道中2
夕方になるまで進んで、その日は帰った。
翌日。
少し進むと、地面にエルフが倒れていた。
慌てて近づくと、「み、水……」と言ってたので、水分不足だったようだ。
魔法で水を作り飲ますと、顔に生気が戻ってきた。
何でこんな所で行き倒れてるんだろうか?
「いやぁ、助かった。礼を言うぞ」
「いえいえ。所で何で倒れてたのです?」
「闘技場に向かってたのだが、ここで力尽きてな」
「でも水くらい魔法で作れば良いでしょ?」
「魔力も尽きたのだよ」
「何で魔力が尽きたんです? 移動するくらいじゃ魔力は使わないでしょ?」
「うむ。助けて貰ったのだから、事情を説明するとしよう。
実はこの剣に魔力を注いでいたのだ」
「剣に魔力を?」
「そうだ。この剣は魔力を注ぐ事で硬くなるのだよ」
ふ~ん、エンチャントと似てるけど違うんだな。
どっちかと言うと魔法道具の方が近いか。
「面白い武器ですね」
「おっ! この剣の価値が判るか?!
そうなんだよ、注げば注いだだけ硬くなるんだ。
ただし戦闘で使うと使った分だけ柔らかくなっていく。
だから常に注いでおかないといけないんだ。
面倒だが、またそこが可愛いんだよ。ハァハァ……」
うわっ、剣に頬擦りしだした!
息遣いも荒いし、ちょっとアブナい人なのか?
「しかし、魔力が切れてはダメなんじゃ?」
「1本に注げるのは1日に100までだぞ?」
「じゃあ、何で?」
聞いてから判った。
よく見ればこの人、同じ様な剣を5本も持っている。
5本全てに注げば500も無くなるのか。
そりゃ魔力不足にもなるわ。
「今日は4番ちゃんまで注いだ所で魔力が枯渇したのだよ。
3番ちゃんが思いのほか吸うので、驚いたけどな。
5番ちゃんにも注いであげたいのだが、魔力が足りない……。
どうしよう……。そうだ! 貴方、魔力を回復させる薬とか持ってないですか?」
「ええっ? 何をいきなり。そんな物あったかなぁ」
「いや、持ってるでしょ! 誤魔化しても無駄ですよ! 出しなさい!」
あぁ、そういえばMPポーションってのがあったわ。
でもさ、何で出せって命令されてるの?
助けたの俺達だよ?
「5番ちゃんの為だ! さあ、出すのだ!
5番ちゃんが可哀想だろ!」
「いや、明日回復してから注げば良いじゃないですか」
「仲間外れは可哀想だろ!! 平等に愛さないと!!」
ドン引きである。
とうとう愛とか言い出したよ。
闘技場に出場するやつって変態ばかりなのか?!
「持ってないので渡せませんね」
「ウソだ! 絶対持っているって俺の勘が言っている!
出さないと言うなら、殺してでも奪ってやる!!」
物騒な事を言い出したので、すぐに『ピットフォール』で穴に落とした。
魔力不足と水分不足が祟ったのか、すぐに気絶したようだ。
引き上げて問題の剣を見る。
5本もあるから暴走するんじゃね?
って事で4本は、魔法を使って魔力を吸い取ってから折った。
魔力を空っぽにしたら、発泡スチロール並みの弱さになったから楽勝だったよ。
そのまま道の脇にエルフと剣を置いて、先に進んだ。
「ねぇ、この道中に次々に変なヤツが出てくるのってさ……」
「……なんとなく判るけど、何?」
「ヨシ○コのパターンじゃ……」
「言うなよっ! 思ってたけど、言うなよっ!」
「その内、夫婦とか検定中のとか出て……うん、さすがにもう出てこないよね」
「フラグっぽく言うな!!」




