言い伝え
風呂から上がってきた主席。全員揃ってる事にビックリしている。
「主席! 何故風呂になど!!」
「いや、えっと、豪華な風呂だったから……。
じゃなくて! 汚い体で使徒様の前に出るのはどうかと思いましたので!」
「それで使徒様のお風呂に入ったら意味無いでしょうが!」
「……はい。反省してます……」
いや、良いんですけどね。
ただ、緊急だったのでメイドさん達が大変だったなと。
「ところであっけなく使徒と認めてますけど、それで良いんですか?」
「でも使徒様なのでしょう?」
「いや、そうですけど……」
「では良いではないでしょうか?」
「うん。そうなんですけど。なんか納得出来ないと言うか……」
「では、神を語る偽物め!と襲いかかった方が良かったですか?」
「そういう訳ではないんですけど……」
「ふふふ、冗談です。実はこの地は神の言い伝えがあるのです。
なので、神を信じているのですよ」
へ~、そうなんだ。誰か神様が降臨されたのかね?
ちょっと興味あるな。
「そうだったのですか。良ければ聞かせて頂けないでしょうか?」
「はい。判りました」
内容はこんな感じだった。
昔、悪魔がこの地に現れ、いたずらをして回っていた。
悪魔には物理攻撃も魔法攻撃も効かなかった。
いたずらと言っても弁当をこっそりと食べるとかその程度だが、皆は迷惑をしていた。
そこに神が現れ、悪魔を捕まえてくれた。
そのまま悪魔を天界に連れて帰って行った。
「サボリ魔め! やっと見つけたぞ!」という言葉を残して……。
それ以来、子供には「夜更かしするとサボリ魔が出るぞ」と忠告するようになった。
なんだろう? 何か引っかかるな。
「その悪魔は去り際にこう言い残しました。
『これで終わりではない。第二、第三の者が……。
その者、蒼き衣を纏て金色の野に落ちてきて、親方女の子が落ちてきたと言うであろう』と」
「パクり! そして混ざってる!」
「えっ?」
「いや、何でも無いです! そ、それで?」
「今回ですが、使徒様は青い服装をされています。
そして麦畑のある方角からやって来られた。
主席の私が女の時に現れました。全て一致していると思いました!」
いえ、全くの偶然です。
青いと言っても空色の上着なだけだし、麦畑の方角はランテビオ側なだけ。
主席が女性ってのも知らなかったし。
それにですね! そのセリフは有名なアニメ映画のセリフを足して2で割っただけです!
ついでにセリフの前半! 悪者のテンプレの言葉ですから!
こんな事する悪魔って誰だよ!
……1人だけ心当たりがあるな。
いやいや、そんなピンポイントで当たらないだろ?
「……その悪魔の名は?」
「ええっと、確かイシダ?」
「いや、イシターでは無かったか?」
良かった違うようだ。
でもね、イシターって何かのゲームだと思いますけど。
「あっ、思い出しました! アサイです!」
「全然違うじゃん! ってアサイかよ!!」
「ご存知で?」
「知ってますとも!! あれは確かに悪魔です!!」
やっぱりアサイだったか!!
くそっ! あの悪魔め! ここでも俺を苦しめるか?!
腹いせに、未だに返さない金に利息をつけてやろう。トイチだ!
おっと、いかん。落ち着け。
しかしそうなると、救いに来たと言われている神ってのはイイクラさんかな?
それとも違う上司? まぁどっちにしろ同じ部署の神なんだろう。
今度聞いてみよう。
「あれっ? でもその言葉を信じるなら、俺はどちらかと言うと悪魔って事になるのでは?」
「私も最初はそう思いました。しかし、親書には大陸を救いし神の使いと書かれていました。
なので、伝承がどこかで狂ったのだと思っています」
あ~、そういう事ってあるよね。
しかし、都合の良い方向に転がっていくな。
逆に不安になるよ。
あれっ? もしかして運が作用してるのか?
いや、減ってないな。それどころか回復してる?!
何故だ? ホワイ?!




