裏道の男
「こんにちは」
裏路地に避難してた俺達に、いきなり挨拶してきた人が居る。
何事かとビックリしてると、
「そこ、私の家なんですよね」
「あぁ! すみません!」
その人の家の裏口付近で固まっていたので、邪魔だったようだ。
見た所20代後半~30代前半か? 態度といい、なかなかの好青年だ。
えっ? 30代で青年は無い?
いや、自分も似たような年齢なので、青年と言わせて貰いますよ。
ええ、絶対に中年ではありません!
「先ほどは見てましたよ。
逃げるようにウシジマ食堂から出てこられましたね」
「あっ、見られてましたか……」
「しかもノイさんに手紙を渡してましたね」
あの娘、ノイって名前なのか。
金額が判らないように紙に包んで渡したんだけど、傍から見れば手紙にも見えるか。
「あれは食事代ですよ。
ちょっと金額が多くなったので、まとめて渡したんです」
「……ソ……」
「ん? 何です?」
「ウソだ!」
「へ?!」
「手紙でしょう?! 判ってるんですよ、恋文なんでしょう?!」
「違いますって! 本当にお金なんですよ!」
「じゃあ、何故逃げるように店を出たんですか!」
あぁ、確かに。
手紙(のような物)を女の子に渡す。
↓↓↓
逃げるように店を出る。
この流れだと、告白みたいにも見えるな。
女の子は嬉しそうにしてたし。
これはちゃんと説明しないとね。
「実はですね、俺はこの本に載っている者でして。
知らない間に有名になってしまってたんですよ。
で、恥ずかしいので、囲まれる前に逃げて隠れたんです。
ノイちゃんが嬉しそうだったのは、本のお陰で売り上げが上がったからみたいですよ」
「後、福田さんに会えたからよね」
ナグラさん、よけいな事は言わなくても良いです。
「あぁ、この本ですか。そういえば確かに最後に載っている絵に似てますね」
「昨日まで他の国に居たので、来たら有名になってるなんて驚きました」
「なるほど」
「判ってもらえましたか」
よく考えたら、何で俺はこの人に弁明してるのだろうか?
何故か弁明しなきゃいけない気がするんだよね。
「それを利用して近づいたんですね?」
「はぁ?」
「確かにノイさんは高嶺の花です。お近づきになるには何か策が必要だったのでしょう。
そこで本を作りウシジマ食堂を有名にし、感謝されるという形で近づいた。
そして、俺の言う事を聞かないなら来年は掲載を外すと手紙で脅した。
これはなかなか卑怯ですよ?!」
「そんな事考えて無いし、してませんよ?!」
「ノイさんは私が守ります!!」
そう言って、俺に襲い掛かってきた。
まぁ、無手だし素人っぽいので、すぐにカンダさんに捕まってるけど。
この人、ちょっとアブナくないか? 妄想が過ぎると言うか。
さっきからちょこちょこと気になる発言が多いんだよな。
「は、離しなさい! ノイさんが危険です!」
「この人、ノイって人が好きなんじゃない?」
「え?! マジ?!」
「ノイさんを好きにならない人なんかいない!
あんな素敵な娘は居ないんです!
朝は早くから店の外を掃除し、その後に朝食をとってトイレに行く。
それから開店準備をして、料理の下準備を手伝う。
開店すれば一生懸命働き、14時頃に遅い昼食。
その後に仕入れに市場へ行き、少し寄り道しながら買い物を済ます。
帰ったら夜の準備をして、20時まで働く。
その後に晩飯を食べ、家族としばし会話をしたら、風呂に入る。
風呂を上がったら部屋に戻り、今日有った事を日記に書き就寝。
どうです! 素敵な娘でしょ?!」
……うわぁ、ストーカーだ。しかも覗きとかしてるよ。
この国でストーカー行為は犯罪なのかは知らないけど、これは警察行きだよな?
大体さ、この人俺より年齢が上だろ? ロリなのか?
いや、成人って15歳だったっけ? ギリセーフ?
違う違う。結婚出来るってだけで、ロリには変わらないか。
カンダさんがそのまま引きずって、警察に渡しておきました。
俺が事情を話すと、警察の人も汚物を見るような顔をしてたよ。
やっぱり犯罪扱いなんだろうな。
未然に防げて良かったよ。いや、防げて無いか?




