122話 ダンジョンクリアでございます!
【む……!】
思ったより高い威力_____
私はそのまま勢いよく壁に激突した。
激しい衝突音がこの部屋の中に鳴り響く。
「アイリスちゃん!?」
ロモンちゃんのそう叫ぶ声が聞こえる。
【大丈夫、無事ですよ】
私はそう告げた。
実際、全然…とはいかないものの、サナトスファビドの一撃をまともに食らった程度でしかないから大丈夫よ。
あと10回くらい喰らわなきゃ致命傷にすらならない。
とは言ったものの…私の視界の真ん前にはでっかいてんとう虫の顔があるわけで。
ちょっと気持ち悪い。
さて…ここからどうしようかな。
思ったよりダメージ受けてるし、こいつ私に抱擁をかましたままどいてくれないし…回復しようかな?
なんかこの至近距離からずっと炎やら雷やら撃ってくるしね。
でも逆に言えば私も高火力の技をお見舞いする大チャンスよね! 例えば…自爆とか。
いやでも自爆したら折角の綺麗な素材がダメになっちゃいそう。
なら何がいいか。
正直、この至近距離から殴ったりすることはできない。
…….ま、普通に魔法よね。
【スシャイラ!】
光の上級範囲魔法。
この壁に穴が空いてできた密接空間では、単発魔法より効果があるはず。
私の、てんとう虫しか見えなかった視界が、真っ白に輝く。
「光ってる!」
「スシャイラだね」
そう、ロモンちゃんとリンネちゃんの声が聞こえた。
「ギィチィィイィィィ!?」
そんな叫びを発しながら、プロミネンスレディバは私から離れた。というより私の魔法で吹っ飛んだ。
やっと私の現状が把握できるわね。
……どうやら壁にこのゴーレムの形でめりこんでいるみたい。お腹はちょっと凹んでる。
まずまずの威力だったのね、やっぱり。
ロモンちゃんが食らってたらやばかったかも。
【終わらせますか】
誰にいうでもなく、私はそう呟いてみる。
壁から無理くり腕を剥がして、その腕をいまだに空中で悶絶しているプロミネンスレディバに合わせて________
【リシャイム!】
発射した。
その発射された光球は素早くプロミネンスレディバの元まで飛んで行き、被弾。
「やった!?」
「どうだろ?」
ロモンちゃんとリンネちゃんが下でそんなこと呟いてるけど…どうやら…倒してしまったみたいね。
大探知にプロミネンスレディバの生命反応がない。
もう終わったんだ。
【どうやら終わったみたいですね】
【あ、アイリスちゃん! あんなの耐えるなんてさすがー】
【ふふふ、まあ余裕ですよ。今からそっちに降りますね】
ロモンちゃんにそう告げてから、私は体を小さくする。
これでスキマができてこの壁の食い込みから逃れられ、そのまま落下するんだ。
そして地面と衝突する瞬間に、気でガード!
「だ、ダイナミックだね」
「ね」
きちんと降りられた私に、ロモンちゃんとリンネちゃんが寄ってくる。二人には目立った傷がない。
念のために私はそのまま回復魔法を全員に掛けてから人間の姿に戻った。
「案外楽勝でしたね」
「うんうん!」
「アイリスちゃんが強くて良かったよー!」
なんて、もうなにも襲ってくるものなんかなくなった私達は平和に笑い合うの。
もう魔物は襲ってこないし、宝物を入手してここを出ればダンジョンは消滅。
ダンジョンクリアって言ってもいいよね。
「それじゃあ……あのアーティファクト入手と行きましょうか!」
「わーい!」
「お宝お宝っ!」
歳相応の子どもらしく、二人ははしゃぎにはしゃいでいる。……ふ、ふふふ、かくいう私もこの現状に興奮しているの!
ダンジョンをクリアしてお宝を手に入れる、とてもワクワクする!
もう目にアーティファクトというすごいお宝が見えてるぶんだけよっぽど!
