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145話 助けられるのでございますか!?

「……は? なんだよお前」



 グラブアは手を止めて、声をした方を見る。

 この声は確実にガーベラさんだ。

 私の恐怖に染まりきった心が、少しだけ氷のように溶けていくのがわかる。


 ……いや、違うわね。

 よく考えたら状況は悪化したのかもしれない。

 だって…この人間の姿でもゴーレムの時のステータスと防御や素早さ以外がほとんど変わらない私が赤子扱いだもの。

 いくらAランクくらいの実力があったとしても、グラブアと戦って勝てる見込みは低いわ。

 これほどの実力差を感じたのは、初めてグライドさん達と手合わせしてもらった時と、サナトスファビドとタイマンした時しかない。

 やっぱり彼はSランク級の強さを持っている…。



「何をしてるのだと訊いているんだ。俺はその子の知り合いだ」

「……へぇ、知り合いね」



 グラブアはニヤニヤと余裕を含めて笑いながら、向こうに意識を割かれている。

 痛みは……誰かが来てくれたっていう安堵で今は少しましになってるわね。アドレナリンってやつかしら。

 なら…今がチャンスのはず…。



「どうやってこの場所に来たんだい?」

「質問に質問を重ねるな…俺が先に質問しただろう、それに答えろ」

「ああ、アイリスちゃんに何をしてるか…だったね」



 グラブアは唐突に私の首をつかんで持ち上げた。

 窒息しない程度で掴まれてるのはわかってるけど、とても苦しい。

 そして私の半裸をガーベラさんに見せつけるように前に突き出した。

 ガーベラさんは目をそらし、私はなんとか動く腕とその関節を駆使して少しでも見せないようにするの。



「見たらわかるだろ? 嬲ってるんだよ」



 グラブアは私の頬を舐めた。

 気持ち悪い。やだ……。



「……オマエッ…!」



 ガーベラさんはこちらに突撃しようとしてきてくれる。

 でも、それは叶わなかった。なにか…薄い膜、泡のようなものに弾かれたの。

 グラブアが作った泡の壁に。



「ああ、これはね、探知を訊かなくして任意で防音してくれて、さらにかなりの強度を持った泡の壁だよ」



 そんなのを少し唱えただけで出せるなんて…。

 やっぱり実力を見誤っていたみたい。



「探知ねぇ…訊かないはずなんだけど、よくここがわかったね?」

「…………勘だ」



 本当にここまで勘できたのかしら。

 ロモンちゃんもそうだけど、普通、勘ってこんなにいいものなのかしらね…。



「…本当に勘らしいね。幸運かな? いや不運だ。結局君はこの子を助けられない。まずその壁を破らないとね。……助けを呼びに行くかい? 呼びに行ったらその間にこの子は美味しくいただくよ」



 ガーベラさんは悔しそうに眉間にシワを寄せた。

 助けを呼びに行かれたらその間に本当に私は犯されるのかな? 言葉が本当だとしか思えないような真実味を含んでる。



「おっ、単独で破るつもり? 頑張ってね」



 ガーベラさんもそれを察したのか、槍を装備した。前に見た時とはまた違う槍。  

 グラブアが嘘をついてるようにら見えない、この人にこの泡の壁は破れるの…?



「……ああ」



 槍を構え、それを泡に向かって刺す。



「無駄だよ」



 槍は弾かれ__________



「はっ!?」



 ずに、泡の壁に穴を開けた。

 プチンという音を立てて壁全体が消えてゆく。

 すごい…! 本当に壊しちゃった。



「今助けるぞ、アイリス…!」

「はぁ…やるね! その槍が業物なのかな? いや、たしかに物は良いようだけど…1番の理由はそれか、籠手がアーティファクトなんだね」



 アーティファクト! ガーベラさんも手に入れていたのね。でも一体どうやって…。ううん、それはわからないけれどとにかく状況は良い方に転がりつつある…!

 このままガーベラさんが時間稼ぎしてくれれば、私は自分を治して反撃することができる!



「相当な実力者と見た。これは警戒しないとね。アイリスちゃんはどいてて」



 グラブアはそういうと、私を壁に押し付けて腰の周りを闇氷魔法で凍らせた。……お腹丸出しだからすっごく冷たい。

 冷たいけれど、痛い部分にちょうどよく当たって痛みが緩和されてる……ような気がする。



「うん、アーティファクトを持ってるなら俺もアーティファクトを出して良いよね」



 グラブアはスベーカウの袋から、例の蟹みたいな盾剣を取り出した。……念話、そう、念話で警戒するようにガーベラさんに伝えないと!

 今なら回復することもできる。

 だいぶ、緩和…そして麻痺してきてるからね。



【リスペアラム】



 念話を使って魔法を唱えられるのは本当にありがたい。

 とりあえずは私の折れた骨も、腫れ始めていた頬も、潰されかけていた傷ついた内臓も、そもそもステータス上のダメージもすっかり回復した。



【ガーベラさん、気をつけてください! その盾剣は…効果はわかりませんが、単純に斬った対象を粉々にするほどの破壊力を持ってます!】



 驚いたような表情に加えて安堵したような目で私を見ると、ガーベラさんは頷いた。



「よっと!」



 グラブアは慣れた手つきで紅い盾剣を振るった。

 それをグラブアさんは回避するも、うまいコンビネーションで第2撃が飛んでくる。

 それはかわすことができなかったようで、仕方なくガーベラさんは持っていた盾で弾こうとした。

 盾剣の刀身が盾に触れた瞬間、盾は粉々に弾け飛ぶ。

 


「っ!?」



 その破壊力も凄まじいみたいで、ガーベラさんは盾を持っていた方の手を思わず引っ込め、顔をしかめたの。

 前と違ってなかなか良い盾を購入したみたいだけど、それもいともたやすく壊す上に防ぎきれない、

 やはりこれがアーティファクトの威力…!



「ふふははっ」



 第三撃が飛んできた。

 ガーベラさんは斜め後ろに回避するも、素早い動きで盾剣をひるがえされ、第四撃。

 しかしガーベラさんもそれをしゃがんでかわす。

 そこから起き上がりつつ、槍を首に狙って突いたの。



「な……っ!?」



 そう、タイミングは完璧だった。

 完璧だったんだけれど、それは首に届かないでいた。

 グラブアが手で槍を握ったのね。でも、その手がおかしい。まるでカニのハサミのような、いや、そのものというか。

 すぐに人の手のように戻ったようだから、ちゃんとは見えなかったけれど……。


 ハサミ状の武器を隠し持っていたのかしら? それも一瞬で出し入れできる?

 それとも彼は……何かの半魔半人…?

 とにかく人の手に戻っているグラブアは、そのままガーベラさんの槍をつかんでいる。

 


「やっぱり不運だったよ。壁を壊せるから実力はあるんだろうけれど、俺の方が強かったみたいだ」



 盾剣を一気に振り下ろそうとした。

 念話で魔法を唱えて、刀身を逸らさなきゃ__________



【ゴロゴ!】



 なんだか聞き覚えのある念話の声と、初級の雷魔法がグラブアにめがけて飛んでくる。

 グラブアは初級それに過剰に反応し、大きく横にステップしてかわした。



「グルルルルルルル」



 私はその初級魔法が飛んで来た方を見た。

 …そこには……ケル君!?




「…ここに何か…?」

「はぁ…はぁ……ケル、なんで今魔法を…! あっ!?」



 来てくれた……なんでだろう、どうやってだろう。

 でも来てくれた。

 ロモンちゃんとリンネちゃんが、私のところにっ!

 


 

######


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