道中1
翌日。
町を出て馬車で内陸方面へ向かう。
道中は3日ほどって聞いてたけど、よく考えなくても馬車での話だったのだ。
なので、町で馬車を借りて乗っている。
こちらの大陸の馬車はあちらよりも少し古い。
科学とか少し前な感じだ。
ちなみに馬車を引いてるのは銀星号とショスコムだ。
どこから知ったのか謎だが、突然念話を飛ばしてきたのだ。
何でも「主人が乗る馬車を引くのは俺達だ!」との事。
どうしてもそこは譲れないらしい。
って事で、船経由で連れて来たんだ。
元々1頭引きの馬車なので、1頭は余る。
すると戦いだしたので、慌てて止めて順番に引く事にさせた。
もう1頭にはカンダさんが護衛として騎乗している。
それには問題無いのかと尋ねたら「カンダ殿なら問題ありません」と。
こいつらの最速で走ってもらうと馬車が持たないので、ゆっくりと歩いてもらっている。
それでも普通の馬より早いのだが。
半日進むと、突然木の陰から1人のエルフが飛び出してきた。
今馬車を引いている銀星号は無視して進もうとしてるが、そのままだと轢いてしまうので止まってもらった。
「ふふふ。君達は闘技場に向かうのだろう?」
「え、ええ、そうですけど」
「やはり! 特に馬上の君! 参加する気なのだろう?」
「いや、そんな気は無いが……」
「ははははは! 誤魔化さなくても良いのだ。判っているから」
「いや、え~と」
「しかしねぇ、そのまま参加されては困るのだよ。
ライバルが増えるからねぇ」
「は、はぁ……」
「という事で、ここで参加する気を無くしてもらおうか!」
そう言ってそのエルフは抜刀した。
おいおい、いきなりだな!
カンダさんも危険だと察知して馬から下りて抜刀した。
何なんだ、いきなり!
どうしよう! そうだ、『混沌』を使って運を使わなきゃ!
慌てながら『カンダさんが怪我無く済みますように』と願っておいた。
すると突然横から風が吹いた。
それをきっかけに戦闘になるかと思ったが……。
「ストーーーップ!」
と、エルフが大声で止めた。
「少し待ちたまえ。私のカッコイイ髪型が乱れた」
そう言って、櫛を出して髪の手入れをし始めた。
えっ? 何? 何待ち?
5分後、ようやく納得できる髪型になったようで……。
「ふふふふ、待たせたね。君の生きる時間が少しだけ増えたね。風に感謝するがいい」
「何言ってる?」
「気にするな。さあ! 行くぞ!」
風がピュー。
「ストーーーップ!
何なんだ、今日は! 全く、また髪型が崩れたじゃないか。
君も幸運だね。また少し延命するのだから」
5分後。
「よし! 完璧だ! さあ行……」
ピュー。
「あぁ、もう! またセットし直しじゃないか!
待てよ、ならばいっその事、反対側に髪を流せば良いのでは?
それも良いか。どちらにしても私がカッコイイ事には変わりないのだから!」
ピュー。
「反対から吹くとは! こうなったらワックスで固めるか?
しまった! 今日は持ってきていない!
そうだ! 君達、ワックスか何か持ってないかい?
有ったら少し貸して欲しいのだが……」
「うるさいわ!!」
頭から『ポイズン』の魔法で麻痺毒の水をかけてやった。
崩れ落ちたので、ロープで近くの木に縛り付けておいた。
気にしてる髪もモヒカンに刈っておいてあげた。
何だったんだ……?




