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100話 冒険生活へ戻るのです!

「もう行くのね…寂しくなるわ」

「うん。また近いうちに来るからね」



 残念そうな表情をしてロモンちゃんの頭を撫でてるお母さんに、ロモンちゃんはそう言った。

 お父さんが帰って来てから2日。

 私達は屋敷を離れて宿に戻ることにしたんだ。



「無理は、無理だけはするんじゃないぞ」

「うん! お父さん」



 お父さんはリンネちゃんの頭を名残惜しそうに撫でる。

 そんなリンネちゃんは嬉しそうに眼を細めてニコニコしているの。



「アイリスちゃんもね」

『ヒビ、ショウジンスルンダヨ!」

「はい! お母様、お父様、ベスさん」



 ベスさんは私の顔をひと舐めすると、リビングへと戻っていった。



「じゃあ、元気でね…!」

「ちゃんとご飯は食べるんだぞ!」

「「うん!」」

「はい!」



 私達は歩きながら手を振り続ける。

 今、宿泊している宿から1時間もかからないのに、ちょっと大袈裟かもしれないけれど、この家族はこれでいいのです。



◆◆◆



「戻って来たね」

「うん」


 

 私達は今、泊まっていたあの宿の前に居る。

 そういえば、あの時、仕事に行ってから一度も帰って来てなかったんだよね。

 


「入ろっか」

「うん」



 リンネちゃんが宿の取手に手をかけて、開いた。

 初めてこの宿屋『花の香』に入った時は確か、娘さんが猛毒に犯されていたけれど…。



「いらっしゃいませ! あ、リンネさんとロモンさん!」



 普通に奥さんが接客をしていた。

 またなんかあったら…と思ったけれど、大丈夫だったみたい。



「ごめんなさい、ながく空けてて。ちょっと色々、トラブルに巻き込まれちゃって」



 リンネちゃんが軽く説明をする。



「そうだったんですか。いえ、大丈夫ですよ。おかえりなさい」

「…はい!」



 うんうん、やっぱりいい宿だと私は思うんだ。

 なにしろ、アットホームで暖かい感じがするのよね。



「……あ、おかえりなさい!」



 受付の奥から、主人が出て来た。

 一緒に娘ちゃんも居る。もちろん、元気そうだ。



「話は聞かせてもらいました。トラブルに巻き込るなんて、大変でしたね」

「あはは…ええ、かなり」

「……ところで、そちらの娘は? それにアイリスさんの姿が見当たらないようですが」



 宿屋の主人は、玄関の方も見てそう言った。

 ロモンちゃんがそれに答える。



「居ますよ、ここに」

「…まさか、その娘がアイリスさん…とか?」

「ええ、その通りなんです!」



 ニッコリと、なおかつ、ちょっと自慢気な顔をしてロモンちゃんはそう言った。

 宿屋の家族3人は、目を見張って私を見る。



「はは~…たしかに、いつ人になってもおかしくなかったですものねぇ…」

「おとうさん、魔物って人になるの?」

「うん、なれる魔物もたまーに居るんだよ。アイリスさんみたいに」

「へえ、すごいね!」



 そう言ってこの宿の娘のネリアンちゃんは、さらに私のことをまじまじと見てくる。

 『どうやって魔物が人になったの?』と、ロモンちゃんにその娘が訊いたから、その相手をロモンちゃんとリンネちゃんはしだした。

 一方、宿屋の主人は私に近づくとこう、耳打ちをしてくる。



「(どうです? やっぱり、ベットは3つ、必要でしたでしょう?)」

「…はい、その通りです」


 

 そうだ、たしかにこれからは私もベットでちゃんと寝るんだ。もう立って寝たりなんかしないんだね。



「じゃあね、お姉ちゃん達!」

「うん、またね」



 向こうは話が一段落済んだのか、3人は手を振りあって居た。



「アイリスちゃん、お部屋戻ろ!」

「はい!」



 言われるがままに、宿屋の人達と別れ、二人の後ろをついてゆく。

 リンネちゃんが部屋の戸を開けた。



「ふぅー! たっだいまー」

「帰ってきたねぇ…」

「なんだか、私にとっては新鮮に思えてきました」



 部屋。

 あのクエストを受けに言ってから何一つ変わってない。

 


