こちらの要求
王にはエリクサーを掛けておいて、回復する間に部屋に居る全員に同じ事をしておく。
「ゆ、許してください!」
「お助けを!」
「ヒッ!!」
「マ、ママーッ!」
「い、いやだー!」
色々な悲鳴が飛び交う。
若干1名マザコンが居た気がするけど。
勿論全員にエリクサーもプレゼントしてる。
飲ませてないので、回復はゆっくりだ。
「さて、ここに居る全員が神の力を知っただろう。
その上で、まだ反論する者は居るのかな?」
誰からも反論の声が出ない。
まぁ、信じてなくても痛い目に会いたくないから、言わないだけかもしれないが。
「よろしい。信じてもらえたようだ。
では、こちらからの要求を言う。
1つ。二度と他国には攻め込まない事。
1つ。他国の領土だった土地は返還する事。
1つ。他国に損害賠償する事。
1つ。民を労る事。
1つ。現在の王・貴族は引退して、家督を譲る事。
1つ。再教育する事。
1つ。これらを1ヶ月以内に実行する事。
以上だ」
「無茶苦茶です!」
「お前は誰だ?」
「この国で宰相をしております、メイジです」
「ではメイジ、何が無茶苦茶だね?」
「他国が攻めてきたらどうしたら良いんですか?!」
「防衛するなとは言っていない。ただし専守防衛だがね」
「領土返還とは?!」
「過去に攻め取った地域を返還するのは当然だ。どれくらい過去まで遡るかはこちらが決める。
それに伴う損害賠償をしてもらうからな」
「民を労るのは判ります。しかし全員引退というのは! 政治が出来なくなります!」
「言った事を実行してからで良い。その間に教育しておくんだな。
死刑では無いのは慈悲だと思え。
ついでに言っておくが、頼みではない。強制だから。
やれるやれないではない。やれ!」
「……やらない場合、どうなりますか?」
「この大陸から国が1つ消えるだけだ。
土地ごと消えるだろうから、大陸では無くなるかな?」
「……実行しなかった、王族や貴族は?」
「どこに居ようと、苦しみもがいて死ぬだろう。
他国に逃げようと、隠れていようと、すぐに居場所は判る。神の目は誤魔化せない」
「せ、せめてもう少し猶予を!」
「では2ヶ月としよう。それ以上は譲歩しない。
お前達が神を人質に言う事を聞かせたように、今度はお前達自身の命が人質だ。言う事を聞くよな?」
所々ハッタリばかりだけど、バレないだろ。
ハッタリを見破る手は無いのだから。
「今日の所はこれで帰る。だが、城にはドラゴンを置いていく。
そうだ! 実行する気が無いのなら倒してみろ。
倒せたなら、許してやろう」
タローが驚いてこっちを見てる。
首を動かすな! 壁が崩れるだろ!
タローの頭に乗り、城から出る。
すると予想通り、タローから苦情が。
「おい! 勝手に決めるなよ!」
「タローに勝てるやつなんかいないだろ? 100人乗っても大丈夫だろ?
それこそ兵が全員で攻撃しても大丈夫だろ?」
「物置みたいに言うな! そういう事じゃない。
業務が滞るって事だ!」
「あぁ。死者の管理か。少しの間、サキに兼用してもらおう」
「貴方、サキに何か恨みでもあるの?」
いやだなぁ、トムさん。
恨みなんか無いですよ。
試練のダンジョンでボス扱いされた事になんか怒ってませんって。




