福田への頼み事
「う~ん、う~ん……よし、そうしよう」
「あの~、もう帰って良いですかね?」
「福田さんに頼みがある!」
「え~……」
「頼みと言うか、依頼としようか」
ほら来た。
受けないといけないんだろうなぁ。
知らないよ、不正してる領主なんか。
どうせデブハゲ金満野郎だろ?
「一応、聞きましょうか……」
「今回、領主が盗賊と繋がってる事が自供された。ここまでは良いな?」
「はぁ。そうですね」
「そこでだね、福田さんには……この事を誰にも言わないで欲しいのだ」
「はぁ……はぁっ?! どういう事ですか?」
「ココから先は依頼を受けてくれるなら話そう」
まさかの展開になってきたよ。
調べて来いじゃないんだ!
しかし黙ってろとはどういう事だ?
もしかして隠蔽する気か? 金でも貰ってる?!
いや待て。
ちょっと落ち着こうか。
黙っている事で俺に害は……無いな。
この辺りの領主がクズでも、俺には関係無い。
正義感溢れるラノベの主人公って訳でも無いし。
それに別に言い触らすような事でも無いしな。
黙ってたら依頼なんだから、お金が貰えるだろうし。
面倒事になるなら、この地を離れれば良いだけ。
よし、受けよう。
「判りました。承諾します」
「うむ。では話そう。
実は領主が腐っているのは判っていたのだ。
今回の事で決めた。領主には領主の座を降りてもらう!」
なんとっ!
一揆ですか! もしくはクーデター?!
ヤベぇ。思ってた以上にヤベぇ。
それを手伝えって言われそうだ。
「そ、そんな事して大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。証拠は揃えてある」
「それを持って国に直訴とか……」
「そんな事をしても、国はすぐには動いてくれない!
ヘタすれば言いくるめられるだろう」
「ありそうな話ですけど……。
しかし上手くいったとして、今度は国が敵になりませんか?」
「大丈夫だ。そこの辺りは考えてある」
「は、はぁ……」
内容を詳しく教えてもらった。
まず、領主に対して何も売らないし、何を出されても買わない。不売買作戦を取るそうな。
これには商人ギルドや漁業組合も絡んでるらしいので、簡単なんだってさ。
次に税金。
当然領主が集める物だ。
これを一切払わないんだとか。
しかし、領主に対して払わないだけで、そのお金は自衛団と商人ギルドで管理する。
そうする事によって、国からは文句を言わせないつもりだそうだ。
「税金はちゃんと集めてますよ。領主に渡してもピンハネされますから、こちらで管理してました」
こういう言い訳をするらしい。
ここまでやってから領主の館を取り囲み、降伏勧告するんだって。
1週間待っても出てこない場合は、最後の手段。
それは、館に踏み込んで領主の逮捕。
一番危険な事に思えるが、実はそうでもない。
領主が抱えている騎士団の半分が、すでにこちら側に寝返っているらしい。
残りはどっちにも付かないという考えだそうな。
つまりクーデター(?)が成功しても得は無いが、失敗した場合は自分達は領主側ですってするつもりなんだろう。
まぁ、少なくとも騎士団は役に立たないって事だ。
で、逮捕して、証拠と共に裁判にかけるってさ。
この国、裁判は国ではなく司祭がやるそうな。
そういう専門の司祭までいるらしい。
裁判にかけてしまえば、国は手出し出来ない仕組みになっているようだ。
「凄く周到に準備されてますね」
「うん。1ヶ月はかけたからね。狩猟と同じだよ。準備さえ万端なら、後は獲物を捕らえるだけさ」
1ヶ月でここまで揃えたのかよ!
狩猟民族エルフ。結構恐ろしいな。
領主の負ける姿しか想像出来ないわ。
確かにこういう事なら、俺が言い触らしたらマズいね。
領主の耳に入ったらヤバいもんな。口止めするのも納得です。




