時の流れに身を任せ
「吉田君ですか? 福田です」
「あっ、お久しぶりです!」
「かくかくしかじかでお願い!」
「……いや、かくかくしかじかって言われても判りませんから」
「え~、そこはファンタジーで理解しようよ」
「こっちはもう日本なんで、ファンタジー要素が無いんです!」
むぅ、相変わらずマジメだなぁ。
とにかく、まず会って話した方が良いか。
ついでにナグラさんにも聞いてもらいたいしね。
「えっとね、勇者会議をするので、軸のずれた世界に来てください。
ヘファイストスさんが送迎するんで」
「……すみません。言っている事が何一つ理解出来ないんですけど?」
「えっ? 何で?」
「その説明で『はい、判りました』っていう人はいないと思いますよ?」
「どの部分が判らない?」
「だから全部ですって!
まず勇者会議って何ですか?! 軸のずれた世界ってどこ?! ヘファイストスさんって誰?!」
「そういう事か。
元勇者が集まるから勇者会議、何か人だけが居ない世界、仏様の知り合いの神。
これでどう?」
「ますます判らなくなったんですけど……」
おかしいな。
丁寧に説明したのになぁ。
「難しく言えば『勇者関係でこっちで問題が起きているから、元勇者に協力してもらいたい』って事」
「最初からそう言ってくださいよ!!」
「言ってたじゃん」
「言ってません!!」
「で、どう? 来る?」
「……重要な話みたいなのに、『コンビニ行くけど、行く?』みたいな感じで呼ばないでもらえますか?」
「え? ダメ?」
「はぁ……、会って話した方が良さそうですね。行きますよ。
仲間はどうしますか? 今、一緒に居るんですけど」
「三種の神器の子か。そうだなぁ、一緒の方が良いかな?」
「時間はどうです? あまり遅くなるのは困るのですけど?」
「ちょっと待って」
時間か。
そこは考えてなかった。
「ヘファイストスさん、ここって時間はどうなってます?」
「時間は経過してません。正確に言えば、元の世界と時間の進みが違うと言うべきでしょうか。
ここで1時間過ごしても、1秒くらいしか経ってないでしょうね」
「へ~、便利ですね」
「肉体的には時間が経過してるので、ずっと居れば他の人よりも早く老化しますけど」
「怖い! そこはファンタジーじゃないんですか?!」
「そんな訳無いでしょう?
肉体の時間経過を止めるなら、動けないし思考すら出来ませんよ」
そりゃそうか。
良くある、こっちで鍛えて戻るってパターンはダメだな。
可能だけど、将来大変な事になりそうだ。
それに子供だったら、突然成長してるって事でしょ?
自分の子供が自分より年上って事にもなりえる。うん、使えないな。
「お待たせ。えっと、時間は気にしなくて良いみたいだよ。
うん、全く問題無い。変な事にもならない。ええ、ならないとも」
「……怪しさしかありませんが?」
「アヤシクナイヨ?」
「……福田さんも居るんですよね?」
「そうだよ。あっ! 俺が一番長居してるじゃん!
ちょっと! 大丈夫なのか?!」
「慌ててますね……。本当に問題無いんですよね?」
「1時間が1秒になるだけだって! 早く来てくれ!
早く終わらせよう! 俺がヤバい!!」
「理解出来ました。長居するほど他の人よりも年を取ってしまうんですね?」
「そういう事! 1~2時間くらい若いんだから良いでしょ!
俺みたいにもうすぐ30代には危険なの!! オッサン扱いされちゃう!!」
「そこですか?! まぁ判りましたよ。行きますよ」
早く始めて早く終わらせよう。
ナグラさんは……いいか。
説明せずにこっちに連れて来れば。
きっとすぐに対応するだろ?




