273話 アンデットのダンジョンをやりくりでございます!
なんだか食べたい気分だったのでギルドでパフェを食べていたらガーベラさんがやってきた。パッと見で目立った外傷などはない。となるとダンジョン攻略はうまくいっているのかしら。
ガーベラさんは私に気がついて、隣に座ってきた。
「やあ。その様子をみるとダンジョン攻略は順調のようだね」
「ガーベラさんも。目立ったお怪我はないようで」
「おかげさまでね。ゴブリン達が祀ってたダンジョンはどんな感じだった?」
私はガーベラさんにアンデットが大量出現するダンジョンだったと伝えた。採れる素材はなく、匂いも若干きつい、そしてグロくて汚いダンジョンだけど一気に魔物が出てきてくれるおかげで経験値が大量に得られるということと、ロモンちゃんとリンネちゃんは自分の得意分野のみで挑もうと考えていたけれどアンデットに直接触れるのが嫌だから結局みんな魔法に切り替えたということを主に話した。
「あー、じゃあ俺がそっち行けばよかったかもしれないな。みんな綺麗好きだもんね」
「お気になさらず。隠し部屋にてケル君にとって良い物が出て戦力アップになったので帳消しです」
「どんなのが出たの?」
「単純にMPの消費を減らす指輪です、かなり多く発見されてるものですね。ケル君の首輪に括り付けておきました」
「何度も発見されてるタイプのアーティファクトか。俺もダンジョンの隠し部屋からそういうタイプのが出たよ」
今度はガーベラさんの方のダンジョンがどんなものだったかを教えてもらった。ガーベラさんのダンジョンの主な魔物はスケルトンだったらしい。つまりアンデットと同じようなものね。ゾンビも気持ち悪いけど骨だけ動くのも気持ち悪いし、結局そっち行っても私達三人は同じ反応だったと思う。出現頻度も同じだったみたい。
隠し部屋は地下にあって、床の色がほんの少しだけ違う場所を破壊したら出現したらしい。その部屋のボスはガシャンスケルトンっていう腰から上だけで宙に浮いてる5メートルある骨。普通のガシャンスケルトンと違って全体が青紫色らしいのでおそらくそれも亜種や超越種だったのでしょう。ランクはA。
それで出てきたアーティファクトは首飾り。自身の防御力を倍にして装備品の耐久性も上げるというもの。たしかに図鑑に載っているものだった。ただこれでガーベラさんももっと強くなったわけよね。
強くなったってことはプロポーズまでの距離が縮まったってことでしょ? ……なんだか急に体温が高くなってきた気がする。今日はお酒飲んでないのに。
「……どうかしたのアイリス」
「いえ、別に、お気になさらず。しかしどんどん強くなっていきますね」
「もうそろそろ全身アーティファクトだらけになりそうだけどね」
「単純で強いではないですか」
「そうだ、アイリスはなにもアーティファクト身につけてないよね確か」
「ええ、私は基本的なステータスが高いので。人間態でも」
筋肉とかがとてつもなく付いてるというわけでもないのに、私の防御力は人間にしては高い。魔力も攻撃力も鍛錬のおかげで高い。素早さはリンネちゃんの特訓メニューをこなしたから最近かなり高くなった。もちろんゴーレムになった時の方が防御力は何倍が上だけどね。
「今回俺の手に入れたアーティファクト要る? アイリスがゴーレムの姿で身につけたら防御力がとんでもないことになりそうだけど」
「そうですね、Sランクの魔物の攻撃ですら大したダメージを負わなくなるでしょう。しかしガーベラさんから宝石がついた装飾品を貰うならば、貰うべき時のみが良いです」
「それって指輪ってこと……だよね」
しまった、なにを口走ってるんだろう私は。でもその通り、もし宝石類を貰うなら指輪からがいい。しかし今そのことを告白するつもりはなかったんだけど……私ったらまあまあ浮かれてるみたいね。
