ウエダさんと商談
それから少しサガワさんと話をして、今度はウエダさんの所へ。
ヒタキさんはもう少しサガワさんと話をするそうなので、30分後に迎えに行く事に。
そのまま待っていてもらっても良いんだけど、ウエダさんの所にヒタキさんも行くと言うので。
ウエダさんの所に行くと、すぐにナミちゃんに見つかった。
どうやらポチ経由で、俺が来るのを知ったみたいだ。
「お兄ちゃん、いらっしゃい!」
「やあ。お父さんは居るかな?」
「店に居るよ! 行こっ!」
ナミちゃんの案内でお店に。
いや、場所は知ってるんだけど、張り切ってるからさ。
「おっ、帝王さんじゃないか」
「久しぶり、イエロー」
「イエローって言うな!」
「じゃあ、帝王って言うなよ!!」
「今日はどうした?」
「話題の切り替えが早いな! いや、ちょっと重要な話があってな……」
「重要な話? ……ナミはどこにもやらねぇぞ!!」
「は? 何の話だ?」
「王子様がナミと結婚したいって事だろうが!
そりゃ確かに可愛い! とても可愛い! だが断る!!」
「ハズキ君の事か? そんな話じゃねぇよ! って言うか、気が早いな」
「だってナミだぞ! 誰でも惚れるだろうが!」
「そうかもしれないけど、ハズキ君は多分そんな事考えてないよ」
「何?! あの野郎、ナミの魅力が判らないだと?! どうしてくれようか……」
「お前はどっちなんだよ! 結婚させたいのかダメなのか、どっちだよ!」
「うるせえ! これが娘を持つ男親の気持ちだ!!」
このまま言い争ってると、ヒタキさんを迎えに行く時間になってしまった。
何一つ商談が出来なかった……。
「おや、執事さんじゃないか。どうした?」
「だから、話をしに来たって言っただろ! 商談だよ、商談」
「何だ、そうなのか。最初っからそう言えよ」
「……折角の儲け話なのに。他に持っていくかな」
「お前と俺の仲じゃないか! 遠慮すんなって! さあ、話せ!」
「……まぁ、いいわ。これ、見た事あるか?」
「うん? あぁ、それな。最近ダンジョンから出てくるやつだろ。
うちでも買取してるぜ」
「さすがだな! で、どうしてる?」
「誰も使い方が判らなくてなぁ。一応宝箱から出たって言ってるから、1枚1000円で買ってるぞ。
確か、3枚くらいあるかな。で、それを買うって事か?」
「そういう事」
「って事は使い方が判ったんだな?! 何なんだ、これ?」
「これは『建築魔法紙』だ。これを集めると家が建つ」
「売った金で?」
「違うわ! 物理的にだよ! 家のパーツが出てくるから、組み合わせれば建てられるんだよ!」
「へ~、そうなのか。凄い物じゃないか!」
「あっ、納得するのか?」
「当たり前だろ? お前と一緒にいて、変な物には慣れてるよ」
失礼だ。非常に失礼だ。
「よろしいでしょうか?」
「ん? 何、ヒタキさん」
「契約書を準備しましたので、ウエダ様には読んでサインを頂きたいと思います」
「おいおい、そんな大層な事か?!」
「まぁ、そうだろうな。
ウエダさんがここで冒険者から買い取って集めてもらう。
それをサガワさんに売るんだから」
「サガワ? ……カジノの町の富豪じゃねぇか!
あのホテルの持ち主だろ?!」
「だから契約書だろ?」
「そんな大事なのかよ! マジか?! 1枚1000円レベルじゃないのかよ!!」
契約書を読むと、ウエダさんは座り込んでしまった。
手から契約書が落ちたので、拾って読ませてもらった。
うわっ、ウエダさんに無茶苦茶有利な契約書だわ。
1枚20万で買取だってさ。揃った時点で追加報酬まで出すってなってるし。
同じ物でも同じ値段で買うし、看板にはサガワさんの所のマークを表示しても良い。
このマーク、本来は系列店にしかつけてはいけない物らしい。
つけると、本店が保障するって事になるそうな。
つまりは信頼出来る店っていう印だ。
系列店と違って、本店にお金を入れなくて良いみたいだし。
マークの有る無しで、客の信用度も全然違うみたいだ。
きっと冒険者は優先的に売りに来てくれるだろうね。
ウエダさんは震える手で何とかサインした。
そして、最後にヒタキさんが爆弾発言。
「最初の買取は2日後で、サガワ様自ら買い付けに来られるそうです」
これで、ウエダさんはぶっ倒れた。




