サガワさんと商談
2時間ほど談笑して、それからまた転移ゲートで戻った。
さすがにモリタ君の部屋に馬を入れる訳にはいかないからね。
王都の自宅に戻ってから、今度はカジノの町に行く。
行く前にサガワさんには連絡をしておいたが、まさか既に家に来てるとは思わなかったよ。
「お久しぶりです」
「お久しぶりです、福田さん!
今日はどのような儲け話ですか?!」
「あれ? 儲け話ばかりしてますっけ?」
「ええ! 勿論です! もし損する話でも最終的には儲かる事ばかりですよ!
それに福田さんとの会話は楽しいですからね!!」
「そ、そうですか。まぁ損をしてないなら良かったです」
「それで、どんな話でしょうか?」
「えっとですね、2つあります。
多分ですけど、大きく儲かる話と少し儲かる話です。
どちらから聞きますか?」
「では少し儲かる話からお願いします」
少し儲かる方からか。
じゃあ、コルラド国の事からだね。
「コルラド国で面白い魔法道具を発見したんですよ。
匂いを消す魔法が入ってて、獣やモンスターに匂いで見つからないようにする為の物です」
「ほうほう、そのような物があるんですね。
しかし、それはあまり一般的には売れないと思いますね」
「そうだと思います。
しかし、どの家庭も買いたくなる物だと思ってます」
「それは何故?」
「これをトイレに置くんですよ。するとトイレが無臭になります」
「なるほど! それならどの家庭でも欲しがる事、間違いないですね!!」
「コルラド国の王族に話をしてあるので、紹介状を持って行かれたら買い付けが出来ると思います」
「福田さんが流通させないのですか?」
「自分は冒険者なので。商才も無いですし。
そういうのはプロにお任せします」
「判りました。ではマージンを払うという事で」
「いえいえ、それも無しで良いですよ」
「そういう訳には! あっ、判りました。次の話で稼がれるのですね?」
「いや、まぁ、そうなのかな?」
「では、次の話をお願いします」
大きく儲かる話。それは建築魔法紙の事だ。
サガワさんに建築魔法紙を渡して話をする。
「それは『建築魔法紙』と言われる物です。
最近オオキの村にあるダンジョンから発見されるようになりました」
「ほう。ダンジョンから発見された物ですか。
どのような物でしょうか? 名前から建築関係に思えますが」
「20~30枚で1セットになるんですけど、揃うと家が建てられます」
「は?」
「紙1枚から家のパーツが出てくるんですよ。
それを組み合わせれば簡単に家が建てられるんです」
「なんと! そのような物があるとは……」
「あ、信じられるんですか?」
「ええ。福田さんがウソを言うはずがありませんし、言う必要もありませんから」
「でも偽物を渡してお金だけ取るって事も……」
「はははは! そのような事をして短期で小銭を稼がれるなら、ギャンブルされた方が良いでしょ?」
「……そう言われればそうですけど」
「なので、信じますよ。
それに福田さんが認めて頂いている商人ですから、ウソかどうかくらい見極められますよ。
それで、いくらで売ってもらえますか?」
「もう商談ですか?!」
「間違い無く売れます。ならば他所に出回る前に買っておかないと」
気が早いな。
新大陸でも実物を見て初めて納得してもらったのに。
「オオキの村にはウエダさんっていう人がお店をやっています。
ダンジョンで発見されたら買い集めるように言っておきますので、そちらから買っていただければ」
「おおっ、ウエダさんですか! 前に泊まって頂きましたね!」
「あっ、そうです。その人です。売買はその人とお願いします」
「承知しました。それで福田さんの取り分はどうしますか?」
「それはこちらのヒタキさんと話してください。
王都に居る、自分の執事ですので」
ヒタキさんは静かに一礼する。
サガワさんはそれを見て、立ち上がって一礼した。
執事相手でもこの態度か。出来る商人は違うね。




