ブランド化
「売るのは良いですけど、貴方の言うようにまだ商人じゃないですよ?
それでも買い取ってくれるのですか?」
「むっ?! ぐぬぬぬ……、そう言えばそうでした」
「なのでこれはハーメルさんに売ろうと思います」
「あぁっ?! 売れると判っている商品を目の前で他に売られるとは!!
ちょ、ちょっと待って貰えますか?!」
「待つ、ですか?」
「ええ。貴方は商人に登録するのでしょう?
その為に家まで建てた」
「そうです」
「では、例の件が終わればすぐに登録します!
なので、それまで売らないで下さい! お願いします!!」
う~ん、どうしよう。
まぁ、それでも良いけど、ハーメルさんの金策も必要だしな。
「じゃあこうしましょう。
この商品はハーメルさんに権利を渡します。
なので、交渉はハーメルさんとしてください。
勿論ハーメルさんには手数料を払ってくださいね」
「なるほど。そちらの商人に売るという訳では無いのですね?」
例えばハーメルさんに100万で売った場合、ハーメルさんは好きな値段を付ける事が出来る。
1000万と言っても問題無い。
しかし今回のように間に入って貰うだけなら、100万+手数料で済むって事。
さすがに100万じゃないだろうけどさ。
それにしても、ここまで商人が食いつく商品か。
元の大陸でも人気になりそうだね。
トムさんの作戦は成功って事か?
それなら先んじて、ダンジョンのある村に住んでるウエダさんに言っておこうか。
持ち込まれたら優先的に買うようにって。
販売先は……サガワさんかタルーンさんで良いかな?
サガワさんはともかく、タルーンさんは武具屋だけどさ。
あの人も商売人だ。一声した方が良いでしょ。
よし、覚えておいて、後で行って話をしてこよう。
「さて、この家に住んでも良いんですよね?」
「小さいですけど……まぁ住んでも良いですけど、まだ入るのには税が必要ですよ?」
「そこはしょうがないでしょうね」
「ハーメルさんが確実にうちのギルドに売ってくれると約束するなら、入町税を半額にしましょう」
「あ、はい、売りますよ」
「良いんですか?」
「ええ。ついでに商標登録もしてしまいますから」
「?? それは必要なんですか?」
「ええ。真似されないように。と言っても出来ないでしょうが。
後は、名前を売るのに使われますね」
「名前を売る?」
「ええ。もしこれがヒット商品になれば、製作者の福田さん・卸した私・販売したギルド、この3つが有名になります。
そうすれば、他の物を売る時も有利になります。
類似品も防げますよ」
あ~、ブランド化するって事ね。
日本でもあったね。
100均で売ってそうな物でも、ブランドのマークが付いてたら1万円でも売れる。
俺やハーメルさんの名前が売れてれば、俺達が売る物に付加価値が付くって事になる訳か。
で、類似品を防ぐってのは、ギルドが認めた何らかの印を入れるって事だろう。
その印の無い物は類似品って事だ。
その印を偽造すれば、ギルドを敵に回す事になる。商人としては致命的だろうな。
「ではそのように。
あぁ、そうそう、福田さん。漁業組合が呼んでましたよ」
「漁業組合が?」
「セリの件じゃないですか?」
「そういえばあったね、そういうのが。じゃあ行ってみます」
「あっ、一緒に町まで帰りましょう。そうすれば税を取られませんから」
「そうなんですか? じゃあ、一緒に帰りましょうか」
こうして何とか商談を纏めて、町に戻った。
じゃあ、漁業組合に行ってみようか。




