ネタ
「では本日の主役、帝王こと福田さんの登場で~す!」
呼ばれたので、すぐに舞台に出る。
すぐに出たのだから、その帝王コールや止めて欲しい。
「では福田さんから一言いただきましょう!」
「えっ? 挨拶するんですか?」
「ええ。お願いします」
え~、何も考えてないぞ?
そういうのは事前に教えておいて欲しいわ。
「ど、どうしようかな……」
「ネタやって! ネタ!」
誰だ! 無茶振りしてくるやつは!
声のした方を見ると、そこには夏双旅館の主人の姿……。
お、お前かーっ!
「ほらほら、ネ~タ、ネ~タ」
しかも周囲の人も煽ってるし。
感化されたのか、皆がネタコールを始めるのに1分もかからなかった。
持ちネタなんかねぇよ!
しょうがないので、舞台にカンダさんを呼ぶ。
当然拒否したので、来なければまたブルーって言って呼び出すけど?と脅した。
ゴメンけど、付き合ってくれ。
主人の顔を見て思い出したネタをカンダさんに教える。
チクショウ、何でこうなった!
「どうも~、帝王です」
「……ブルーです」
「あっ! あそこにUFOが!」
「えっ? どこどこ?」
「ほらあそこ」
「どこだよ?」
「ほら、あそこ、飛行船」
「飛行船じゃないかよ!」
会場はシーンとしてしまった。
うん、ネタのチョイスミスだね。
UFOが判らないだろうし、飛行船も判らないだろう。
何故か主人が恥ずかしそうにしてるので、まぁOKとしよう。
折角舞台に上がったのだから、カンダさんにも抽選の手伝いをしてもらう事に。
抽選のシステムは前と同じ。
ステージ上に2つ、金網で出来ている球体がある。
近くにボタンが4個あり、2個がスタートボタンで2個がストップボタン。
2対になっており、それぞれが文字と数字の球体と連動してる。
左の球体からは文字が出て、右の球体からは数字が出る。
カンダさんにはスタートボタンを担当してもらう。
俺はストップボタン担当だ。
出た玉を読み上げるのはお姉さん、ギルドマスターの仕事だ。
最初は5等の抽選。
これは運を使わずに普通に抽選した。
次の4等も同じ。
会場は一喜一憂している。中々の盛り上がりだ。
そして、最初の運を使う場面、3等の「髪神温泉」ペア旅行券10枚の抽選になった。
ここではスタートボタンを旅館の主人が担当するそうだ。
俺は運を使って『温泉で髪が生えそうな人に当たりますように!』と願っておく。
旅館の主人が舞台に上がると、司会のお姉さんから挨拶してくださいとのコメントが。
「判りました。では簡単に。
この町も随分発展しましたね。
私が初めてここを訪れたのは、もう何年も昔でした。
そう、あれは桜の季節だったかな……」
そこまで言い終わると、何故か主人にピンスポが!
周囲を見回すと、いつの間にか青年達が居て、ピンスポ当てたり演奏したりしてる!
君達はあの孤児院出身か?!
予想通り、主人は口をパクパクと動かすだけで、何も発していない……。
1分ほどそうしただろうか。
演奏も終わり、ピンスポも消えた。
「……まぁ昔の話ですよ」
「喋ってなかったじゃん!」
しまった。思わずツッコんでしまった……。
く、悔しいです!




