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160話 蟹戦後日でございます! 2

「要件は済んだ。私はこれで帰るとしよう」



 オーニキスさんは立ち上がるとそう言ったの。



「今言った話、頼んだぞ。なんなら優先的にダンジョンの話を流してやったりしてもいい。こうなったら3人にはもっと強くなってもらわねばな」

「「任せてください!」」



 双子は張り切ってる様子だ。私としてもダンジョンの話を横流しして貰えるのは嬉しい。案外、ダンジョン攻略楽しかったからね。私の小遣い源でもあるし。



「じゃあ、私も城に戻るから……」

「あ、ノア団長はこのまま午後まで娘たちと居てやりなさい。色々話があるだろう、私から話はつけておく」

「良いのですか? ……ありがとございます」

「では、お邪魔したよ」



 オーニキスさんはお母さんを置いてお城へと戻って行った。この国の政治家全員があんな良い人だといいのに。

 なんてね。



「ふう、じゃああの人から許しをもらったし、お昼までここに居ようかしらね」

「「わーい!」」



 お母さんは近くの椅子に座る。

 


「それにしても、また3人とも魔王の幹部に巻き込まれるなんてね」

「ね、すごいよね!」

「でもどっちもアイリスちゃんが居ないと討伐できてなかったと思うよ!」

「うんうん!」

「そうね」



 て、てれますなぁ。

 3人とも私のことそんなに褒めたって、なんも出てこないってば。



「みんなほんとに強くなったわね」

「「えっへん!」」

「今までに色々辛いこともあったでしょうけれど。特に今回はアイリスちゃん、大丈夫?」

「ええ、まあ、ぼちぼち」



 今はもう全然元気だ。男の人に対する態度を変えようと決めてる以外はいつもの私となんら変わらない。

 


「でもよく頑張ってくれたわ! 死傷者が誰も居ないのは全部アイリスちゃんのおかげだから」



 そう言うとお母さんは私の頭をゆっくりと優しく撫でてくれる。ものすごい安心感と抱擁感。

 思わずこのまま喉を鳴らして甘えちゃいそう。



「ところでアイリスちゃん」

「んにゃぁ…ふぁい?」

「あのガーベラって青年はアイリスちゃんのこれ?」



 お母さん、小指を立ててる。

 このお母さんの行動を見て、双子はなぜか嬉しそうに微笑んだ。



「「うん、そうだよ!」」

「ち、が、い、ま、す」



 あんな将来性があって、かっこよくて、性格も良い男の人なんて、私には釣り合わないわ。



「そう。残念」

「ふん、彼はただの友人です。勘違いしないでくださいね」



 なんとかして早く話題を変えなければ。 

 そう、そうよ、お母さん、十重魔法陣だなんて規格外なものつかってたじゃん。

 このことに話題をすり替えてしまおう、



「と、ところでお母さん。あの十重魔法陣ってどうやったんですか?」

「とっても練習したのよ!」

「あ、おかあさん、それわたしも聞きたい! あんなすごいの、どうやったの?」



 私が作り出した話題にロモンちゃんまで付いてくる。よし、話題すり替えは完了した。



「アイリスちゃんが教えてくれた魔流の気……あれね、だいぶ魔法の核心をつくものよね。ただなんとなく覚えて、その覚えたやつを唱えていた昔とは違って、魔法がどう言う風に成り立ってるかわかるの。それがわかれば応用も簡単だった。アイリスちゃんがなんでそんなにたくさん魔法を習得できてるかも納得がいったわ」

「つまり、魔流の気のおかげで今まで限界だったことが仕組みを理解したからやれるようになったってこと?」

「早く言っちゃえばそうね」



 そうか、そうだったんだ。いや、お役に立てたようで何よりよ。魔法なんてない世界から来たらしい私が氷魔法を習得すると同時に魔法の仕組みを考えて編み出したこの魔流の気…やっぱりすごいわね。



「じゃあベスも新しい魔法覚えたりしたの?」

「今は回復魔法覚えようとしてるわ。三重魔法陣の回復魔法、効き目が凄そうだって」

「へえ!」



 となるとベスさんも簡単に欠損部位くらいは生やせるぐらいにはなるのかもしれない。そうしたら、もしかしたらそのうち、SSランクの魔物へと進化したりして。

 ありえる、ありえる。



「ところでそろそろ二人にケルを渡す時期になったわね」



 思い出したようにお母さんはそう言った。昨日の一件以来、ケル君は一回、お母さん達の家に魔封書の中に入れられて連れてかれたの。まだ規定の時間は経ってないけれど、ま、十分でしょうということで。



