魔法建築
皆で何度も『アースウォール』で土壁を作っては解除する。
昼前になって、ようやく仕切った中は平らになった。
正確には中央の家を建てる部分だけは盛り上がってるけど。
浄化槽は既に埋没済みだ。
この作業にはトムさんは参加していない。
何でもこの後にする作業で魔力を使うからだそうだけど。
仕切った外側は土が減り、溝のようになっている。
そこに向かってトムさんが魔法を使った。
その魔法は『ブロック』。石で壁を作る魔法だ。
これもトムさんがアレンジしてるようで、ブロック塀3段くらいの高さにしかならなかった。
だが、これを利用して、外にあった溝を側溝のように仕上げていく。
側溝工事が終わったら、今度は中央の家を建てる部分。
ここには『ブロック』で家の土台となる基礎を作っていく。
土を残しておいたのはこの為だったのか。
この魔法は土を固めて石のようにしているらしい。
ブロックかレンガのようだ。
最後に玄関辺りに階段まで作ってた。
そして、皆で出来た基礎や側溝に『ファイヤーウォール』を使う。
トムさん曰く「これで魔法が解除になっても崩れないのよ」との事。
焼き固めるって事だろうか?
「これで今日の作業は終了よ」
「終了なんですか?」
「ええ。明日まで放っておいて、冷まさないとダメだから」
「あぁ、なるほど」
「水掛けて冷やしちゃダメなの?」
「それをするとね、割れちゃうの」
「へ~」
急激に熱した後に、急激に冷やすと割れるってよく聞くよね。
そうなるんだね。
でもこれって、戦闘でも役に立つんじゃない?
アースウォールやブロックで壁を作られた時、ファイヤーウォールで熱した後にスリーズアローを打てば壊せるかも?
今度やってみよう。
「もう少しで終わるからって、昼ご飯も食べずに工事しちゃったわね」
「あっ、本当だ」
「私は帰って食べるわ。じゃあ、また明日ね~」
「お疲れさんでした」
そう言ってトムさんは帰って行った。
と言っても、俺が送還しただけなんだけど。
時刻は14時過ぎ。
町で何か食べるかな。
何故かハーメルさんもカンダさんも帰ってきてないし。
町に戻ると、いつもの食堂近くにカンダさんが居た。
近くにはハーメルさんが居るはずなんだが……って倒れてる?!
どうした?!
慌てて近寄ると、どうやらハーメルさんは怪我をしているようだ。
治療をコタニさんに任せて、カンダさんの方に行く。
カンダさんは、5人の男と揉めてるようだ。
「どうした! カンダさん!」
「あっ、福田さん!」
「ふんっ、そいつの連れか?」
「カンダさん、何があった?」
聞けば、再登録を済ませたハーメルさんに対して、今話しかけてきたヤツが難癖を付けてきたそうだ。
カンダさんが護衛をしようと間に入ると、4人の男達が現れて邪魔をしてきた。
剣を抜こうとしたら「俺は領主の息子だぞ? 剣を向ければどうなるかな?」と言われたらしい。
で、素手で戦ってたら、ハーメルさんが殴られたんだってさ。
クズの息子か!
「おや、なかなか可愛い女を連れてるじゃないか。
2人も居るな。お前ら、連れて来い」
「何言ってるんだ、こいつ?」
「領主の息子に逆らってきたんだ。逮捕だよ、逮捕。
事情を聞かなければならないしな。あぁ、お前達はいらないぞ。死にたくなければおとなしくしてな」
クズの息子はクズだったわ。
ボコる事に決定。
ただなぁ、クーデター(?)をする予定だろ?
告げ口されても困るし……どうしようかな?
こっそりと別ページに閑話を掲載しました。




