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224話 ギルドで彼氏と会うのでございます!

「お、アイリスちゃんだ!」

「彼氏持ちのアイリスちゃんだ!」

「なんか景気良さそうな顔してるな」

「彼氏ができたからだろ、あー、ガーベラが羨ましい」



 夜。ギルドに入るなり幾人かにそう言われた。景気良さそうな顔をしているのはきっとダンジョンをクリアしたせいだと思う。

 ところで、その私の彼氏はどこにいるのかしら?

 


「あ、アイリスさん! こっちこっち」

「ジエダさん。えーっと、あの……」

「彼氏さんはまだ来てないですよ、ふふふ」

「そ、そうですか」



 ジエダちゃんにまでニヤニヤされる。

 そんなに簡単に見透かされるものなのかな。



「アイリスぅ…ソワソワしてて可愛いねぇ」

「そんなことありませんよ!」

「いやいや、いいんだよぉ、みんなわかってるから。にしてもこんな美少女を待たせるなんて、あいつも罪な男だね」

「べ、別に今日は待ち合わせしてませんから……」



 もし待ち合わせしていたら、このあいだの初デートの時みたいに何十分も前に待ち合わせ場所に着いてるだろう。

 それにしても、私ってそんなにソワソワしてるかな? たしかに今日ギルドに遊びに来たのはガーベラさんに会う目的が大きいんだけど。

 近況報告とか色々したかったから。



「お、彼氏が来たよ!」

「ほんとですか!」

「ほら、見てみ」



 私の隣に座った友人の女冒険者さんに、後ろを振り返るように促された。そしたらちょうどガーベラさんがこのギルドの扉を開いてなかに入ってくる。

 ニヤニヤしながら女冒険者さんは、私との間に男の人一人分くらい席を空けた。



「やーやー、アイリスちゃんずっと待ってたんだよぉ」

「そうだよ、ガーベラさん! アイリスさん、会いたがってたんだから!」

「そ、そうか。えーっと、アイリス。待たせてごめん」



 ガーベラさんは私に向かって軽く謝った。

 カッコいい……かもしれない。なんだかちょっとドキドキする。意識してるからかな。



「べ、別にそんな……いえ、会いたくはありましたけども……」

「ひゅーひゅー!」

「羨ましいぞ、この色男!」

「そのままアイリスちゃんの隣に、すわってゆくぅぅぅ」



 周りからの冷やかしに苦笑いしながら、ガーベラさんは私の真隣に座った。ち……ちかい。

 デート以来のこの距離感。いや、デートしてから会うのはこれで最初なんだけど。



「ごきげんはいかかですか、ガーベラさん」

「俺は元気だよ、アイリスは?」

「私自身にはと、特に何も変わったことはありません」



 なんとも言えないぎこちない会話をしてしまう。毎回会うたびに、その時慣れるまでこんなカクカクしたような挨拶をし続けるのかしら。

 それじゃあ行けない。

 ガーベラさんの彼女としての自覚をもっと持たなければ。勇気、そう、勇気を出そう。



「あ、アイリス……」

「おおおおお、お邪魔ですか? ダメですか?」

「そ、そんなことない…よ」



 ガーベラさんの肩の上に勇気を出してもたれかかってみた。周りから見れば私が彼の肩に頭を載せているように見えるはず。まって、流石に段階を飛躍しすぎたかもしれない。

 やったはいいけどだんだんと恥ずかしくなってきた。



「相変わらず羨ましいことされてやがる……」

「どっちかっていうと、アイリスの方がべったりだよな」

「だよなだよな。ガーベラから告ったくせに」

「もしかしてガーベラ、根性なしなんじゃないか?」



 そんなことはないはずです! 私からくっついてるだけ。くっつかなきゃいけないような気がしたから、くっついてるだけ。

 だからこうして、ガーベラさんの肩の上に頭を乗せているのも、くっつかなきゃって思ったから……なのかしら。

 あれ、でも本当にこれは私の願望じゃないって言えるのかな。なんかだんだんわかんなくなってきた。



「ガーベラ、あんた、アイリスちゃんが甘えてるんだから答えてやるべきじゃないの?」

「そうだよ、アイリスさんが……ふふ、顔を真っ赤にして真顔で寄り添ってるんだから!」



 あああ、ジエダちゃん笑わないで! っていうか、その言い方から推測するに、ジエダちゃんは私が少し空回りしてることに気がついているのね。

 なんならそうだとはっきり言ってくれた方が私の気が楽なのに。

 


「そ、そうだ、みんなの言う通り……だね」

「ガーベラさん……あの、む、無理に私の行為に付き合わなくてもいいですよ?」

「いや、これは……アイリスに付き合う訳ではなく、周りに囃し立てられたからでもなく……俺がやりたいからやるんだ、うん、そうだ」



 ガーベラさんはそう言うと、私の腰に片方の手を回してきた。そしてもう片方で……なんと、私の頭を撫で始めたではないか。

 私の頭を、撫で始めたではないか!!



「あぅぅぅぅ……」

「そ、そのなんかごめん……」

「うぉぉぉぉ俺もアイリスちゃんの頭撫でたい! 髪の毛サラサラそう!」

「欲望を叫ぶんじゃねぇっ……残念だがな、あれを見たらもう認めるしかねぇんだよ、アイリスちゃんはガーベラのもんだってっ……!」

「女は好きな相手に髪を撫でられると喜ぶのサ。そうでもない男からだと嫌悪するけどね、あの二人、お互い真顔だけどラブラブだよ……!」



 が、外野がうるさい! 

 まだラブラブってほどでもないはず! ああ、でもなんだろう。ロモンちゃんやリンネちゃん、お父さんやお母さんに頭を撫でられるのとはまた全然違うこの感覚は。

 

 私の突発的な行動でこんなことになったわけだけど、腰から抱き寄せれても、髪の毛をいじられても全く嫌な感じがしない。むしろもっとされていたいような……そんな感覚。



「えっと、頭撫でても大丈夫だったかな?」

「もっと……」

「えっ!?」

「えっ……あ、その……だ、大丈夫です」



 小声で囁いてきたガーベラさんに、今私はなんと言った? 忘れてしまうことにしよう。きっとリラックスしきってしまっていたに違いない。

 話題を早く逸らさなきゃ……いやそもそも本題に入らないと。私はガーベラさんから少し離れ、頭を生やしてから話題を変えた。



「あ、あの!」

「あっ……。 どうしたの?」

「ここ最近であったことをお話ししたいのと、つ、次のデートを決めたいので……あの、二人だけでお話を……」

「わかった」



 私とガーベラさんは立ち上がった。周りから見たら私が甘えるのをやめ、急に二人で立ち上がったように見えたのかもしれない。みんながこちらを注目している。

 なんだかとっても恥ずかしい。



「は、はやく行きましょう」

「そうだね」



 まだちょっと頬に彼の温もりが残っている。

 私とガーベラさんは物陰で今後の打ち合わせをした。デートが終わってからの状況を全て話し、これから次の満月までの間にデートできる日程を教える。



「なるほどね。わかった、全然そっちを優先してもいいよ」

「すいません。でも、デートはしっかりしますので」

「別に強制するものじゃないんだ。いつでも好きな時でいい。ほら、今俺はアイリスと違って普段は独り身だからさ、都合なんて好きなように合わせられる」

「ありがとうございますっ……!」



 ガーベラさんはとっても優しい。本当に優しい。

 優しいから、私も好きになったんだと思う。

 とりあえず話し合いの末、明日はデートすることになった。またとびっきりのお洒落をしていかなければ。

 素敵なガーベラさんの隣を歩いていても、恥ずかしくないように。




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