「ケルを渡すのには何も問題ないわ。ケルにも問題はなかったでしょ?」

「うん、だいじょーぶ!」

「ロモンはしっかりやってたよ」



 2人がそう言うとお母さんは満足そうにウンウンと頷いたの。そしてスペーカウの袋からケル君の魔封書を取り出すと、ロモンちゃんに差し出した。



「じゃあ、これからあなたがケルの主人よ。大切にしてやってね」

「……うんっ!」



 ロモンちゃんはお母さんから魔封書を受け取ると、とても嬉しそうに微笑み、それを抱きかかえた。

 これから私たちのパーティに本格的にケル君が加わるのね。たくさん可愛がってあげよう…もちろん、犬的な意味で。



「ほら、受け渡しの儀式するからケルを出してあげて」

「うん、出て来て、ケル!」



 ロモンちゃんが本を開くと、そこから淡い光が溢れ、中から身体をぺたりと地面につけて眠っているケル君が出て来た。眠っている仔犬そのもので、とっても可愛い。

 数秒して、目をパチリと開ける。



【ゾ? モウ オキル ジカンナノカゾ? ファア…ゾ】



 大きなあくびを一つすると、辺りを探るように首を振り始めた。私たちの顔を一人ずつ見渡す。



【ココハ リンネ ト ロモン ノ オヘヤ ナンダゾ!】

【そうよ、ケル】

【ゾ! ゾー!】



 お母さんはケル君を優しく抱きかかえると、小さい頭を慣れた手つきでなでなでし始めた。 

 ケル君は本当に気持ちよさそうに目を細めてナデナデを受け入れている。



【ファァ…。 キモチイインダゾ! トコロデ、ナンデ ミンナ アツマッテ イルンダゾ?】

【ケルをどうするかについての話をしていたの】

【ゾー? オイラヲドウスルカ?】

【そうそう、ケルをロモン達に渡すかどうかの話】



 お母さんがそう言うとケル君は抱きかかえられたまま尻尾をせわしなく動かし始めた。



【ソレデ、ドウイウ ケッカ二?】

【ふふ、これからケルをロモンに受けわたす儀式をするわ】

【ゾー!】



 お母さんはケル君を地面に下ろした。

 おまけに頭を人撫でしてから、お母さんはケル君に横腹を見せるように言う。

 ケル君はそれに従って、ゴロンと横になった。

 おそらく、お母さんの魔物契約マークであろうものが見えた。



「これに上書きすればいいだけなのは、ロモンも知ってるわね」

「うん! だいじょーぶ!」

【ゾ、ゾ、ゾ!】



 ケル君はそんなに嬉しいのか尻尾をパタパタさせながらチラチラと二人の方を見ている。

 ちなみに上書きだけすれば大丈夫なのは、ロモンちゃんとお母さんが血の繋がってる家族だからで、本来だったらもう少し手順は複雑よ。

 ……ロモンちゃんの準備ができたみたい。



「じゃあ、いくよ! 『我、汝と契約す、ここにその証明の誓いをかわそう』」



 私の時と同じように、淡い光がケル君の横腹から現れる。そしてお母さんのマークを上書きして書き消すように、私の肩にあるマークと全く同じものが浮き出て来たの。



「終わった……!」

【ゾ? オワリ? オイラハ ロモンノ ナカマ二 ナッタノカゾ?】

【うん、なれたよ! ……はい鏡】



 ケル君は鏡を横腹を見せながら覗き込んだ。



【アルゾ! ロモンノ マーク!】

【ケル、これからよろしくね!】

【ゾ、ヨロシクナンダゾ、ロモン! アト、イママデ アリガトウ ナンダゾ、ノア】



 ケル君は横腹を見せるのをやめ、お母さんにぺこりと頭を垂れると、ロモンちゃんに向かって飛びつき、その顔を舐めたの。







#####

くぅ~! これにて第3部、終了です!

ちょっと戦闘シーンが長すぎたかもしれません。

次回から新章です、どうぞお楽しみに!


 ……しかし、一つが連絡が。

 申し訳ありません、諸事情により投稿を1回分休載させて頂きます。

 次の投稿は【7/31】となりますm(_ _)m

 本当に申し訳ないです。



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