新築お披露目
「だからですね、この紙に魔力を流すと家の部品が出てくるんです」
「ははは、そんなバカな」
「本当ですって」
「じゃあやってみてくださいよ」
「い、いいですよ。ちょっと待ってくださいね」
「おや、逃げるのですか?」
「トイレですよ!」
トイレに移動し、トムさんと念話をする。
「ごめん、トムさん。あの建築魔法紙を使っても良い?」
「別に良いけど、何で?」
「商人ギルドの人に見せたんだけど、納得してくれないんだ」
「私の苦労を納得しない?! ……ちょっとOHANASHI、いえ、教育が必要なようね」
「いやいやいやいや、革新的な技術は凡人には理解されないんだよ。
そうなんだよ。ちゃんと俺から説明しておくから」
「そ、そうね。革新的だもんね。
じゃあ、1件分渡すから、それで納得させておいてね」
「りょ、了解です」
貴方が来て暴れたら、この町が壊滅します。やめてください。
説得出来て良かったよ。
トムさんを部屋に召還して、建築魔法紙を1件分置いていってもらった。
送還してから、紙の束を持って外に出る。
「これで1件分です。その中の1枚を実際にやってみましょうか」
「どうぞ」
まだ信じてないようだなぁ。
やれる物ならやってみなさいよって顔してるわ。
建築魔法紙(2LDK、勝手口A)に魔力を流す。
するとすぐに紙は無くなり、勝手口の付いた家の壁が現れた。
「はい。これです。え~と、勝手口ですね。
こういう風に色々なパーツが出てくるので、後は組み合わせるだけで家が完成します」
「……え? ええ? え~~~~~っ?!」
「信じてもらえました?」
「ちょ、ちょっと何ですかこれ?! 貴方が作ったんですか?!」
「え~と、そういう事になってます」
「うん? なってる?」
「えや、そうです。自分が作りました。イヤークロウシタナー」
「棒読みですけど……? いえ、それよりも!
貴方は魔法技師なのですか?!」
魔法技師?
なんじゃそれ?
不思議に思ってたらハーメルさんが耳打ちしてくれた。
魔法技師とは魔法を使って道具を作り出す人の事らしい。
あっちの大陸で言う魔法道具屋さんの事か。
「えっと、そういう事になりますかね」
「何で商人になろうとしてるのですか?! もったいないですよ?!
はっ! そう言えば、自衛団でも音を保存出来る魔法道具を出したとか?!」
「あぁ、そうでしたね」
「なのに何で商人?! 才能の無駄ですよ?! 冒涜です!!」
「いや、あちこちを移動しようと思ってるので、それなら商人が良いかなぁと」
「知ってますよ! 釣りでありえない魚も獲ってきたのでしょう?!
後、イノシシも獲ってきたらしいじゃないですか!
魔法で無法者を捕らえたというのも聞いてます!
従魔を使って盗賊を捕らえたのもでしょ!!
なのに商人?! 商人をバカにしてるんですか?!」
「いや、そんなつもりは……」
「それだけ多芸なら、傭兵でも魔法技師でも漁師でも猟師でも良いじゃないですか!
なのに商人?! 商人って言うのは仕入れて販売するから商人なんですよ?!
貴方、仕入れの必要ないじゃないですか!! 商人なんかせずに、商人に売れば良いじゃないですか!!」
あ~、そうやって羅列されると、そんな気もしてくるなぁ。
確かに商人の必要性が無い。
でもなぁ、町から町へ移動するなら、商人っていう肩書きは大事なんだよね。
移動してても不思議じゃないし、ギルドが身分の保証してくれるし。
何より、他の人と髪の色が違っても問題無い。
「まぁ、落ち着いて。それよりも建てた事には納得してもらえましたか?」
「ふぅふぅ、失礼しました。
はい、納得しました。では例の事が終わったら貴方の家として登録させてもらいます」
「ありがとうございます」
よしよし、ミッションコンプリートだぜ!
「ところで、この建築魔法紙でしたっけ? 勿論売ってくれますよね?」
……さすが商人。
買い取る気マンマンのようだ。




