時間にして50分辺り
さて、ここに居る全員がやっと立ち上がったので、もう一度話をしよう。
腰を抜かした状態じゃ、ちゃんと聞いてない可能性もあるからね。
「我々は神の使徒と尖兵だ!」
ナグラさん、後ろで自分の喉をチョップしながら「ワレワレハカミノシトダ。センベイダゾ」ってやらないでください。
ブレるから! それにそんなネタ知らないだろうから!
それに煎餅じゃいぞ、尖兵だぞ?!
あっ、ムガキ君だけは笑ってる! くそ、楽しそうだな!
「か、使徒様が何の御用でしょうか?」
ようやく声を出せるようになったか。
喋ったのは? 王じゃないな。近くに居たちょっと豪華な服を着ているヤツか。
宰相とか軍師とか、そういう立場の人か?
「何の用か、だと? 決まっている。
神を拘束した上、脅した事だよ。バレないと思っていたのか?」
「そ、そのような事はしておりません!」
「言っておくが、既に神は救出済みだ。神を脅して召喚した勇者も元の世界に戻した。
『巻き込まれた者』もここに連れてきている。言い逃れは出来ないぞ」
「「「「……」」」」
まだ、何か言い訳を考えているようだ。
いや、違うな。メガネをかけてこちらを観察している。
多分、あれは鑑定の眼鏡なんだろう。
本当に使徒なのか見てるんじゃないだろうか?
「お前達は、使徒ではない! ただの狼藉者だ!
近衛兵よ、逮捕しろ! いや、切っても構わない!!」
あ~、やっぱりそうなりますか。
水戸黄門のパターンですね。偽物扱いして切り捨てるっていうアレ。
しかし、このメンバーを見て、よく言えたものだ。
壁ドラゴンとゲイタウロス居ますよ?
そういう俺の心配を無視して、近衛兵が集まってきた。
だが、誰も襲いかかっては来ない。
そりゃそうだよな。怖いもん。特に壁ドラ。
「タロー。火とか吐けるのか?」
「ブレスと言え! 嘔吐物みたいに言うな!」
「で、どうなの?」
「ブレスは出来るが、見た感じで言えば、全員死ぬぞ?」
「そんなに強力? 中火とか弱火に出来ない?」
「コンロでは無いのだが……」
調整出来ないのか。不便だな。
あっ、会話を聞いてて、更にビビったようだ。
壁ドラ、そっち向いてますもんね。
ちょっとタローさんや、口を開けてみ。
おおっ、ビビってるビビってる! 一斉に逃げ出したわ。
おっと、貴族や王まで逃げようとしてるな。
従魔達よ、誰も出さないようにしておくれ。
トムさんは、王を連れてきてください。
王はあっけなくトムさんに捕まった。
貴族達は、出入り口で見張る従魔に怯えて動けなくなっている。
チョロは出口から出て、ケロと一緒に近衛兵を追いかけてるらしい。
ちなみにケロはケルベロスモードになっているので、さぞかし怖いだろう。
こっちの守りが薄くなったので、リーとチェンを呼んでおく。
2匹にはムガキ君の守りをさせるのだ。
「お前達、こんな事をしてタダで済むと……」
「いや、それはこっちのセリフだよ。神をバカにしておいてタダで済むと思ったのか?
言っておくが、俺が来たから助かったんだからな?
俺じゃなければこの国、いや大陸は今頃海の底だぞ?」
「そんな事、出来る訳無い!」
「あっ、まだ信じてないのね。
じゃあ、神の力を思い知らしてやろう。
今から俺はお前の肩に触る。それだけでお前の生命力を死の目前まで減らしてやろう。
ああ、心配するな。殺しはしない。ちゃんと回復させてやるから。
あっ、暴れると死ぬかもしれないから、じっとしてろよ?」
「嘘をつけ! 嘘だろ? くそっ、近寄るな! うわっ、うわーーーーーっ!」
『手加減』をONにして、手に隠し持った木のスプーンで肩を叩く。
これだけで王は瀕死になった。
その過程で凄まじく苦痛を受けるようだ。
うわ~、嫌な力だな!