「とりあえずは、魔法で浄化して綺麗にしますね」

「うん。掃除はしてくれてたと思うけど、一応ね」



 私は部屋自体にリスペアラムを唱えた。

 空気が浄化されたような気がする。



「……で、これからどうする?」

「一応、ギルドの方に顔を出そうか! それからお仕事はもう、2、3日休んで、アイリスちゃんの身支度をしていこう!」

「はい、ありがとうございます!」

「いいんだよー」

「ねー」



 ロモンちゃんとリンネちゃんは私に抱きついてきた。

 同じ身長。同じ胸の大きさ。

 冒険に行くわけじゃないから、胸当てとかをつけてない二人の身体はとても柔らかくて_____



「アイリスちゃん、よだれ出てるよ!」

「あ…ご、ごめんなさい」

「やっぱり…もしかしてアイリスちゃん、抱きつかれたら嬉しいの?」

「ええ、そうなんです」



 よかった。変態だとバレてなくて。

 まだ二人の胸とかお尻とか、この手で揉んでないもの。それに至るまえに変態だと思われて距離を置かれたら、揉むチャンスが少なくなってしまう。

 それは不本意、大いなる失敗。よくない、好ましくない。

 とくにロモンちゃんは勘が鋭すぎるから、気をつけないと。



◆◆◆



 とりあえず適当に準備をした私達は、ギルドの戸を通り、中へ。

 相変わらずワイワイガヤガヤしていて、酒やタバコ…ああ、タバコは室内禁煙だったね。お酒やお料理の匂いが充満して居る。



「ほえ、相変わらずここはすごいね」

「ねー。どうする? 今日はここでお昼ご飯にしよっか」

「そうだね。…なんかアイリスちゃんも居るし、たくさん声とかかけられそうだけど」

「そんなの、適当にあしらえばいいのです」



 そんな会話をして居ると、ここの名物おじさん…じゃなくて、見た目以上に切れ者で意外と顔が広いギルドマスターが私達にいち早く気がついて、赤い顔してジョッキを片手にこちらにすっ飛んできた。

 ……うわ、お酒くさい。

 アイリスの時はまだ、緩和されてたんだね、これ。

 お酒くさい。



「よお、嬢ちゃん達!」

「こんにちわ」

「おう、こんにちわ。……大変だったな。いろんなツテから話は聞いたぜ」



 酔っ払ってたような表情は、真面目なものへと変わる。

 それにつられて私達も、ちょっと真面目な表情になった。



「はい」

「……サナトスファビドは…魔王の幹部は、倒せてるんだな?」

「はい、無力化できてます。ね、アイリスちゃん」

「ええ。今は氷漬けで絶対動けないでしょう。もう心配は要りませんよ」

「そうかそうか。やっぱりお前さんが…」



 グビリと、ジョッキの中のものを口に流しこもうとして、ギルドマスターは手を止める。

 


