神話と言う名の昔話
「まずは昔話をしましょう」
「えっ? 何で昔話?」
「関係あるからですよ」
「そうですか。判りました。どうぞ」
「自分はこの容姿でね。親、母親から嫌われていたのですよ」
そう言われて見れば、他の神様と比べると普通って言うか。神様が美形ばかりと言うか。
でもそれだけだ。問題があるようには見えない。
「それもあって、結婚も認めないと言われまして」
「えっ?! さすがにそれは横暴じゃないですか!
無視して結婚したんですか?」
「いえ、こちらの世界は両親が納得しないと結婚出来ないのですよ」
「厳しいですね! それでどうしたんですか?」
「十二神に協力してもらいました。
あのババア……ゴホン、母親は豪華な物に目が無いので、宝石を散りばめた椅子を作りました。
それに十二神が好き勝手に加護を付けて、座ったら離れられなくなるようにしたんです」
「そんなのに引っかかったんですか?」
「ええ。簡単に。嫌ってる息子からの贈り物なのに、物には罪が無いと言ってすぐに座りましたよ」
「え~と、バカなんですかね?」
「違いますよ。大バカなんです」
「あっ、そうですか……」
結婚したい→許さない→豪華な椅子プレゼント
この流れで、警戒しないのか。
少なくとも物で釣ろうとしてる、くらいは思うだろ。
そう思ったら受け取らないと思うんだけど。
「皆にその状態を公開して見世物にしたら、すぐに折れましたよ。
外面は良い母親を演じてましたからね」
「それで結婚出来たんですね。あれ? 相手は誰ですか?」
「アテナです」
「アテナ?!」
「意外ですか?」
「意外って言うよりも、十二神じゃないですか」
「その十二神の中にヘラっていう嫉妬深い神が居まして。
バラすと妻へのプレッシャーが大変な事になるので秘密なんです」
「は~、そうなんですね」
「ちなみに、福田君もヘラには目を付けられています」
「何で俺?!」
「一緒に行動してる女性が2人居るでしょう?
その2名とフラグが立ちそうな時は、必ずフラグを折るようにしてるらしいです」
ここに来て驚きの事実発覚!
何となくの記憶だが、ヘラって婚姻や家庭の神じゃなかったか?
それが嫉妬で人のフラグ折るとか、ヒドい話だ!
今度どうにかして呼び出して説教だな。
「福田君、お怒りは判るけど、話の続きを聞いてください」
「おっと、すみません。そうでした。続きをどうぞ」
「それで無事に結婚出来まして。子供が1人生まれました」
「それはおめでとうございます」
「ありがとう。
ところでその椅子はどうなったか、判るかい?」
「え? 勿論捨てられたんじゃないですか?」
「いや、しばらくは所有してたそうだ」
「そんな目にあったのに?!」
「作りは自分で言うのもなんだけど素晴らしいからね。捨てられなかったんだろう。
でも、それに父が座る事があってね。問題になったんだよ」
「お父さんは知らなかったんですか?」
「うん。たまたま発見したらしく、うちでパーティーをした際に持ち出したんだ。
そのパーティーには閻魔様やカオス様が来ていたと言えば規模が判るだろ?」
「うわっ、重鎮が集まるパーティーで恥を晒したんですか……」
「そう。で、事情を初めて知って、さらに怒ったんだよね」
「当然でしょうね」
「その怒りのまま、椅子を投げ捨てたんだよ。
そしたら、その椅子はどこかの世界に飛んでいってしまったんだ」
「……迷惑な話ですね」
「それを作った私と家族に探すように命じられたんだ」
大変な親をお持ちですね。
しかし、投げた椅子がどこかの世界に飛んで行ったって……。
無茶苦茶迷惑な話じゃないですか。
地球に落ちてたら聖遺物扱いになるのでは?
座ったら最後だけどさ。
しかもそれを探して来いって。
まぁ、投げた父親が探しに行く訳にもいかないだろうけど。
だって、父親って、多分だけど、ゼウスでしょ?
ヒョイヒョイと異世界を回れるような立場じゃないわ。
それにしても、この昔話は壮絶だけど、何の関係があるんだろ。
あっ、その椅子の事か。




