出てきた料理は
どうやらこのウェイトレスは、ここの店の娘さんのようだ。
15歳って感じかな?
一生懸命働いていて好感が持てる。
俺の事を大声で言わなければね……。
案内されたのは奥の方にあった、仕切られた場所だった。
何でも、会合とか貴族が来た時とかに使ってるらしい。
席に着くと、すぐに飲み物が出てきた。
「こちらの飲み物はサービスです!
男の人にはビール、女の人にはアップルジュースです!」
「あ、ありがとう……」
「それでご注文は?」
「えっと……」
慌ててコタニさんを見る。
本を持ってるのはコタニさんだからね。
そこに載っている物を注文してもらおう。
「これを人数分お願いするっス」
「はい、判りました! 少々お待ちください!」
少し待つと、料理が運ばれてきた。
と言っても付け出しみたいな物だけど。
おぉ! 漬物じゃないか!
セキハイムには漬物があるのか?!
帰りに買っていこう。
そして出てきたメイン料理。
それはなんと、すき焼きだった!
俺は本を見てないから知らなかったんだよ!
しかもご飯まで出てきた! 無敵の組み合わせじゃないか!
「卵もありますよ~。お好みでどうぞ!」
卵まで!
もうこの時点で★5つだね!
キフミさん、やるじゃないか!
皆でウマウマと食べて会計。
すると、さっきのウェイトレスの娘さんが紙を持ってきた。
「すみません! サイン下さい!」
「はっ?! 俺の?!」
「はい!」
「いや、そんなに大した人間じゃないんだけど……」
「いえいえ! お願いします!!」
「で、でも……」
「記念にしたいんです! どうか!」
「わ、判りました……」
どうにも逃げられない雰囲気なので、適当に名前を書いておいた。
最初に「ウシジマ食堂さんへ」まで書かされたけどさ。
「ありがとうございます! あっ、お代は結構ですので!」
「い、いや、払うよ。1人5000円でしょ? 20000円だよ?!」
「いいんです! このサインがお代って事で!」
「いや! 2万もしないから!」
「いいえ! かなりの価値がありますよ!」
「払うから!」
「貰う訳にはいきません! 福田さんのお陰で凄く儲かってるんですから!」
このまま押し問答してもダメだな。
どんどん注目が集まってくるし。
しかし、サインと引き換えってのはなぁ……。
あっ、そうだ。
「じゃあ、こうしよう。
2人前を鍋込みで5セット作って渡してくれないかな。
食べさせたい人が居るんだよ。これはちゃんとお金を払うからね!」
「ご注文ですか?! 判りました! 少々お待ちください!」
これで合計5万円だ。
ただし鍋も貰うので、鍋代も払わなければならない。
って事で、さっきのお代も足して合計8万を紙に包んでおく。
出来たすき焼きはマジックボックスに収納して、包んでおいたお金を渡す。
「お代はこれに包んでおいたから。じゃあまた来るよ!」
「えっ、あっ、はい。ありがとうございましたー!」
よし! 後は気づく前に移動するだけだ!
店を出てすぐに裏通りに隠れた。
何で飯食うだけでコソコソしてるんだろうか……。




