セリの結果
漁業組合に行くと、前に担当してくれたオッサンが出てきた。
どうやらシーサーペントのセリが終わったらしい。
結果はと言うと、シーサーペントは500万だった。
何でも普段はもっと高く1000万に到達する事も。
何故安いかと言うと、領主がセリに参加してなかったからだそうな。
むむむ、失敗したわ。セリが終わってからクーデター(?)の方が良かったな。
オッサンは申し訳なさそうにしてるが、半分は自分のせいなので何も言えない。
500万でも元手が0なので、問題無いんだよね。
ただ、1000万で売れた可能性があるって聞いてるから損した気になるだけ。
それでもオッサンの気はすまないらしく、耳寄りな情報をくれた。
ここから3日ほど内陸に進んだ所にある町には、闘技場があるそうな。
そこでは毎日のように開催されているので、人の出入りが激しく食料がよく売れるんだそうな。
その中でも内陸な事もあり、魚は高価で売れるらしい。
このオッサンも凍らせた魚を運んで稼いでるそうな。
そのついでに闘技場で賭けて、儲けを減らして帰ってくるらしいが。
なかなか興味深い話ではある。
俺の場合、生の魚をそのまま持っていけるから、高値で売れるかもしれない。
ついでにギャンブルで稼ぐって手もあるな。
どうせクーデターの終了待ちだし、行ってみようか。
「って事でその町に行ってみようか」
「それは良いんスけど、捕まえてる息子はどうするんスか?」
「あっ、そっか。放置したらマズいよな……。どうしようか?」
「もう自衛団に渡せば良いんじゃない?」
「まぁ、それしかないよな……」
自衛団に引き渡すために、自衛団の人を連れて林に行く。
穴の中を見ると、全員がおとなしくしている。
逃げられないし観念したんだろうと思ったけど、どうも違うらしい。
クズ息子を引き上げてみると……
「私は何と愚か者だったのでしょうか。
この本を読んで改心しました! 我が父は害悪です! 排除しなければ!!」
「えっ? 突然どうした?」
「本に感銘を受けたのです! この本は私に生き方を教えてくれました!」
あっれ~? そんな聖書みたいな本を渡したかなぁ?
手に持ってる本をチラリと見てみると、有名な異世界転移のラノベだった。
前世の色々な知識で錬金術する話だ。
確かにそれに出てくるアホな領主や貴族はヒドい目に合うけどさ、感銘受けるような話だったかなぁ。
どっちかと言うと「こいつ前世でどれだけ優秀だったんだよ」ってくらい何でも知ってて、つまらなくなったんだけど。
「私はこれまでの事を反省し、罰を受けたいと思っています。
それが終わったら沢山勉強して色々な知識を身に付け、色々な国を回ってみようと考えています」
「色々な国を回ってどうするの?」
「困ってる人が居れば無償で助けたり、身に付けた知識、ええとチートを使って人々を救いたいです!」
「は、はぁ……」
「まずはポンプを作りたい! 魔法道具で水は作れますが少し高価です。
楽に水汲みをさせてあげたい! 後は温泉! そしてアンドロイド!!」
「落ち着け! それに水汲みは必要無いだろ! 皆生活魔法で水を作ってるじゃないか!」
「そうですけど……それでもポンプに憧れる!!」
「判る!」
「ですよね!」
ヤベぇ、ナグラさんが参戦してきた。
確かに知識チートと言えばポンプだろうけどさ。
この世界、子供でも生活魔法を使えるぞ?
それに水を作る魔法道具は、少し高いけど大体の家に付いてるはずだ。
あの変な孤児院にでさえ付いてたからね。
後、温泉。
こっちの大陸は知らないけど、あっちにはちゃんとあったぞ。
しかも温泉街になってたし。変な主人は居るけど……。
アンドロイド開発は止めなさい。
マッドサイエンティストになるだけだから。
人体の構造を知る為って言って、殺人する未来しか見えない。
ちなみに他の4人もおとなしくなってる。
いや違うな。本を読んで興奮している。
「冒険者になるぞ!」「気づいたらハーレムだ!」「まず難聴にならなくちゃ!」「手に入れただけで強くなる武具探しだ!」
君達、現実を見たまえ。
後、ナグラさん。背中を押すように、他の本を薦めるのは止めなさい。
と、とにかく改心したなら問題無いだろ。
自衛団の人は、夜に闇に紛れて連行するって言ってるしお任せしよう。
はい、本は回収しまーす。
こら、抵抗するんじゃない!
ナグラさん、「今度他のを貸してあげる」とか言うんじゃない! チート無双信者を増やすな!




