いざ所子へ!
短時間で2700万も稼いでしまった……。
俺もうレベル上げとかせずに寝て暮らせるんじゃね?
……いや、ダメだ! そんなダメ人間になったらおしまいだ!
それに10年も持たないじゃないか!
やはり何か職を手にしないと。
おっと、大金を手にして呆けてしまってたぜ!
「おめでとうございます! サガワさん!!」
「あっ、ありがどうございまず~~!!」
サガワさんはいまだに泣いていた。
聞けば初重賞制覇だという。そりゃ喜びもひとしおだろう。
豚も鳴いていた、いや泣いていた。
重賞勝ちを先越されたらしい。
そうだ! ついでに俺の運が持続するか検証しとくか!
『サガワスピードが勝ち続ければ、俺への対応が良くなる! 勝ち続けろ、サガワピード!!』と祈る。
これでどこまで連勝するかで、俺の運の効果時間が判るだろう。
頑張って王級制覇して欲しいねぇ。
あっ、この稼ぎで馬主になるってのはどうかな?
いや、ソレは職業じゃないな……。
いつか職に就いたら、馬主を目指そう。うん、そうしよう。
表彰式も終わり、俺達はする事も無くなったのでホテルに帰る事にした。
結局、サガワさんは表彰式まで泣きっぱなしだったなぁ。
「サガワさん。そろそろ帰ろうかと思いまして、挨拶にきました」
「何をおっしゃる!! 今日勝てたのもきっと福田様のお陰!! ホテルまでお送り致しますとも!!」
「いえいえ、馬の力ですよ。では……」
「ささ、こちらに馬車を用意していますので、共にホテルまで行きましょう!」
「いえ、あの、買い物でもしながら帰ろうと思ってまして……」
「おや! 何を買われるのですかな?!」
「え~と、フライパンとか……」
「ほうほう。すみませんが、書いてもらえますかな?」
「? まあ、いいですけど?」
俺は言われた通りに、渡された紙に買いたい物を書き出す。
町に詳しい人だから、どこで買えば良いか教えてくれるのだろう。
あっ、鉛筆だ! それにちゃんとした紙じゃないか! これも買おう!
フライパン・調理油・火の魔法石・軍手・紐・ロープ・筆記用具(紙・鉛筆)・包帯・シャンプー・リンス・テント・寝袋
こんな所だろうか?
まだ何か忘れてると思うけど、現在思いつくのはこれくらいだ。
今思ったけどさ、ステータスの中の『記憶力(D)』なのが問題だと思うんだ!
せめてCならちゃんと覚えてるハズなんだよ! と言い訳してみる。
書いた紙をサガワさんに渡すと、横に居た私兵にそのまま渡した。
「さぁ、ではホテルまでお送りいたします!」
「あれっ?! 買い物……」
「買い物でしたら、うちの者に行かせますので。ホテルまでお持ちいたします。
勿論、御代は頂きません!ええ、そうですとも!!」
乗らない為の口実を潰されました……。
クソッ! やり手だな、サガワさん!!
どうしようもないので、観念して馬車に乗り込みホテルまで送ってもらった。
サガワさんはこの後まだ用事があるようで、ここでお別れという事に。
あっ、別れる前にちゃんと言っておかないと!
「ホテルの方々には、大変良くしてもらっています。何の問題もありませんよ」
「そうですか! 心配してたのですが、安心しました!」
そう言って別れたのだが、受付の従業員の人には聞かれていたようだ。
土下座するような勢いで感謝された……。
翌日、私兵の人がホテルの出口で待っていた。
どうやら馬車乗り場までの護衛らしい。
背中には昨日買ってきてくれた物を背負っているみたいだ。
悪いなぁと思うが、持ちますとか言うとまた泣きつかれるのが判るので諦めた。
人間、諦めが肝心なのだ。
と、とにかく、これでやっと所子へ向かう事が出来る!
俺の旅は始まったばかりだ!!
終わりませんよ?




