魔法と体
無事に町まで帰ったが、町の中はピリピリムード。
どうやら領主は降伏せずに篭城してるらしい。
敷地は包囲されているのに、中にある食料と私兵で粘ってるそうな。
俺達は自衛団の事務所に行く。
何故かって、道中で出会ったやつらの話をしておこうと思って。
向こうから吹っ掛けて来たけどさ、自己中のやつって俺達が悪いみたいに言うじゃない?
だから先に話をしておいた方が良いと思ったんだよ。
何も無ければ良いし、何かあっても先に申告してある方が信用出来るでしょ。
後から言うと言い訳に聞こえるもん。
で、自衛団の事務所に到着したのだが……。
何故か全身筋肉痛の人が何人も居た。
部屋の隅にシートを引いて、その上で寝かされてるんだよね。
で、少し動く度にイテテテテと声を出すんだよ。
正直、うるさいです。
「あの~、道中の事を報告に来たんですけど……何なのです、この状況は?」
「あぁ、彼らは伝令ですよ」
「伝令? あぁ、どうなってるか伝えに来たって事ですね。
でも何で筋肉痛? 馬に乗ってるんじゃないんですか?」
「おや、ご存知無い? 魔法を使ったのですよ。
馬よりも早いですからね」
「馬よりも早くなる魔法?!」
「ええ、『身体強化』の魔法です」
おお~!
ラノベでよくある魔法登場ですか!!
ブーストとか言われたりもする、例のアレですね!!
あれっ? でもこの世界の魔法って、物理法則を無視出来ないんだよな?
どうなってるんだろ?
「『身体強化』の魔法ですか? どういう魔法なんです?」
「一時的に身体能力を限界まで使えるようにする魔法です。
効果は30分までです」
「30分『まで』? 30分『ほど』ではないんですか?」
「30分以上使うと致命傷になりますから」
うわっ! 怖い!!
そう言えば、日本で聞いた事があるな。
人間って常にストッパーがかかってるらしい。
脳が止めてるんだとか。
とっさの時にはそのストッパーが外れて、驚異的な力を発揮するとか。
それが『火事場のバカ力』らしい。
つまり、魔法でストッパーを解除してるって事か。
で、限界を超えたら筋肉の断裂や関節破壊が起きるって事?
まぁ、そうだよなぁ。
鍛えても無いのに、自分の筋肉の限界を超える動きを魔法で出来る訳無い。
もし出来たとしても、まず目に支障がある。
だって動体視力が上がらないと、いくら動けても意味無いよね。
更に脳の処理能力も上がらないとダメだ。
重要な点を忘れたけど、例えば、ランプが付いたらボタンを押すとする。
予測無しで行った場合、仮に0.5秒だったとしよう。
それは目で確認(A)し、それを脳が処理(B)して筋肉を動かせと指令(C)を出す。
そして筋肉(D)が動きボタンを押すのだ。
A+B+C+D=0.5秒って事になるよね。
Dが魔法で早くなったとしても、ABCが今まで通りならそこまで早くならないでしょ。
ABCDの全てが早くならないと無理。
確か全て電気信号だったはずだから、そういう魔法は電気信号が早くなる魔法って事なのか?
それでも限界はありそうだけど。
はっ!
今、思ったけど、俺達が使ってる『瞬歩』って技術!
あれも『身体強化』魔法っぽくないか?!
って事は、多用すると筋肉断裂とか間接破壊とか……。
可能性はありそうだな……。
良かった、こういう機会があって。
便利だな~で終わらせちゃダメだね。
ちゃんと考えよう。