「……おい、まさか」

「ええ、そのまさかなんです!」



 ギルドマスターは私の顔をじっくりと見始めた。

 そしてちびりとジョッキの中身を口に含むと、とても驚いた様子でこう言ったの。



「はやいなぁ…人間化」

「恐縮です」

「それにしても、そこの二人と同じでえらい美人になったもんだなぁ。頭良さそうなタイプの顔してやがる。へっへつ」



 さすがはギルドマスター。

 こういうこともあるんだな、と、もう私が人間化したことになれたのか、グイッとお酒を飲んだ。

 そして、また、無言で私のことを見つめてくると_____



【いつ、夜の方は顔を見せるんだ?】



 一言、私だけにしか聞こえないように念話でそう言ってきたんだ。

 無論、念話で答える。



【もう少ししたらです。早ければ今日か明日にでも】

【そうか、ジエダやネフラ君…そのほかにもお前さんと仲が良かったみんな、心配してたぞ? 早めに顔を出してやりな】



 そうだ。

 ジエダちゃんには、仇打ちのお土産もあるんだもの。



【……仇をとりました。ジエダちゃんの両親の】

【…あの娘達の両親は調査中に、サナトスファビドに殺された…からな。それを聞いたら、ホットするんじゃないか】

【そうですね。きっとそうです】



 あの子達を不幸におとし入れ、あまつさえジエダちゃんさえ毒牙にかけた。でもあのクソ蛇はもういない。

 そう、近いうちに、報告してあげる。


 ギルドマスターは念話を切った。

 そしてロモンちゃんとリンネちゃんの方を向く。



「で、どうするんだ、今日は。仕事をもう始めるのか?」

「いいえ、あと2~3日はお休みします」

「ああ、それがいいんじゃないか。……それで、アイリスはどうするだ?」



 その問いにロモンちゃんは首をかしげる。



「え、どうするって…?」

「いや、人間化したならもう、ふつうに人としても暮らせるんだろ? 魔物使いの仲魔から解放してやるか、それとも、このまま仲魔として活動するか。決めさせなきゃな」



 空になったであろうジョッキを、近くに居たウエイトレスさんに下げさせ、腕を組み、ロモンちゃんを見下ろす。



「あ…それは…まだ…私は…」

「私は、このまま仲魔としてやってくつもりです。ロモンちゃんが良ければ」

「……と、言ってるので、私はそっちを尊重します」

「そうか。うん、ロモンとアイリスがしたいようにすればいいさ。……んじゃ、ゆっくりしてきな」



 納得したような、スッキリしたような表情をギルドマスターは浮かべると、飲み仲間の元へと戻っていった。

 私達は3人して顔を見合わせる。



「えへへ。アイリスちゃん、これからもよろしくね!」

「…ボクからも」

「はい、よろしくお願いしますね! ……さて、お昼ご飯、食べましょうか」

「「うん!」」



 私達は今、偶然空けられた席に座り、それに気づいたウエイトレスさんがメニューを持ってきた。

 慌ててテーブルを拭くウエイトレスの邪魔にならないように、私達はお昼ご飯と、そのデザートを女の子らしく、吟味しながら選んでいった。




########


次の投稿は11/30です!


########




1 0 0 話 達 成 ! ! !


ありがとうございます!

本当にありがとうございます!

レベルメーカーに続き、この作品がこんなにも続けていられるのは、皆さまからの閲覧は勿論のこと、お気に入り…評価、そしてコメントがあるからなのでございます。


(*´Д`*)ヤッター!


小説を書き始めてまだ、一年と数日の私ですが、これからも、どうぞ、よろしくお願い致しますm(_ _)m



……元小石。今回、イラストを用意致しました。

100話記念として、初期_____トゥーンゴーレムのアイリスちゃんです。人生初のドット絵ですが、描けましたので、掲載させていただきます!

(画像のアイリスちゃんは座っています)

挿絵(By みてみん)

如何でしょうか?

皆さまのイメージと合いますでしょうか?

なお、リトルリペアゴーレムのアイリスも、エンジェルゴーレムのアイリスも、頭の形が同じという設定です。

挿絵(By みてみん)

 そしてまた…下手くそながらも、偶然時間ができたので、アイリスちゃん(人間状態)も描いてみました。


 如何でしょうか?

 レベルメーカーをご覧になって下さってる方々には馴染みがあるかもしれませんが、この作品のために絵を描くのは初めてなんです:(;゛゜'ω゜'):


 最後に、もう一度。ありがとうございました。


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[気になる点] 「話は聞かせてもらいました。トラブルに巻き込るなんて、大変でしたね」 ↓ 「話は聞かせてもらいました。トラブルに巻き込まれるなんて、大変でしたね」 。頭良さそうなタイプの顔してやがる…
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