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263話 リンネちゃんと特訓でございます! 2

「ぜ……は……」



 汗が、汗が本当にすごい。これはリンネちゃんもお腹を出した服装にするのもわかる。リンネちゃんアンドお父さん方式の特訓方法を繰り返しこなすなら、涼しくてなおかつ動きやすくするために少しでも肌を露出したほうがいい。汗がスコール……そんなの生易しいわ、滝よ、滝。



「あ、アイリスちゃん大丈夫?」

「わかるよ、初めはそうなるよね! ちゃんと水分は取るんだよ?」

「は、はい……」



 私は正直、身体能力と持久力のどっちもに自信はあった。そうじゃなかったら男の人とガチンコ勝負なんてしようとしないし。でもこれは次元が違う。前世のことはあまりよく覚えてないけど、おそらく前世では同じ特訓はまずできなかったと思う。

 身体とステータスの融合で、無理やり双方に負荷をかけているって言うのがベストかしら。たぶん……魔法などの知識は除いて、私がいなくてもリンネちゃんは十分あまり時間をかけずに今の強さになってたでしょうね。

 自分の身体能力をリンネちゃんと同等だなんて過信していたり、汗対策は甘かったけれど年齢を合わせたことは大正解だったと思う。おそらく動きの激しさで18歳ほどの姿だと胸が邪魔になってだでしょうね。

 すでに熟練しつつあるリンネちゃんなら成長して胸が大きくなっても邪魔になったりしないと思うけれど、胸がある程度ある人が初挑戦なんてした日にはもう……ダメね。



「あ……あの……」

「ん?」

「あ、あとでそのリンネちゃんが来てるやつと同じようなの買いに行きたいです」

「そっか、そうしようね!」

「あ、アイリスちゃんが肌を出す選択をするほどなんだね」

「ええ、周囲に異性がいないのならやむを得ません」



 実際ここは穴場で、私たちくらいしか訓練しに来る人はいないから恥ずかしがる必要もない。



「じゃあ今度お揃いの買いに行こうね!」

「えー、じゃあ私も!」

「ロモンもぼく達と同じ訓練するの?」

「ち、違うよ。服装だけ一緒にする」

「そっかー、残念」



 ロモンちゃんは、どうやら本当にリンネちゃんの特訓方法がダメみたいね。双子だけどそれぞれ得手不得手が違うっていうのはいいことだと思うわ。



「今日はもう終わりにする?」

「は、はい、そうします!」

「私も疲れちゃった」

「アイリスちゃんすごく頑張ったね! ロモンもこの調子だときっと自衛するには申し分ないくらい杖術が強くなるよ。二人とも疲れてるし、お買い物は明日にしよう。今日の家事もぼくがあとはやるから二人ともゆっくり休んでね」



 はぁう、なんだかリンネちゃんが頼もしい。元から頼もしいけど、今日は一段と頼もしく思える。これが姉の貫禄ってやつなのかしら。お言葉に甘えて仕舞いましょう。



「よろしくお願いします……」

「ありがとうお姉ちゃん」

「いいんだよ、ぼくはお姉ちゃんだからね!」



 私たちがかなり感謝してるのを察したのか、リンネちゃんは嬉しそうに得意げな顔をした。とってもかわいい。

 そのあと、私たちはすぐに宿へと戻った。部屋の中ではケル君が最近買ったばかりの本を積み上げた横でスヤスヤ眠っている。



「ただいま、ケル」

【ゾ……おかえりなさいなんだゾ。お客さんは誰も来てないゾ】

「そっか、お留守番ありがとう」

【いいんだゾ。ただ、ちょっとお願いが……】

「どうしたのですか?」

【実はここにある本、全部読み終わったんだゾ。明日も特訓するなら新しいのを5冊くらい欲しいんだゾ】



 たしかにケル君はどんなに時間がない時でも最近は1日に1冊は本を読みきるけれど、まさか私たちが訓練していた数時間の間に4日前に買った本の残りを全て読んでしまうとは。相変わらずね、日に日に成長していってるわ。



