噂の内容
「まず勇者の居場所だが、私にも判らない。
だが、贅沢の出来る首都に居ると思われる」
「贅沢?」
「あぁ。勇者が他国に行かないように、王族が何でも言う事を聞いているらしい。
首都に居ればわがまま言い放題だ。
仕事でどこかに行っていても、必ず早く戻ってくるだろう」
ハニートラップ以外にも仕掛けてましたか。
贅沢を覚えれば、それ以下の所には行かないだろうね。
仕事をしなければ贅沢も無くなるなら、仕事もするだろう。
高校生くらいなら、その罠に落ちるのは簡単だろうし。
「ちなみに『巻き込まれた者』は知らない?」
「……それは聞いた事も無いな。何分、この領地はランテビオになってから日が浅い。
そういう事を教えてくれるほど、信用されていないだろう」
「そりゃそうか」
「それで、噂とは何だ?」
「あぁ、え~とそうだな。
『高校生の勇者が他国に降り立った。その者は同郷の女性を3人連れていた』
こんな感じかな?」
「こうこうせい? それは何だ?」
「う~ん、身分みたいな物だと思ってくれたら良いよ」
こっちの世界に高校が無いのは判っている。
だからこそ入れておいたのだよ。
高校生の勇者と聞けば、勇者だけは間違い無く反応するからね。
しかも同郷の女性3人が一緒。
ほら、ラノベのパターンだぞ! 気になるだろ!
ここで俺の噂を流してもやってくる可能性は50%くらいだと思う。
同郷。でもオッサン。女性が一緒。これではラノベのパターンにならない。
せいぜい、誰か信用出来る者を調べに出すくらいじゃないか?
でも吉田君の情報なら、喰い付くと思う。
例えば現在ハーレム構築中だとしよう。
そこに吉田君が来たらどうなると思う?
同じ能力持ちなら、カッコイイ吉田君に女性は行くと思うだろう。
ハーレム崩壊の危険。
ラノベを読んでるなら、恐怖すら感じるかもね。
そうなった場合、他人に斥候を頼むか?
いや、絶対に自分から動くだろ。
ついでに言えば、ゲスな作戦を取ってくると思ってる。
自分のハーレムの女性を送り込んで、寝首を掻くとか。
日本人だ~!って言って近付いて仲良くしようと言いながら寝首を掻くとか。
いきなり襲い掛かる事は無いと断言できる。
相手の能力を知ってから襲うだろう。
絶対にチートを持っていると考えてるだろうからね。
吉田君のチートは『強運』。そこまでのチートじゃない。
俺に言わせれば、モテモテってのが既にチートだと思う。ケッ!
まぁ、吉田君のチートを知る前に、俺が捕まえるんだけどさ。
勇者よ、残念だったな。チート無しのオッサンに捕まるのだよ!
誰がオッサンだ!
「そんな程度の噂で良いのか?」
「あぁ。間違い無く食い付くよ。
首都から出てくるほどに」
「そんなにか?!」
「あぁ。自分の地位が脅かされそうな相手だぞ?
排除しに来るに決まっている」
「そういう事か。
なら、ついでに『仕官先を探してるようだった』という憶測も足しても良いかもな」
あら、良いですね。
貴方もなかなか痛い所を攻撃しますね。
「『高校生』と『同郷の女性3人』ってのは重要ですから、外さないでくださいね。
それ以外は自由に改変してもらってもOKです」
「判った。上手く流しておこう。
それでどこに現れた事にするのだ?」
「罠に掛け易い場所が良いんですけど、どこかあります?」
「ギラアンス島が良いと思うぞ。
周りは海だし、なによりも今一番狙われている国だ。
喜んで協力してくれるだろう」
「じゃあそれでお願いします。
こっちは3日後にその島に行くので」
島ね。船の出番もありそうだな。