「アイリスちゃん! ゲットしたよ!」
「はや……やりましたねっ!」
私がものに思いふけっていたうちにどうやらあの二人がアーティストファクトを祭壇から取ってしまったらしい。
罠があるかも~なんて思ってたんだけど、無かったみたいね。
私も急いで二人の元に駆けつける。
「どうです?」
「やっぱりアーティファクトってなんか凄いよ! 力が溢れるっていうか…。まあぼくは使わないし、アイリスちゃんも元々防御が高いからね、ロモンが使いなよ」
「それがいいと思いますよ」
「う…うん!」
リンネちゃんからロモンちゃんにテントウムシデザインの片手盾が渡された。
ロモンちゃんは丁寧に丁寧にそれを受け取り、まじまじとそれを眺める。
大きさだけならこじんまりとした盾なので、ロモンちゃんでも問題なく扱えるでしょう。
「……ところでこれの効果ってなんだろ?」
盾を握ってみてから、ロモンちゃんは首を傾げながらそうつぶやいた。
「誰も鑑定できないのでわかりませんからね、街に帰ったらみてもらいましょう」
「うん、そうだねっ!」
私のそんな普通の提案にロモンちゃんはにっこりと笑うと、自分のスペーカウの袋の中にその、テントウムシの盾をしまい込んだ。
「それよりも今はお宝だよ! どこかに宝箱が……」
普通じゃないテンションでお宝を探すロモンちゃんがキョロキョロと辺りを見回すの。
「あっ…え、なにあれ!」
リンネちゃんはプロミネンスレディバがある方向をみてから興奮気味にそう叫んだ。
私とロモンちゃんもそっちを見る。
……部屋の真ん中にいつの間にか水色の発光している何かが浮いていて、その何かの前に宝箱が置いてあった。
「……あれって確か、外に出るためのゲートだよね?」
「ってことは本格的にクリアかー」
へぇ、あれがゲートか。
本ではロモンちゃんやリンネちゃんと一緒に読んだけれど、実物ははじめてみた。
あれに飛び込んだらこのダンジョンの外に出られるんだっけ。
ちなみに外に出たら、クリアして直接ゲートに飛び込んだ人以外は一瞬だけ気絶させられ外に放出される。さらに転移魔法陣とかは効果がオシャカになっちゃうんだ。
「その前にお宝あけようよ!」
「うん!」
「ええ!」
私とロモンちゃんとリンネちゃんは同時に且つ颯爽と宝箱の前へ。
「なにかなぁ…」
「ワクワクするね、お姉ちゃん!」
「そ、それじゃあ開けましょうか」
私達3人でその宝箱に手をかけ、同時に開けた。
パカリと軽快な音を立ててその宝箱は簡単に開き、その中身が現れることとなる。
私達はその中身を額を寄せ合って覗き込んだ。
「わ…わぁ…綺麗…!」
「大きな宝石がこんなに…!」
すごい。
ロモンちゃんくらいの女の子の握り拳くらいに等しい大きさの宝石がゴロゴロと入ってる。30個以上かな。
この世界では宝石は…前世にいた世界より高くない。
でも高い換金アイテムであることにはやはり変わらないの。
「これ一つでどれくらいご飯たべれるかな?」
リンネちゃんが一つを手に取った。
「私の勘だったら今日の昼食みたいなのを3日間それぞれ3食はできるんじゃないかな?」
「ロモンちゃんが言うならならそうなのでしょう」
ロモンちゃんの言うことはよく当たる。
私達はそれを、私のスペーカウの袋に宝箱ごと放り込む。ついでにプロミネンスレディバの亡骸も回収。
「それじゃあ外に出ましょうか。忘れ物はないですよね?」
「「うん!」」
私達は3人手を取り合う。
どうせだから一緒に一気に飛び込んじゃおうってことで。その相談通りに私達は水色の発光した輪の中に、3人で仲良く飛び込んだ!
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