実力を示せ!(前)
「全員落ち着けぃ! 馬鹿者共が!!」
とうとう王様の雷が落ちました。
余波でヒムカ王子も頭に拳骨を食らってます。
「お前達はこの場を戦場にするつもりか?!
いや、聞いた話から推測すると島自体が無くなる可能性もあるぞ!」
「何故私までっ?!」
「お前は話を少し自重しろ!
バカみたいに何でも喋るから、他の者が殺気立つのだ!」
正に正論。
そう思います。グッジョブです。
「使者殿、いや福田殿、済まなかった。私が謝るので許してくれ」
「頭を上げてください、王様! 気にしてませんから!」
「そうか。では許してもらえるのだな?」
「ええ! 許しますから!」
「ありがとう。だが、話を進めるに当たって懸念する事がある」
「何でしょう?」
「結局の所、ココに居る全員が福田殿の力を信じていないのだよ。
軽くで良いので、2・3ほど、見せてもらえないかね?」
「私は知っていますよ!」
「判っておるわ! お前だけ知っていても何の意味も無いのだ!
もう良いから少し黙ってろ!」
「は、はい……」
王子、哀れ。
さすがにフォロー出来ません。
「では、どのような方法が良いでしょうか?」
「そうだな……まずはその馬車の実力を知りたい。
魔法で船を沈めたと聞いたが、何か出来るかね?」
「そうですねぇ……何かを打ち抜くとか?」
「出来るのかね?」
「ええ」
多分出来ると思います。
ちょっと確認しますね?
『オリ、聞いてるか?』
『はい、聞いております。打ち抜くんですね?』
『……どこから聞いていた?』
『最初からですね』
『……どうやって?』
『コンピューター経由です』
『コンピューターはどうやって?』
『さあ? 私には判りかねます』
盗聴器でも仕込んでるのか?!
それとも衛星的な何か……いや、考えるのは止めよう。
知らなくて良い事実を知ってしまいそうだ。
『打ち抜く精度はどうだ?』
『どんな最小な物でも可能です。その部屋の絨毯の上にある土の塊でも打ち抜けます』
『土の塊? どこにそんな物がある?』
『貴方の左後ろです』
チラっと見てみた。
土の塊って言うから大きい物を想像してたけど、ただ靴にくっついて来ただけの土じゃないか!
これも可能なのか?! 1cmも無いぞ?!
「え~と、この室内の物でも可能です」
「室内でも可能?! では……そうだな……あの花瓶に差してあるバラはどうだ?」
「あっ、あれですね。ちょっとお待……」
俺の斜め右後ろから、一瞬だけ光が通った。
その細い光はバラを壊す事もなく、花びらに穴だけを開けていた。
光の来た方向を見ると、床に同じ様な穴が……。
『お前! 何打ってるの?!』
『バラを打てという指令でしたので。
安心してください。人には当たっていませんよ』
お前は何処の裸芸人だよ!
そういう問題じゃないだろうが!
「すすすすす、すみません! 先走って打ったようでして!!
床にも穴を開けてしまいました!!
あっ、人には当たってませんので安心してください!!」
誰も俺を責めてこなかった。
いや、誰も声を発する事すら出来ないようだ。
違うな。1人だけ楽しそうに、そのバラを取って王様の所に持って行ってる。
王子、自重しなさい!




