王子様
王子はまだ若く、14歳くらいに見えた。
だが、聡明そうな顔つきをしている。
だからと言ってガリ勉タイプじゃない。
勉強も運動も出来る吉田君のようなタイプだ。
顔も良いし、モテるだろうな。
ちなみに種族はエルフだ。
「王子、ここは危険です! お下がりください!」
「城を目指してるって言うじゃないか。
なら城に戻ったとしても危険度は同じだよ。
それにこれだけ強力な魔法を使っているんだ。どこに居ても同じさ。
それよりも、私を王子と呼んだ事の方が問題じゃないか? バレてしまったぞ?」
そう言われて、騎士?兵士?の人は黙ってしまった。
そりゃそうだ。王子って事を黙ってれば気づかなかったんだから。
「改めて自己紹介をしよう。
私は第二王子のヒムカだ。よろしく」
「私は勇者の使いの福田と申します。よろしくお願いします」
「ところで、凄い魔法だけど、どうなってるのかな?」
「何がでしょうか?」
「おい、キサマ! 王子がお聞きになってるんだ! 素直に答えろ!」
「あぁもう。誰かこの騎士団長を連れて行ってくれ。
落ち着いて話が出来ないから」
王子のボディガードだろうか。
忍者のような黒装束を着た人が数名現れて、騎士団長を連れて行った。
いや、あの人は迂闊だったけど、職務には忠実でしたよ?
「すまなかったね。
魔法の事だけど、これだよ、これ。ほら、入れないだろ?」
「これは結界という物で御座います。
許可の無い者は入る事が出来ません」
「へぇ! 凄いね! じゃあ、中は安全なのか?!」
「はい。攻撃も通しませんので」
「マジで?! ちょっと攻撃してみても良いかい?!」
「どうぞ」
反撃しないようにアンドロイドには念話を送っておく。
反撃なんかしたらシャレにならないからね!
王子は近くに居た兵士に指示を出した。
兵士はまず槍で攻撃するようだ。
俺を狙わずに馬車の側面に狙いを付けている。
シッという掛け声と共に槍を繰り出すが、馬車の1m手前で止まっていた。
俺も初めて見たけど、跳ね返すとかじゃないんだね。
「おおっ! 止まった! おい、どんな感じだった?!」
「はっ! 水面に槍を刺したような感触でした!」
「へ~! 私もやってみよう! 誰か! 剣を貸せ!」
王子は兵士から借りた剣で、斬り付けたり刺したりしている。
攻撃はやはり通らないが、その感触が気に入ったのかずっと攻撃してくる。
あの~、話を進めさせてくれませんかね?
「王子様、もうよろしいでしょうか?」
「ん? あぁ、すまない! 楽しんでしまった!
ところで、もう1つ良いか?」
「……何でしょうか?」
「この結界とやらは、防御の魔法だろう?
という事は、攻撃魔法もあるはずだ。簡単なので良いから見せてくれないか?」
「……魔法が、お好きなんですか?」
「魔法が好きという訳ではない。未知な物が好きなのだよ!」
あ~、そうでしたか。好奇心旺盛なんですね。
見せないと先に進みそうにないので、何かするとしよう。
と言っても、馬車の攻撃って見た事無いなぁ。
船と同じだろうか? もしそうならビームかな?
「判りました。では何か的を用意して頂けますか?」
「的か! 判った! おい! 誰か! 要らない船を出せ!」
王子様の命令で、ボロボロになった漁船のような船が浮かべられた。
軍船が曳いて行き、途中でロープを切って放置したのだ。
俺はアンドロイドにボロの漁船だけを攻撃するように指示を出した。
すると馬車の上に光が集まっていき、それが凝縮されると一気に放出された。
ボロの漁船は焼けた。いや、消失したと言えるくらいだ。
一瞬で焼け落ちたのだ。
俺もビックリだよ……。




