福田くんの誤算
ウォーターの魔法でタローの顔面に水をかけてやった。
これで目に入った砂も取れただろ? ほら飛びなさいって!
タローは穴から飛び上がる。
これはジャンプだ! 飛ぶが違う!
そう思ったら最高到達地点で羽を広げた。
ああ、滑空なのね。って、これも違うだろ!
まぁ、ジャンプが城を軽々と飛び越えてるから良いけどさ。
羽ばたいて飛ぶ事を覚えようね。って言うか、外に出なさい!
タローに指示して、謁見の間に向かわせる。
そこには窓が無いので、壊して入るしかない。
なのでタローには壁に張り付いてもらう。
そのまま、頭突きをして穴を開けてもらった。
タローの頭が壁の中に入った状態だ。
その状態で、周りを威嚇してもらおう。
5分後、頭を抜いてもらう。
大穴が開いてしまったなぁ。
「中はどうだった?」
「全員腰を抜かしてる。今なら入っても大丈夫だ」
「了解。頭に乗るから、そのまま入れてくれ」
「人使いが荒いな!」
「人じゃないじゃん」
「ドラゴン使いが荒いぞ!」
「タロー、諦めなさい。どうせ結局はやる事になるんだから」
トムさん。それはフォローですか?
何か俺が悪者に聞こえるんですけど。
「口の中でも良いぞ?」
「断る! おっとごめん、とか言って毒のレイピアを刺しそうだ!
さぁ、頭に乗れ! 角を持ってれば落ちないだろ!」
ちぇっ、断られたか。
頭を突っ込んだ後、口を開けて、舌に乗った俺たちをニュル~っと出してもらう。
そんな事を考えてたんだが。
タローの頭に乗って謁見の間に入ると、確かに全員座り込んでいた。
タローの頭から降りると、トムさんはすぐに臨戦態勢に入った。
俺もすぐに従魔を呼び出す。ガー・チョロ・レイ・ケロで良いかな?
見回すと、2・3人に囲まれてるのが1人居るね。
王冠を被ってるし、あれが王かな? その王冠もずり落ちそうになってるけど。
えっと、使徒って設定だったな。
じゃあ、多少偉そうな感じで行こうか。
「王はお前か?」
「「「「……」」」」
「誰なりとも返事をしろ! 我は神の使徒である!」
神の使徒と聞いて、全員が更に怯えだした。
自分達のした事を思い出したのだろう。
その一方で、背後からは忍び笑いが聞こえてくる。
振り向かないでも判る。ナグラさんだろ? 笑うなよ、頑張ってるんだぞ!
くそっ、巻き込んでやる!
「我の後ろに居るのは神の尖兵である。女だからとバカにするなよ?
付き従うは神の従魔である。ケンタウロスはレベル200だ。
武器を取るような仕草を見せたら、命は無いと思え」
振り向くと、誰もが渋い顔になってた。
ナグラさんは判るけど、トムさんは何で? 神の従魔みたいなものでしょ?
獣扱いするな? 乙女を何だと思ってる? そっちですか。
乙女でしたっけ? いや、何でもありません……。
10分後、ようやく立ち上がれるようになった者が出てきた。
王も周囲の人間の手を借りて立ち上がった。
その間、俺はムガキ君と話をしてた。
よく考えたら王の顔を知ってるのだから。
やはり王冠を着けてたのが王でした。
ついでに質問された。「何故謁見の間に王が居るって判ったんですか?」って。
……よく考えたら、王がいつも謁見の間に居る訳ないよね。
な、何か上手い事言わないと!
「え~と、そう、ほら、ムガキ君が攫われた上に、神が居る地下が崩落。この国に取っては重大な事が起きているだろ?
そうなると緊急で対策会議を開く必要がある。王も交えて会議するなら謁見の間だろう?」
「なるほど。国の偉い人間を一同に集める作戦だったんですね!」
うん、そう。そういう事。そういう事にしといてくれ。
だから、凄いって目で俺を見ないでくれ!!




