっ、つまりは向こうさんもやる気ってことだろうな」

「魔王程の者が残された転移魔法陣に気がつかんわけないしね。さらにこんな大量の団体がやってきたとなれば臨戦態勢もとるだろう」



 そう、私達はすでに気がつかれている。とはいえ一週間程度で復活したばかりの魔王が準備なんてできるはずがないからこうして強気に出ているのだけど。

 一つ懸念すべきなのがオーニキスさんの存在。彼は何十年も城に仕え皆んなを騙してきた。ロモンちゃんやリンネちゃんが生まれるより前から。その点で言えば私たちなんかより遥か先に備えてきたことになる。


 でも、それでも、私達の方が状況的に有利なのは変わらないと踏んでいる。今まで魔王軍幹部と戦ってきた私達だからわかる。幹部同士はコンタクトが全く取れていなかった。

 オーニキスさんにこちら側の情報はかなり抜き取られたと思う。でも、前回の勇者の時より魔王軍幹部レベルの存在が増えているとか、そういった戦力増強はほとんどないと考えられる……と、いうわけ。



「……来る!」

「あちらから?」

「うん。とりあえずAランク以下の魔物の寄せ集めが」

「もうですか」

「地下だけから来ると思わない方がいい。四方八方から出現するぞ」



 ガーベラさんが来ると言ったら来る。今の彼の言葉を受けて、総騎士団長であるおじいさんは全体に気絶した者を下がらせ、気力の残っている者からこの軍の外側にでて臨戦するよう呼び掛けた。

 この軍団……そうね、勇者軍とでもいいましょうか。この軍を指揮するのはおじいさん、勇者であるガーベラさん、騎士団長の肩書をもつお父さんたち五人が任せられている。特別枠として私とケルくんも。特にケルくんは犬の魔物の範疇を超えた期待をされている。



「来たみたい……だな」



 気絶したり容態が悪い人たちを後方へ下がらせ終わった頃、空に多数の魔法陣が展開された。いいえ、空だけじゃない。この勇者軍を取り囲むようほぼ全域に無数の魔法陣が敷かれている様子。どうやら私達は取り囲まれてしまった。



「あら……あの技術はジーゼフ様と私の技術じゃないかしら?」

「そうじゃの。おおかたあのオーニキスめが魔王の魔力を使って年月掛けて盗んだ技術を使ってきているのじゃろう。この数、とてもじゃないがSランクの超越種一匹じゃ賄いきれんからな」



 この大量に展開されてる魔法陣のどこがペリドットさんの技術なのか、どこがおじいさんの技術なのか私でも半分くらいしか見当が付かないけど、おそらくおじいさんの目論見であっているのはわかる。

 

 魔法陣の中から現れたのは魔法ではなく魔物だった。ガーベラさんの予想通り。つまりこの私たちの周りを埋め尽くすほどの魔法陣は全て転移系の魔法陣ということになる。

 しかも厄介なことにどうやらこの周囲だけでなく兵士や冒険者たちの合間合間にも魔法陣と魔物が現れ始めている。



「お、おじいちゃん! 出てきてる魔物、全員目が赤いよ!? それに見たところ一匹残らず超越種なんだけど……」

「ほほぅ、さすがロモン。魔物が出現してすぐ見抜くとはな」

「全て超越種なのは魔王の力ね。目が赤いのはお父さんの?」

「そうじゃ、ワシが昔開発した仮契約の魔法じゃな。一時的に魔物を仲魔にでき、時間が過ぎたら解放するというものじゃよ。仲魔の刻印がない代わりに目が赤くなる」



 おじいさん、そんな魔法まで作ってたんだ。手元に仲魔がいないときに一時的に戦えるようにするためのものかしら。そうなるとたしかに技術が盗まれてるわね。



「くそっ、こいつらつえーぞ!?」

「この魔物ふつうはCランクだろ、何故こんなに響く! 俺はAランクだぞ……!」

「ぐあああ!」



 勇者軍の内側から現れた魔物が兵士達を攻撃し始めた。全個体超越種。超越種は私やケルくんのように何かしら特別な力を持っており、たとえ低ランクでもかなりの強さを持っている場合が多々ある。まさに今、戦いが始まったばかりなのにそれに苦しめられている人がいる。そんな中、何か作戦を思いついたのか、ケルくんが念話を送ってきた。



