ヘファイストスの加護
「くっ、やはり『混沌』の持ち主には『神の威圧』が効かないか……」
「えっと……俺、何かしましたっけ?」
気づけば周囲には誰も居なかった。
さっきまでハーメルさんや皆と情報について話してたのに。
皆を移動させた? いや、そんな手間をかけるくらいなら、俺だけ移動させた方が簡単だ。
しかし、周りはさっきと同じ、家のリビング。
あっ、あれか。空間軸をずらしたとか、そういうやつ?
まぁ神様だから何でもアリなんだろう。
そんな事よりも『神の威圧』?
そんなのを使われるくらい怒ってる?
何か悪い事したっけ?
影が薄いとか思ってたのがバレた?!
「すみません! 影が薄いとか思ってしまって!
許してください!」
「何を言ってるんですか、貴方は?」
「違うんですか?」
「はぁ……」
ため息吐かれたよ。
呆れてるのだろうか。
だって、それくらいしか思いつかないんだもん。
「こうなったら、協力をお願いした方が良さそうですね」
「協力? お願い? 何かするんですか?」
「福田君。聞いたら必ず協力してもらいます。よろしいですか?」
「ええ~、内容も言わずにですか?!
そういう場合って、大抵大問題だと思うのですが……」
「どうします?」
「う~ん、まぁ神様に逆らう気は無いので、承諾しますけど……。
安全なんですよね?」
「……では話しましょうか」
「ちょっと?! 安全の保証は?!」
「そこは貴方次第と言っておきましょう」
「保障無し?! ちょっと止めたくなってきましたけど……」
「もう無理です。私も覚悟を決めました。福田君も覚悟を決めてください」
「ええ~……、理不尽……」
「神の要望なんて理不尽なものですよ」
それを神様が言いますか?
そうかもしれないけど、悲しくなります。
「まず、協力者として、私の加護を付けます」
「は、はぁ。もう好きにしてください」
「はい。付けました。加護に伴う能力は『隠蔽』です」
「『隠蔽』ですか。こう言ってはアレですけど、ショボくないですか?」
「私は鍛冶の神でね。元々は作った物に能力を付与する為の能力なのですよ」
「なのに『隠蔽』ですか?」
「ゲームで例えましょうか。
RPGとかで、武器があるでしょう?
鉄の剣とか銅の剣とか」
「ありますね」
「形状は同じなのに材質だけが変わっただけで、攻撃力が上がるって不思議じゃないですか?」
「言われてみれば確かに。頑丈になるのは判りますが、普通はそれだけですよね」
「そうです。つまり攻撃力10の武器に+10とかしてるのですよ」
「ほうほう」
「その+10の部分を隠蔽しているのです。
見えないけど、作ったら攻撃力が高くなったと皆は思ってますよ」
確かに。
ミスリルの剣を持ってるけど、魔力が流せるとかエンチャント出来るってのは知ってる。
でもミスリルの剣だからって攻撃力があがるってのは変だよな。
軽くなって振りやすくなってるけど、軽い=威力が上がるって訳じゃないもん。
刀なら切れ味が高いほど、攻撃力が高いはずだ。
何も考えずに使ってるけど、そんな秘密があったのか。
「この『隠蔽』ですが、持ち物にも利用出来ます。
例えば、城などは武器の持ち込みは禁止ですよね。
そういう時に武器に『隠蔽』を使えば、持って入っても絶対にバレません」
「うわ~、暗殺し放題じゃないですか」
「そうですね。ちなみに身体検査してもバレません」
「視覚だけでなく、触覚まで騙してるんですか?!」
「いえ、全ての感覚から隠蔽します。神でも注目しない限りはバレません」
神すら騙せるのか!
凄い能力じゃないか!
「それで、何で加護を?
この能力で身を守れって事ですか?」
「いえ、これから話す内容の重要な部分ですので。
身をもって知ってもらう為です」
「は、はあ。そうですか」
『隠蔽』が重要ねぇ。
どんな話なんだろうか?




