巻き込まれた者
馬車に揺られて半日、もう目的地に到着。
まぁ、部屋でゴロゴロしてただけですけど。
改造された2頭の速さ、ハンパじゃないね!
そこには近衛アリが待っていた。
どうやら案内してくれるらしい。
まずはバレにくい『巻き込まれた者』から始めよう。
そう言うと、トンネルの横に開けてあった横道に入っていく。
少し進むと、別の近衛アリが居た。
どうやら上の様子を調べているらしい。
話を聞くと、本人以外に監視が3人居るそうな。
となれば、城に情報を持っていかれないように全員を落としたい。
そう告げると、どこからともなく近衛アリが3匹やってきた。
後はタイミングだが、俺には判らないので自由にしてもらう。
7分後、それは実行された。
目の前には『巻き込まれた者』が落ちてきた。
と言うよりも、近衛アリに捕まり降りてきたんだけど。
他の3人はどうしたんだ? 10mの穴の中に入れてある?!
怖っ! たまに報道される海外で井戸に落ちた人みたいじゃないか!
あれって出られないから凄く救出が大変なんでしょ?
あっ、広ければ大丈夫か。えっ? 人の幅しかない穴? そりゃ無理だ。
後で出してあげよう。どれくらい後になるかは判らないけど。
「あああ、あなた達は誰ですか?! ぼぼぼぼ、僕は言う事なんか聞きませんからね!」
「落ち着いて。君を助けに来たんだよ」
「そんな事は信じません! それも王の策略でしょ!」
「君が『巻き込まれた者』って事は知ってるよ。
勇者は既に捕まえて日本に帰したから。君も帰れるから。だから落ち着いて」
「しょ、証拠は?!」
「じゃあ、これ」
「何ですか、これ? 色紙? ……ぶっ! 首切ったんですか?!
妖怪首置いてけですか?!」
「違うよ! よく見て! 埋まってるだけだから!」
この後30分かけて説得と言うか説明をした。
最後には日本人を証明するのに、クイズまでやらされたよ。
今流行ってるお笑い芸人とか知るか!
ナグラさんが回答してたけどね。誰だよ、その服みたいな名前の女芸人は。
面白くないけど流行ってるって、意味判らないよ。正解らしいけどさ。
「じゃあ、本当に助けてくれるんですね?」
「本当だって! 君もしつこいね」
「突然異世界に連れてこられて、この国を助けて欲しいとか言われてたらそうなりますよ」
「ま、そうかもね。しかし、聞いてたけど、よく抵抗出来たね」
「ラノベも含め、色んな本を読んでましたからね。
ハニートラップとか本にありましたし、その場に居た人達も疲弊してる様子じゃなかったですから」
「なるほどね。おっと、俺は福田。こっちはナグラさんね」
「あっ、自己紹介がまだでしたね。僕は無垣亮です。
助けてくれてありがとうございます」
「ムガキ君ね。
悪いけど、帰るのはもう少し先になるよ」
「神様を救出するんですね?」
「そう。今はまだ発覚してないと思うけど、早く救出した方が良いからね」
「判りました。僕はどうしたら良いでしょうか?」
「ここで待ってても良いし、一緒に来ても良いよ。
待つなら馬車があるから、中に居てくれれば良い。近衛アリがガードしてるから心配無いし」
「……同行させてください。最後まで見届けたいです」
「そうか、判った」
近衛アリには、半日したら捕獲した監視者を開放するように伝えておく。
さ、次は神様救出だ。
近衛アリに付いて行くと、別の横穴に入る事に。
そこの行き止まりは結構な広さがあった。
何でこんなに広くしてるのか聞くと、どうやら牢屋ごと落とすつもりらしい。
床に敷いてある石に椅子が止められてるので、その方が早いそうだ。
危険なので、広間には入らずに待つ事に。
俺が合図を出すと、10匹くらいの近衛アリが天井を壊しだした。
そして起きる崩落。
落ちてきた椅子は、石ごと近衛アリ達が受け止めてた。
天井の穴はすぐに他のアリが埋めてしまった。口から何か吐きながら。
あれ、接着剤みたいなものかな? あれがあるからこんな大きなトンネルも作れるのかも。
いやいや、アリの観察してる場合じゃない。
やっと神様と対面だ。




