リスト
到着した宿には、馬車を止める場所が併設してあった。
馬車を入れた後に扉を閉め鍵を掛ければ、密室になるようになっている。
馬は馬車から外して、馬小屋に入れる。
どちらにも番号が書いてあり、間違いが無い様にしてあった。
その番号の書かれた木札を持って、宿の受付に行く。
木札を受付に渡すと、今度は全員の入町証を提示する。確認するのが決まりのようだ。
これでやっと部屋の鍵が渡される。
なかなか面倒だが、ここまでしっかりしているなら安心できる。
今回は1人1部屋となった。全員2階だ。
トイレは各部屋に付いているが、風呂は共同となっていた。
食事は1階に食堂があり、時間内なら何時でも食べられるらしい。
料金は前払いで、1人15000円・馬1頭が5000円・馬車が5000円、合計90000円の支払い。
高いような、相応のような。
とりあえず全員部屋に一旦入って荷物を置き、すぐ集まって食堂へ行く。
メニューは2種類だけで、ガッツリ系とヘルシー系。
男はガッツリ系、女性陣はヘルシー系を頼んで美味しく頂いた。
その後は朝の集合時間を8時と決めて、自由行動にした。
俺はそのまま、風呂に行く事にした。
風呂から出て部屋に居るとノックの音がしたので、出るとアサイさんが居た。
「夜這いじゃないよ?」
「帰れ!」
扉を閉めようとすると、足を隙間に挟んできやがった!
お前はマルサか?!
「ゴメンゴメン。リストが届いたから持って来たんだよ~!」
「それを最初に言えよ!」
しぶしぶ扉を開けてやると、スルリと入ってきてベッドに座りやがった。
「椅子に座れよ!」
「まあ良いじゃない。気にしない気にしない。それよりも、はい、コレ」
そう言って出されたのは、10枚にも及ぶリストだった……。
「えっ、こんなにあるの?!」
「そりゃそうでしょ。『属性』の種類は限られてるけどさ、『技術』は山のようにあるよ。
職業の数だけあると思って間違い無いと思う。職業によっては複数持ってる人も当たり前に居るし。
例えば『騎士』なら剣技・盾技・馬術の3つは持ってるよ?」
「そりゃそうか」
「それから『付属』もあるよね。一般的なモノからレアなモノまで数多くあるよ。
最後に『魔法』。これも100種類くらいあるよ」
「あ~そうか~。こりゃリストを頼んで正解だったなぁ」
「じゃあ、さっそくその中から10個選んで! 持ってるモノを底上げするでも良いよ!」
「早いよ! じっくり考えさせてくれ!」
「え~?! まあいいか! 私、これも仕事だもんね! 有給休暇みたいなモノか! ゆっくりで良いよ!」
「そう言われると、早く決めたいな。明日の朝までに決めるよ」
「え~?! ゆっくりで良いよ!!」
その瞬間、アサイさんの携帯電話が鳴った。
「はい、アサイで~す。えっ?! ちょっと待って?! なんで?! おかしいですよ?! ちょ……」
どうやら通話は途中で終わったようだ。
なんかムチャクチャ落ち込んでいる。
「なんか~、これって~、有給じゃなくて~、休み扱いらしいんです~……」
「そ・そうなんだ……」
「お前のミスだから~、謝罪の意味も込めて~、無償で働けって~、言われたんです~……」
「な・なるほどね……」
「後~、監視してるから~、仕事してないと~、減俸するって~、言われて~、切られました……」
「……」
「私、ちゃんと働いてますよね? サボって無いですよね? そうですよね?」
「う~ん、そこには賛同出来ない」
「何で~?! そこは賛同してよ!!
もういい!! 早く決めて!! 徹夜で決めて!! そしたらすぐ帰るから!!」
早く帰る事に異論は無いのだが、すぐに決めるのは無理だ。
「とにかく! 今日は無理だけど、リスト見て早めに決めるから!」
「え~?! 決めるまで部屋から出ないからね!!」
「おい、何言ってんだ? コラ! 布団に入るな! 潜り込むな! 部屋に帰れ!!」
本当に今すぐに帰って欲しい……。