【みんな聞いて欲しいゾ】

「何か考えついたんじゃな?」

「早いわね~」

【と言っても簡単な話なんだゾ。まずは……】



 ケルくんはリンネちゃん、お父さん、ナイトさんに私たちの軍勢の合間から出現している魔物を一体一体正確に且つ高速で片付けるように指示。そして私達には残りみんなで外側の魔物を魔法で蹴散らすように言った。

 ケルくん曰く、臭いの濃さ的に軍勢の内側から現れてる魔物よりも外側に現れてる魔物の方が何十倍も多い。スピード系の剣士三人で内側は十分な上、味方にも影響が出ない。そして上下左右全てを包囲してきている外側の魔物にはこれだけ人員を割いた方が若干過剰ではあるけど確実らしい。


 また、今内側の魔物を慌てて対処し始めてる兵達には意識を外側の魔物に向けるよう促してほしいとも。これは変に動かれてリンネちゃん達の行動を阻害しないようにするためらしい。


 たしかに少し考えれば出てくる状況への対処法だけど、その発案までのスピードがすごい。嗅覚での状況判断も相まってるのもあるのでしょうけど。正直、ケルくんのことをよく知ってる私でも度肝を抜かされた。



「さすがはケルじゃ! ではそのようにしよう」

「……とにかくぼく達が中の魔物を倒せばいいんだね? わかった、やってくる!」

「正直、その内側の対処も僕達の三人のうち誰か一人で十分だけどね。兵達が戦いやすい状況を一刻も早く整理するために三人で……ってところかな」

【その通りなんだゾ】

「いいね。じゃあ行ってこよう」

「娘に遅れをとるわけにはいかないな。ではケルの作戦通り外側は皆に任せた!」



 剣士三人は私たちの目の前から一瞬で消え去り、そしてそれとほぼ同時に私達より一番近くにいた魔物からどんどんと細切れにされていっている。



「さて、あの三人は一瞬でことを済ませるじゃろう。ワシらも一瞬で終わらせようじゃないか。敵は各地の魔物を一時的に仮契約した上で強化させただけの存在。この騎士団長をはじめとした勇者中心の面子……魔王軍幹部にあやかって勇者軍幹部とでも名付けようかの?  ワシらだったら各個体、一撃で屠ることもできるじゃろう。どれ出てきなさい、クロ」

「そうね、お父さんのいう通り。手塩にかけて育てた仲魔とは遥かに違うわ。たとえ超越種でもね。というわけで出番よベス」

「私たちも頑張ろうね、ケル、アイリスちゃん!」

【ゾ!】



 魔物使い達はそれぞれ魔封書から自分にとっていちばんの仲魔を呼びだした。私もロモンちゃんのモンスアーガの効果を受けるためゴーレムになる。こっちの方が魔法陣もたくさん出せるしね。

 それにしても勇者軍幹部かぁ……なかなかいいかも。



「あら~、魔物使いばっかりにいい格好はさせられないわ~~」

「……活躍……ここでしなければどこでする」

「いやいや、あとで魔王軍幹部との戦いとかあるだろうよ。でも……ま、準備運動にはもってこいだな」



 ランスロットさん、ペリドットさん、タイガーアイさんも対群のための大技を放つ準備を始めた。私の隣にいるガーベラさんも息巻いた様子で槍を手に取る。



「よし、俺も……!」

【これだけのメンバーが奮闘するんだゾ、ガーベラは手の内を極力見せないようにするのが一番。今は引っ込んでるんだゾ】

「そ、その通りだねたしかに。わかった」



 たしかにケルくんのいう通り、いわゆる雑魚の殲滅でガーベラさんの力を見せない方がいいわよね。どこかに偵察用の魔物がいるかもしれないし。

 ……私はロモンちゃんからのモンスアーガを受けた。それから魔法を大量に同時発動できるように態勢を整え、一番にフェルオールを全員にかける。スピード重視だったからさっきはリンネちゃん達にかけそびれたのは残念だったけど流石に仕方ない。


 さて、一網打尽にする準備は整った。私たちの実力……魔王に知らしめてあけないとね!




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申し訳ありません、投稿場所間違えました。

次の投稿は3/23です。

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