国境を越えるとそこは隣の国
翌日。
早速作戦開始だ。
まずは問題の国、ランテビオ大帝国に潜入する。
幸いこの町から海沿いに北上すれば、隣の国だ。
だから狙われたってのもあるだろうけど。
だが、いきなり町に入っては警戒される。
国境もあるしね。
って事で船を使ってもう少し北上して、人気の無い岩場から潜入。
ここで馬車を出して乗り込んで移動。
馬車と馬に『隠蔽』をかけておいたので、発見される事は無いはず。
そう言えば、出る前にカンダさんとコタニさんには反対された。
護衛無しでは危険だからって。
それでも今回の相手にカンダさんとかを合わせる訳にはいかない。
そっちの方が危険だからだ。
今回は自重せずに動くからと言って、なんとか納得してもらったけど。
２人にはキジマさんの近くに居てもらう事にした。
ケロやヒヨも呼び出す可能性があるからね。
町の近くまで移動したら、今度は馬車を降りて徒歩で町を目指す。
正面から入る気は無いので、馬車は邪魔だからね。
国境の町は領主も居るらしく、なかなか堅牢な造りになっていた。
モスラの町のように、元々は砦かなんかだったのだろう。
周囲にはお堀があり、入り口は跳ね橋になっている。
どうやって潜入するか。
ナグラさんと相談した結果、結局正面から堂々と入る事にした。
と言っても『隠蔽』を使っているんで、見つかる事は無いはず。
それでも注意を向けられるとバレる可能性はある。
なので、丁度良さそうなのが来るのを待つ事に。
１時間くらい跳ね橋の近くで待ってると、馬車に乗った商人らしき人が近づいてきた。
悪いけど、この人を利用しよう。
馬車が跳ね橋に居る門番に止められた所で、そこら辺にあった小石に『隠蔽』をかける。
その石を馬車を引いてる馬に投げた。
それが当たって暴れだす馬。ごめんよ。
そこに門番が集まってきた所で、こっそりと中に入る。
そのまま路地裏に移動して、人気が無い事を確認してから『隠蔽』を解除する。
潜入成功だ。
ちなみにこの『隠蔽』。
俺とナグラさんにかけた（ナグラさんも加護を貰ったので自力で発動）んだけど、お互いは判る。
つまり『隠蔽』をかけていると『隠蔽』を見破れるのだ。
だからもし勇者が『隠蔽』を使って歩いてたら発見される可能性があった。
さすがにこんな田舎の町にはいないだろうと考えてたけど。
そのまま街中で昼飯にする。
町自体には活気が無い。
大帝国が圧政をしているのか、領主がしているのか。
両方の可能性もあるね。
昼飯の時に領主の居る場所を聞いておいた。
店主は変な顔をしてたが、俺は商人で領主に呼ばれていると言ったら教えてくれた。
領主に呼ばれている者が場所を知らないなんて変？
そこは運を使わせてもらいましたよ。
まぁこの後ナグラさんに『運を使って領主の所に行けば良かったんじゃない？』と言われてヘコんだけど。
領主の居場所というか住んでいる場所が判明したので、早速移動だ。
そう、領主に勇者の居場所を聞こうって考えてる。
教えてくれなければ、いつものように毒コースへご案内だ。
本当に知らなければ、次の場所の領主に聞けば良いし。
この方法の弱点は、俺達の事が勇者に伝わる可能性が有る事。
でもそれも手の内だ。
黒髪で黒目の人間が現れたと伝われば出てくるだろ？
しかも女性を連れているので、吉田君と勘違いする可能性もあるし。
出来れば居場所が判ってからの方が良いんだけどさ。
そこで吉田君の噂を流すから。
勇者待ってろ！ 今、女たらしが行くぞ！