「い、今のは……忘れてください」
「……胸の内にとどめておくよ」
「おい聞いたか、やっぱりアイリスちゃんも乗り気だぜ」
「ちゃんと関係進んでるんだもんねぇ……」
「二人ともどんどん俺たちから離れていってるみたいで寂しいよぅ」
どうやら聞かれていたみたいで、わざと聞こえるように別席の知り合い達が話し合ってる。恥ずかしいからやめてほしい。確かに前よりは関係は進んでるけど……。
会うたびに思うけれど、そろそろキスとか……した方がいいのかしらね。拒否してたのは私だし、やるとしたら私からがいいよね。
「あー、こほん。とりあえず明日もダンジョンに行くんでしょ? 経験値が美味しいダンジョンならもう数日かけるつもり?」
「そうですね、隠し部屋が出てきたのでもう中盤だとは思いますが勿体無いので私達全員の経験値を稼ごうと思います」
「それがいいよ。特に意味はないけど俺も合わせようかな。クリアしようって決めた日に教えてよ」
「わかりました」
◆◆◆
「これ、なんて言えばいいんだろう、このきもちい感じ……!」
【爽快感かゾ ?】
「そう、それ!!」
ダンジョンにて、昨日決めた順番通りにアンデットの群れを葬っていたところ、ロモンちゃんが光魔法で一掃することに爽快感を覚えてしまった。たしかに楽しいのはわかる。
「へぇ……じゃぼくも次の番、斬撃じゃなくて魔法にしてみようかな」
「どうだろう、そこは別に変わらないと思うけど……あ、次きたよ次!」
「そういえばこれ最奥地まできちゃったらどうするの?」
【後戻りすればまた魔物に合うんじゃないかゾ? 行ったり来たりすればいいゾ。多分そろそろゴールだし】
「だね」
ケル君の言った通り、私達一行はダンジョンの行き止まり手前までロモンちゃんの番に代わってから二十分ほどでたどり着いた。一回の道でちょうどよく四人でローテーションできていたと思う。
【さ、戻るんだゾ。オイラが読んだ本には、後戻りしてもしっかりとダンジョンの魔物は出現するらしいゾ。それを繰り返してSランクの冒険者になった人も何人かいるらしいゾ】
「へぇ……そうなんだ!」
「じゃあやれるところまでやりたいね!」
さっそくBランクのアンデットウォーリア三匹を中心としたBとCランクのアンデットの群れと遭遇した。ケル君の言った通りね。ここからはケル君の番。
【さてさて、暴れるんだゾ! ……そういえば光魔法以外も効くんだよね、アンデット】
「もちろん! 一番弱いのが光魔法ってだけで、種類によるけど基本的にアンデット全般ほかの魔法の耐性は並だよ。あ、炎に少しだけ弱めかな」
【じゃあつぎは雷魔法でやってみるゾ】
それからケル君は自分の番で好き勝手魔法を連発していった。超テキトーに楽しんで撃っている。……と思ったけどよく見たら一匹ずつ丁寧に、同じ箇所に向かってピンポイントで氷解を落として撃ち抜いたりしてるから侮れない。
私の番では普段使わない土魔法や風魔法などの練習をしてみた。進化してからというもの、氷魔法と光魔法しか使ってこなかったからなかなか新鮮だった。魔力が高いおかげで威力も申し分なかったし。
そんな感じで各々練習を兼ねて魔法を撃ちまくったの。気がつけばダンジョンの入り口に立っていたからそこに転移魔法陣を置いてこの日は切り上げた。
そういえばガーベラさん、私達と終わらせる日を合わせるって言ってたけどその間に一人でダンジョンを何回行ったり来たりすることになるのかしら。私達みたいに四分割じゃなくて、独り占めだものね。ほ、本当に結婚まで秒読みかも……プロポーズされたら受けちゃうだろうし。も、もっとしっかり心の準備を固めた方がいいわよね……。
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