「わかりました。明日は私の運動用の服を買うつもりでしたし、そのついでに買ってきますよ」

【ありがとなんだゾ】

「じゃあぼく、お風呂入れてご飯作るね」

「ありがとうお姉ちゃん!」

「助かります……」



 私に訓練を教えて、ロモンちゃんの杖術の練習相手になってたのにリンネちゃんは疲れなんて知らないかのように瞬足で物事をこなした。……もしかしてリンネちゃんの特訓をマスターしたら、私も家事を今より早く済ませることができるのかしら?

 すっかりリンネちゃんにほとんどの家事を任せてしまい、久しぶりに楽をした。そして私以外が寝付く頃にはギルドに向かってる時間になっていた。ちょっと筋肉痛がするけれど、私の特別製の回復魔法を唱えたら普通に動けるようになり、そのままいつも通りギルドへ行く。



「お、アイリス」

「ガーベラさん!」



 今日はガーベラさんがすでにいた。そういえばアーティファクトの鎧がどんなものだったか教えてくれるんだっけ。特訓が大変で忘れてたけど、楽しみにしてたんだった。



「来たね。なんだかいつもより少し眠たそうだね」

「今日は少々、鍛錬内容をいつもよりハードにしたものをこなしてたので。そのためだと思います」

「なるほどね。相変わらず好きだよね、強さを求めるの」

「なんとなく楽しいですから」



 たしかに私はガーベラさんの言う通り普通の人より鍛えるのが好きかもしれない。ここのところサボってた傾向があるけれど、今日ので再燃したからまた鍛えるのがマイブームになるかもね。

 そういえばガーベラさんもこれだけ強いのだから、きっといい訓練法をしてるのでしょうね? 鎧の件について聞く前にそれについて尋ねようかしら。



「ガーベラさんもきっといい鍛え方をしてるのではないでしょうか? お強いですし」

「そんなに変わったことはないよ」

「そうなのですか?」

「うん」



 普通の鍛錬で私の格闘技術を打ち破れるようなものでもないと思うんだけどなー。ただ世の中には天才っていうのもいるし、その類だとしたら納得よね。本人が特別なことしていないと言ってるのだったらこれ以上聞いたって仕方ないわよね。



「逆にアイリスがそんなに疲れるって、どんな訓練してたの?」

「えーっとですね……」



 私はリンネちゃんに教えてもらった訓練方法を大まかに話した。ガーベラさんはちょっと驚いたような顔してる。



「それ人間ができるものなの?」

「わ、私はなんとかできましたよ。リンネちゃんは当然のようにこなしてます」

「俺もやってみたいな。時間があるときに詳しく教えてよ」

「はい、いいですよ!」

「……ところで、あのお父さんも同じような訓練を……?」

「そもそも発案者はあの人自身だそうです。リンネちゃん曰く、20歳には今言った訓練方法を思いつき、今日までずっと行い続けてるのだとか……」

「そ、それは強くて当然だね」



 お父さんから少し圧力をかけられているガーベラさんの顔が引きつっている。でもなんやかんやであの人も私とガーベラさんが付き合うのは納得してくれつつあるし、そんな心配そうな顔してくても大丈夫だと思う。私みたいに「私を倒さなければアイリスちゃんはやらん」なんて言わないだろうし、流石に。

 あ、私じゃなくてリンネちゃんがお嫁に行くときは言っちゃうかもしれないな。



「じゃあそろそろ鎧の診断結果でも教えようかな」

「おっ! 是非お願いします! ……とりあえず、アタリだったかハズレだっかかだけでも先に教えてください」

「アタリだよアタリ。他の人にとってはどうだかわからないけどね」

「そうですか……それは楽しみです!」



 ガーベラさんはニコニコしながらメモを開いた。



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